こんにちは!

今回は、ACS(急性冠症候群)が疑われるとき、心電図以外にどこをみればいいのか? というお話をしていきます。

心臓の仕事はSV×HR=Coの式そのもの

ACSとは、心臓の動きが悪くなっている=心臓の仕事が十分にできなくなっている、っていうことが言えますね。

では、心臓の仕事って何でしょう?

心臓は動くこと自体が仕事ではなく、全身に血液を届けることが仕事なんですね。頭のてっぺんから指の先まで、血液を届けることが心臓の仕事なんです。

いま一度、当連載の「#001 心臓って」を見返してみてください。

SV×HR=Co

とても大切な式と書いています。
心臓の仕事は、まさにSV×HR=Coこの式そのものなんですね。

SV(stroke volume)とは1回拍出量のこと。つまり、心臓が1回収縮することによってどれだけの血液を送り出せているか?っていうことになります。

次にHR(heart rate)とは、みなさんがよくみている心拍数のこと。つまり、心臓がどれくらいの速さで動いているか?っていうことを示しています。

この、SVとHRを掛けると、Co=1分間に送り出される血液の量がわかるのですね。つまり、心臓がどれくらい仕事をしているのか?っていうことがわかるのです。

胸痛で来院された患者さんが、いまどれくらい心臓から血液を送り出すことができているか? それは「SV×HR=Co」を考えればいいのです!

って言われても……。 HRはわかったとしても、SVってどうやってみるの?

心臓の仕事はSV×HR=Coの式そのもの

おっしゃる通り!
SVは特殊な検査をしないと数字は得られません。
(このへんの詳しいことは、また機会があればお話ししますね)

でも、何も検査をしなくても、おおよその「SV×HR=Co」がわかる方法があるのです。


必要な道具は……

みなさんの「手」と「感覚」! ただそれだけです。

そして方法は……

患者さまの手と足を触る。
そして感じるのです。

手足を触って……

感じるポイント①
冷たいか? 暖かいか?

感じるポイント②
乾燥しているか? 湿っているか?

この2つを感じてください。


感じるポイント①では……
手足までの血液の灌流(かんりゅう)状態(血流の勢い)をみています。つまり、手足の指先まで暖かい血液が流れているかどうか? っていうことですね。

触って暖かければ、暖かい血液が流れていることが予測されます。つまり、心臓はがんばって末端まで拍出できているっていうことですね。

でも、触って冷たければ、血液が指先まで届いていない可能性があるってことを示しています。つまり、心臓のダメージが大きく低拍出状態(low out put )である可能性があることを示しています。

感じるポイント②では……
血液の循環状態をみています。心臓が動いていなければ、心臓から血液が拍出されないので、心臓の後ろに渋滞が生じてしまいます(鬱血)。そうすると、血管外に水分がしみ出てしまって、手足がジトーっとするのですね。

触って湿っていれば、うっ血所見があるっていうことになるんです。

表現の仕方は、Dry-Warm・Wet-Warm・ Dry-Cold・Wet-Coldと表現します。

A:触って 暖かく・乾燥=Dry-Warm
 ⇒ 異常所見は認められない

B:触って 暖かく・湿っている=Wet-Warm
 ⇒ うっ血がある可能性がある

L:触って 冷たく・乾燥=Dry-Cold
 ⇒ 低灌流状態の可能性がある

C:触って 冷たく・湿っている=Wet-Cold
 ⇒ 低灌流でうっ血も認めるような重症な状態である可能性がある

心臓からどれくらい血液が拍出されているか? 血液は滞りなく循環しているか? 予測ができるのです。これを、ノリア・スティーブンソン分類(Nohria-Stevenson分類)といいます()。



救急患者さんの手をスリスリ・足をスリスリ。
これは、ACSの患者さんだけでなく、あらゆる疾患の重症度判定に使うことができるのでぜひみなさんもスリスリしてみてください。

今回は、ここまで。

次回はノーリア・スティーブンソン分類とあわせて観察してもらいたいポイントについてお話ししますね!

では、また!
今回もありがとうございました。

プロフィール:野崎暢仁
新生会総合病院 高の原中央病院
臨床工学科 MEセンター
西日本コメディカルカテーテルミーティング(WCCM)副代表世話人
メディカセミナー『グッと身近になる「心カテ看護」~カテ出しからカテ中の介助、そして病棟帰室後まで~』など多数の講演や、専門誌『HEART NURSING』、書籍『WCCMのコメディカルによるコメディカルのための「PCIを知る。」セミナー: つねに満員・キャンセル待ちの大人気セミナーが目の前で始まる! 』など執筆も多数。