気がつけばもう20回目。
毎回毎回、たいへん多くの方々にお付き合いいただきましてありがとうございます。読んでくださっているみなさまのおかげで続けられております。
今回は、20回記念だから(?!)このところお話を続けている血行動態の総決算です。これまでマニアックなお話もあって「これいるの?」と思われていた方もいるかもしれませんが、気長にお付き合いありがとうございます。今回は、ズバリ現場で思い出していただきたい内容になっています。
後負荷
後負荷は、主に末梢血管の締まり具合のことを指します。
寒くなったら指先が冷たくなりますね。それは末梢血管が締まっているのですね。末梢血管を締めて温かい血液をカラダの中心に集める、生命を維持する機能が働いているのです。
末梢血管が開いていれば、心臓は血液を末梢まで楽に届けることができるため、たくさん血液を送り出すことができます(=心拍出量増加)。しかし、開き切ってしまうと血圧低下につながります。
逆に、末梢血管が締まれば血圧は上がりますが、指先まで血液を届けるためには相当なチカラが必要になります(=心拍出量低下)。
ただ単に血圧を上げればいいというわけではなさそうですね。
ショック!
末梢血管が締まる現象は、患者さんが危険状態のときにも認めます。
何らかの原因によって心臓から血液が拍出しづらくなったとき、低心拍出量状態となります。そうなれば低血圧になり、各組織に血液を届けるという心臓本来の仕事ができず、低灌流(かんりゅう)状態となります。それにより、組織は低酸素状態となりアシドーシスになります。
アシドーシスになると、動脈血管は収縮してしまいます。つまり末梢血管が締まるのです。そうすると心臓にとって抵抗となり、ますます血液を拍出しづらくなってしまい(後負荷増大)、低灌流に拍車がかかるのです。心原性ショックは、どんどん悪循環に陥っていきます。
低血圧の救世主4つのカテコラミン
血圧が下がったとき、カテコラミンが登場します(図)。
血圧を上げる循環作動薬は、交感神経(#001「心臓って」参照)に働きかけるお薬なのですが、交感神経のどこに効くのかはお薬によって変わるようです。
交感神経にはα(アルファ)受容体とβ(ベータ)受容体があります。
それぞれ影響を与える因子には違いがあって、
αは血管収縮
βは心収縮力・心拍数
に影響を与えます。
血圧が下がった時に使用されるお薬は4つ
①アドレナリン
βによく作用するので、心収縮力増強・心拍数増加を狙い血圧を上昇させます。
②ノルアドレナリン
αによく作用するので、末梢血管を収縮させます。
③DoA:塩酸ドパミン(DopAmine)
αにもβにも作用するので、心収縮力増強・心拍数増加を狙いつつ末梢血管を締めにいきます。
※心房細動を誘発することがあるといわれています。心房細動になれば血圧コントロールがしにくくなるので、慎重に使用する必要があります。
④DoB:ドブタミン(DoButamine)
βによく作用するので、心収縮力増強・心拍数増加を狙い血圧を上昇させにいくのです。
それぞれの薬剤は、それぞれ狙うところが異なるのです。どのお薬が有効なのか? それはそのときの状況によって異なります(表)。
ということは、いまなぜ血圧が下がっているのか? この患者さんにいま何が起こっているのか? を理解しなくては、どの薬剤を使用したらいいのか、わからないっていうことになりますね。
やっぱり、
HR:心拍数
Co:心拍出量
が重要になるのです。
SV(=前負荷・収縮力・後負荷)× HR = Co
なのです。
血圧がなぜ下がっているのか?
前負荷が下がっているのか?
収縮力が下がっているのか?
後負荷が下がっているのか?
心拍数が低下しているのか?
血圧が上がっても逆効果のことも
こんなことも考えられます。
血圧が下がったときに、ノルアドレナリンを使用することがあります。ノルアドレナリンの効果は絶大で、急激な血圧低下など急場をしのぐため、血圧が上がらない状態のときは救世主のお薬となりますが、末梢血管を締めるため、後負荷がとても上がることから、心臓にとってはとてもつらいお薬となります。この後、逆に血圧が保てなくなるかもしれません。
さて、いかがだったでしょうか?
血圧はマンシェットを巻けば気軽に測定できるバイタルサインです。数値に現れるので評価しやすいバイタルサインになるでしょう。でも、その数値にはとても多くの因子が関係していて、結果として現れているのです。
血圧が低下したといっても、その状況によって投薬や処置などの対処が変わってきます。一つひとつをアセスメントした総合評価として、血圧をみていきたいですね。
今回もお付き合いありがとうございました。
今後ともよろしくお願いいたします。
では!また!
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新生会総合病院 高の原中央病院
臨床工学科 MEセンター
西日本コメディカルカテーテルミーティング(WCCM)副代表世話人
メディカセミナー『グッと身近になる「心カテ看護」~カテ出しからカテ中の介助、そして病棟帰室後まで~』など多数の講演や、専門誌『HEART NURSING』、書籍『WCCMのコメディカルによるコメディカルのための「PCIを知る。」セミナー: つねに満員・キャンセル待ちの大人気セミナーが目の前で始まる! 』など執筆も多数。