ここには12枚の『問い』が書かれたカードがあります。
ゲストが、それぞれ選んだカードに書かれた『問い』について、インタビューを通じてゆっくり考えていきます。
カードには何が書かれているか、ゲストにはわかりません。

ここでの『問い』とは、唯一の正しい答えがあるものではなく、思考を深め、さらなる問いを生んだり、生涯にわたって何度も問い直したりするような本質的なもの。
そして、ゲストの考えや価値観、人柄に触れるようなものが含まれています。
簡単に答えは出なくても、こうした考える時間自体に意味があるのかもしれません。
いま、少しだけ立ち止まって、あなたも自分や周りの人に問いかけ、想いを馳せてみませんか。



ゲスト:加藤有香
看護大学を卒業後、大学病院にて消化器外科を中心に約2年、特別養護老人ホーム(以下、特養)にて施設看護師として約4年勤務。2023年より訪問看護ステーションに勤務しながら大学院(慢性疾患看護専門看護師コース)へ進学する。小学2年生から大学2年までサッカーに明け暮れる。

インタビュアー:白石弓夏
小児科4年、整形外科・泌尿器科・内科系の混合病棟3年、その後、派遣で1年ほどクリニックや施設、ツアーナース、保育園などさまざまなフィールドで勤務。現在は整形外科病棟で非常勤をしながらライターとして活動して5年以上経つ。最近の楽しみは、仕事終わりのお酒と推しとまんが、それと美味しいごはんを食べること。

編集協力:喜多一馬



死を持って教えていただいたその経験を絶対無駄にしたくない

白石:
よろしくお願いします。有香さんとは数年前に一緒にお仕事をしたことがあるのですが、直接お話を聞けるのは初めてなので新鮮な気持ちです。まずは経歴を教えてください。

加藤:
よろしくお願いします。またご一緒できてうれしいです。経歴としては、大学病院で2年間働いた後、4年ほど施設看護師として働き、4月から大学院へ進学しました。元々、新卒で訪問看護に行こうと思った時期もあったのですが、在宅にいる利用者さんは病院で治療や療養期間を経てから生活されることもあって、まずは「治療」の場面で看護師として何ができるのかを知るために病院を選びました。当時は在宅の看護師さんから「患者さんが入院したらなかなか家に帰ることができない」などと病院に対してネガティブな発言を聞いていたので、「病院のなかでどんな治療がされて、どんなことが課題で、どうやったら在宅に帰れる人が増えるんだろう」という課題感を持って、とりあえず2年間、足りなければその後考えようと思い病院で学びたい項目を自分のなかで作って、働きはじめました。

白石:
具体的にどんな項目を立てていたのですか。

加藤:
ちょっと待ってくださいね。転職のときに書いたnoteにメモのような感じで書いています。これです、これです。



加藤:
「病院」というものを知りたかったんです。なんで日本人は在宅領域で亡くなりたい人が7割以上いるのに、病院で亡くなる人が多いんだろう? なんで患者さんが家に帰りたいと言っているのに帰れないんだろう? 医師や看護師が理由なのか、家の環境が理由なのか? それをつなげるサービスがないのか? 病院のどういうところが問題で、在宅の看護師さんたちはネガティブなことを言っているんだろう? と。自分の目で見てみないと、自分の言葉で語れないなと思ったんです。

白石:
新卒のころから計画的に行動されていたのですね。実際に病院で働いてみてどうでしたか。

加藤:
実際に働くことで病院がどのようなものかを理解することができましたし、看護の知識や技術を学ぶこともできました。勉強熱心な先輩や医師、他職種の方々と出会えたことも財産だと思っています。でも、いろんな壁にもぶちあたりました。

印象に残っているのは、病院での看取りで「ごめんなさい」とか「悔しかった」という想いで見届ける人がいっぱいいたことです。本人の望まない最期で……お家に帰してあげたかった、お風呂だって本当は入れてあげたかった、本当はもっと話を聞いてあげたかった。忙しいなかでも、ちょっと足を止めてできることはやっていたけれど、 亡くなったときの顔はつらそうだったり、死を判断するためだけに心電図モニターを付けなければいけなかったり……。そういうのが私には耐えられなかったんです。ずっとレートが伸びた状態の心電図モニターでアラームが鳴り続けていて、最期が慌ただしくガヤガヤした状態で穏やかじゃない看取りや見送りを経験したときに、「もっとやれたことがあったんじゃないか」と。

その人が望んでいたことって、そんなに大きいことじゃないんですよ。「世界旅行がしたい」とかじゃない。ただ、話を聞いてほしかった、ちょっとお風呂に入りたかった、ちょっと気分転換をしたかった、そんな小さな幸せさえも寄り添えなかったことが悔しくて……。そういう悔しさがいっぱいあって「本当にごめんなさい」という気持ちで見送った方がたくさんいました。

でも、死をもって患者さんから教えていただいたこの経験を絶対に無駄にはしたくないなという気持ちはすごくありましたね。そういう経験ができたことは、病院で働いて良かったことだと本当に思います。

「点のかかわり」ではなく「面で支える」ような施設看護師に

白石:
病院で働かれた後は、訪問看護ではなく特養に転職されたのですよね。どのような理由があったのでしょうか。

加藤:
いざ訪問看護に行こうと思ったときに、学生時代から交流がある先輩訪問看護師の方から、「いろんなケアの在り方があるなかで訪問看護以外も視野に入れた方がいいよ」とアドバイスいただいたんです。私は「え、訪問看護じゃないの?」と思ったんですけど、アドバイスをいただいたとおり視野を広げるためにホスピスや特養、サ高住といったいわゆる施設看護の見学をしました。そのなかで、訪問看護は時間で区切られてしまうことで「点のかかわり」となってしまうと感じ、生活を「面で支える」、日常のなかに溶け込む看護を実践したいと思い施設看護を選びました。

白石:
施設看護師として働きはじめて、どうでしたか。

加藤:
特養で働き始めてからもいろいろありましたね。たとえば、看取りの経験では、家族から「こんなはずじゃなかった」と言われたケースがあったんです。 心不全があって、糖尿病もあって、ときどき状態が悪くなったりしていたんですが比較的ご飯を食べたり、お話しできていたりしたんですね。その方が肺炎を起こしてしまって、これをきっかけにガクッと悪くなったんです。急に悪くなることを想像できていなかった家族にそう言わせてしまったんですよね。そのときに「もっとできる準備があったんじゃないかな」と痛感させられましたね。

白石:
それは、大学院に進むことに決めたことにもつながっていそうですね。

加藤:
そうですね、「こんなはずじゃなかった」を減らせるためにできる準備を学びたくて、大学院へ進学を決めたんです。私は介護施設での看取り率をどんどん上げていかないと、日本は死に場所がなくなると思っています。病院のベッド数は今後減っていくので、病院で亡くなる人を減らすには、介護施設で看取る覚悟と頑張りが重要なポイントになると思うんです。「介護施設でいい看取りができるんだよ」ということを発信し認知してもらうことで変わるんじゃないかなって。さらに、特養で高齢者の「死を突然にしない」ことが看護で大事だと感じたので、私が利用者さんと一緒に生活をしながら緩やかに小さな変化を感じ取りながら死を準備していく過程をもう少し可視化したくて。ほかにもいろんなきっかけやつながりもあって、慢性疾患看護の専門看護師にチャレンジを決めました。

白石:
ありがとうございます、すごく伝わってきました。訪問看護から施設看護、日本の社会課題へと視野を広げつつも、患者さんや家族にどのようなことが起きているのかと細かいところを見るように、抽象と具体をいったりきたりするなかで、有香さんはどちらもしっかりと見えている印象を持ちます。

小さなきっかけが人を生かすんだなって、彼女から教えてもらった

白石:
ここまでの話から、看護師として働く前から視野の広さを持っていたように感じました。そもそも、有香さんが看護師を目指した理由は何だったのでしょうか。

加藤:
私が高校生になる前まで遡るのですが、同じクラスに小児がんを持っている女の子がいたんです。部活動の顧問であり担任でもあった先生から、その子を「サポートをしてほしい」と頼まれました。その子は中学校のころから抗がん剤の治療を行っていたので、学校にあまり行けていなくて、生きる希望は「学校に行きたい」だったんですね。

あるとき、できないことを私に言ってくれたんですね、「トイレに行きたいから連れて行ってほしい」って。普通だったら1人で行きたいところを、私に頼んでくれたのが嬉しくて。それから、たまにスタバにいきたいとか、プリクラ撮りたいという希望が彼女からあったんです。外に行くにもお父さんの手が必要だったのですが、「私たちで行くんで!」と言ってスタバに一緒に行ったり、プリクラを撮ったりしていました。そんな機会は、本当に片手で数えるぐらいしかなかったんですけど……。

それで、病院にお見舞いに行ったとき、私は話し相手にはなれるけど、ただの友だちだったので痰の吸引はできなくて。看護師さんに嫉妬したんですよ。「私だってやりたいんだから」って。

結局、彼女は高校2年生のときに亡くなりました。本当に私、死んじゃうって思ってなかったんですよ、最後まで。本人も死んじゃうと思ってなかったんです。本人も絶対に治るって信じていたんです。

これは彼女が亡くなったあとで知ったのですが、担任の先生は彼女の余命を知っていたみたいです。それを最後まで教えなかったって。それを聞いて「なんで教えてくれなかったんですか」ってすごく怒ったんですよ。そしたら、先生が「言ったら、多分最後まで友だちでいられなかったでしょ」と言われたんです。私が「死んじゃうからやらなきゃ」、「死んじゃうからどっか行かなきゃ」となるだろうから、「それはきっと彼女は望んでない、お前とは最後まで友だちでいてほしかったし、それが1番いいと思った」と。その言葉を聞いたときにはじめは全然理解できなくて。あれでよかったのかなってずっとモヤモヤしていたんですが、看護師になってやっと「あれでよかったんだ」って思えたんですよね。


彼女との出会いが、私に看護師という夢をくれたんです。なりたい看護師像は明確で。スタバにも行く、メイクもする、そんなその人の大切にしたいことややりたいことを支援できる看護師になる。って。あとは、担任の先生に守ってもらった「最後まで友だちの加藤有香としている」という感覚も大事にしながら、1人の人間として人の人生に向き合える人になりたいなと思います。

利用者さんから貰うことってこんなにいっぱいあるんだと教えてもらえた

白石:
まだまだお聞きしたいことはあるのですが、ここで質問カードにうつりましょう。選んでもらっていいですか。

加藤:
じゃあ、右から3番目で。

白石:
はい、「私が看護師を続ける理由」です!ここまでの話とつながるところですね。

加藤:
「人としての豊かさを増やしてもらえるから」ですかね。抽象的なのですが、看護師として働くことは自分を成長させてくれるものですし、自分を好きにさせてくれるんです。向き合う利用者さんや患者さんがいろんな経験を教えてくれて、いろんな人生を教えてくれて、 新しい知識や世界を教えてくれて。「あ、世界ってこんなに広いんだ」「あ、こんな人もいるんだ」とか。それは当たり前ではなくて、すごくありがたいと思っています。

「感情との出会い」もそうですね。人として心が豊かになるそんな気がするんです。幸せな気持ちになりますね。だから、辞められない、大変であっても。

白石:
「人生を教えてもらえた」というのは、特養時代に感じたのですか。

加藤:
そうですね、特養のミノワホームでの経験です。


https://aikawa-shunjukai.jp/minowahome/
加藤さんがセカンドキャリアとして勤務した特養のミノワホーム。「地域で生きる」を最も大切な価値観としている。入居している人たちだけでなく、子どもたちをはじめ地域の人たちがひと休みする居場所があり、主催する夏の納涼祭(盆踊り)は、1,000人以上の地域の人たちみんなで楽しむ「まちのお祭り」となっている。

加藤:
ミノワホームでは、おせっかいがあって当たり前。ケアを提供する側とされる側という一方向の関係ではありません。利用者さんからもらうエネルギーが、職員の心の支えになることもあります。職員もプロとしてかかわる面もあるけど、いい意味で普通……。利用者さんの孫みたいなポジションになるような感じです。「生活を支える」って懐に入る力がすごく大事で、他人だけど他人事じゃない、他人のケアではなくて家族事のケアなんです。「自分のおばあちゃんだったらこうしてあげたいな」というような、あったかいケアがミノワホームにはありますね。

ミノワホームは、私のケアの概念をひっくり返してくれたんです。そういった温かいケアにいっぱい触れさせてもらって、たくさんの利用者さんから「ちゃんと食べてんの?」と愛してもらえて。利用者さんから貰うことってこんなにいっぱいあるんだって教えてもらえたんです。看護師としてプロとして、これくらいは知っていないといけないという部分ももちろんあるんですけど、私はまだまだ28歳の小娘なので。世の中知らないことばっかりで、そういう部分は知らなくていいんだって利用者さんが教えてくれて、「まだ未熟なままでいいんだ」と思わせてくれる。例えば、体験したことのない戦争の話は本を読むだけじゃわからないじゃないですか。そういういろんなことを教えてもらって、職員にも利用者さんにも育ててもらった4年間でした。

なので、恩返しがしたいんです。恩返しが直接無理なのであれば、この経験を恩送りという形で違うところに分け与えられるような。おじいちゃん、おばあちゃんたちに「お、やるじゃん」と言われるような人になりたいなっていうのはありますね。

「楽しかったね、 寂しくなるね」と言える最期

白石:
4年間で多くのことを経験されたのですね。「ケアの概念をひっくり返してくれた」という点についてもう少し聞かせていただいてもいいですか。

加藤:
ケアって「してあげたい」があると思うのです。看護師だからこそやってあげたくなるし、導きたくなるというか。「きっとこういうのが大事なんじゃないか」とか「こういうほうが幸せなんじゃないか」と仮説を持つと思うんです。でも、「本当にそれって本人のためなのだろうか」とも思うんです。

ケアは足し算も大事ですけど、私は専門職であればむしろ引き算が大事だと考えていて。基本的には黒子となって、利用者さんと利用者さんを支える家族とのかかわりを見守ります。なので、そのためには忍耐力が必要で、あえて何もしない部分があったりします。

白石:
たしかに、引き算は大切ですよね。有香さんがミノワホームでいちばん記憶に残っているエピソードは何でしょうか。

加藤:
いちばん衝撃的なエピソードは、娘さんが毎日面会に来ていたおばあちゃんが徐々に衰えていって、亡くなったときです。私の先輩が娘さんにかけた言葉が「楽しかったね、 寂しくなるね」だったんですよね。人が亡くなっているのに「楽しかった」と言えるって、衝撃だったんですよ。「ごめんなさい、悔しかったじゃないんだ、たしかにそうだ、楽しかった」と私も思ったんです。

それって、死が点じゃない。生活の延長線上に、日常の一部に看取りがある。今までの日常そのものが悔いの残らないケアとして日常になっていて、その日常をもう過ごせなくなるってことは寂しいねって。私たちは家族になることはできないけれども、家族事として一緒に向き合わせてもらえて、死は悲しいだけじゃないんだと教えてもらいました。

白石:
最期に家族にかける言葉はケアの集大成だとも思います。お話していただいたようなことはなかなかできることじゃないと思うので、羨ましい気持ちです。

加藤:
ミノワホームでの経験で、看護の集大成は施設看護だとすごく感じたので、その魅力を発信していきたいと思っています。良い施設と良い看護師が増えないと良い看取りはできないんですよ。介護士さんが優秀であっても、看護の一言でぐちゃぐちゃになることもあるので。なので、介護施設で看取ることに理解のある看護師さんが増えてほしいと思います。 「施設看護師ってキャリアアウトした人が行くところでしょ」とか「派遣で行くとこでしょ」みたいなイメージがあると思うので。

白石:
ありがとうございます。 私は有香さんのツイッターをフォローしてから施設看護のイメージが大きく変わった自覚があります。こんなに熱量を持って施設看護に取り組む看護師さんがいるんだって。

嫌だと思ったら「嫌だ」でいい。楽しいなら何が楽しいかを共有しよう

白石:
もうひとつ印象に残った言葉が、「感情との出会い」という言葉です。有香さんが思いもしなかった「感情との出会い」にはどのようなものがありますか。

加藤:
「心地いい」ですかね。高校生のときの同級生が亡くなったときには担任の先生に怒っていたのですが、あのときの同級生との向き合い方はきっと「心地いい」だったんですよね。ミノワホームでもそういう経験がたくさんあります。なので、「心地いい」をできる限り私は探したいと思っています。喜怒哀楽もいいなって思っているんですよ。むしろ病院では喜怒哀楽はあんまりなくって、看護師は感情を出しちゃいけない、泣いちゃいけない、怒っちゃいけないだったりしたんです。でも、ミノワホームでは喜怒哀楽の嵐みたいでした。

白石:
喜怒哀楽が素直に出せるのは、人間らしさがあるように感じます。

加藤:
そうですね。それが人間らしさだし、そういう感情がぶつかるからこそ生まれる信頼関係や物語もあると思っています。嫌だと思ったら「嫌だ」でいい、楽しいなら何が楽しいかを共有しよう、って。自由でいいんだって。看護師だからこうあらねばみたいにカチッと枠にはまるものではなく、飛んでいっていいというか、感情を自由にさせていいと教えてくれたのは、ミノワホームでしたね。

看護って楽しめるものだと思うので、 いっぱい味わってほしい

白石:
最後のカードは「あなたが後輩の看護師に伝えたいことはなんですか」です。

加藤:
ぜひ、楽しんで看護をしてほしいと思います。看護って素晴らしい仕事、職業ですから。SNSでは「看護師つらい」と出てくることが多いですけど、私は楽しめるものだと思うので、いっぱい味わってほしいし、いっぱい楽しんでほしいと思います。もし見えてない人がいるのであれば出会えてないだけ、って感じですかね。

白石:
出会えてない看護師さんが出会うことは難しいと思うんです。どうしたら出会えるでしょうか。

加藤:
すごく難しくて、自分で探すしかないと思うんですよ。与えられるものではないですし、与えられても違うと思ったら違うんですよ。だから、自分自身が「これが楽しい」と思うところまでトライし続けないといけないし、情報が多いならば捨てなければいけないと思うんです。選択と集中って大事だと思っているので。

私は東京のど真ん中の病院で情報量と人が多すぎる環境から、 不便がある生活、シンプルな生活、人にありがとうって感謝を伝えられる生活、当たり前が当たり前じゃないことに感謝できる生活を選んだんですね。それを選んだから、この楽しさに出会えたんだと思います。こういうものは看護だけじゃないと思っていて、働き方、生き方、住み方とかを含めて、自分が納得するものを探してほしいです。自分の人生なんだから、自分が楽しいように動くしかない。

でも、本当に出会えていないのだったら、“加藤有香に連絡をください”って思います。私がここに出会ったのも、ミノワホームに出会ったのも、SNSでいろんなつながりをいただいて、そこから自分で動いて探して、全国いろんな施設のいろんな人に会いに行って、やっと出会えたんです。

「あ~いい人生だった」って思える人を増やしたい

白石:
最後にお聞きしたいのですが、今の時点で有香さんが「見たいと思っている景色」はありますか。

加藤:
私は「やっぱりこんなはずじゃなかった」という人を減らしたいし、「この人生で良かったな」と思う人が1人でも増えたらいいなと思っています。それが見たい景色だと思っています。

利用者さんや患者さんに看護師としてかかわるのか、いち住民としてかかわるのか、なんだっていいと思っているんですよ。この病気だから仕方がない、 家族に迷惑かけられないから仕方がないと言って、自分の希望を押し殺して、諦める人をいっぱい見てきたんですね。在宅で負担感が強くなって、崩壊してしまうような家族も多く見てきました。大事にしたい家族の形を最後まで守りながら、本人が「あ~いい人生だった」って思える人を増やしたい、生ききる人を増やしたい、支えたいみたいなのが、私のなかの課題というか。もっとハッピーな人が増えたらいいなと思っています。

インタビュアー・白石弓夏さんの著書



Letters~今を生きる「看護」の話を聞こう~

Letters~今を生きる「看護」の話を聞こう~
私もエールをもらった10人のストーリー


今悩んでいるあなたが元気になりますように
デジタルアートや3Dプリンタを看護に活用したり、看護をとおして一生の出会いをつかみ取ったり、在宅のほうが担い手が少ないから訪問看護に従事したり、苦しかった1年目のときの自分を手助けできるようにズルカンを刊行したり、医療と企業の橋渡しをするためにスタートアップに就職したり、悩みながらも新生児集中ケア認定看護師の道をまっすぐ進んだり、ロリータファッションモデルとして第一線で活躍しながら看護師を続けたり、目的に応じて疫学研究者・保健師・看護師のカードをきったり、社会人になってから「あっ、精神科の看護師になろう」と思い立ったり……。 さまざまな形・場所で働く看護師に「看護観」についてインタビューしようと思ったら、もっと大事なことを話してくれた。看護への向き合い方は十人十色。これだけの仲間がいるんだから、きっと未来は良くなる。「このままでいいのかな?」と悩んだときこそ、本書を開いてほしい。

目次


◆1章 クリエイティブな選択肢を持つこと 吉岡純希
◆2章 大きな出会いをつかみ取ること 小浜さつき
◆3章 現実的な選択肢をいくつも持つこと 落合実
◆4章 普通の看護師であること 中山有香里
◆5章 ものごとの本質をとらえる努力をすること 中村実穂
◆6章 この道でいくと決めること 小堤恵梨
◆7章 好きなことも続けていくこと 青木美沙子
◆8章 フラットに看護をとらえること 岡田悠偉人
◆9章 自分自身を、人生や仕事を見つめ直すこと 芝山友実
◆10章 すこしでも前を向くきっかけを作ること 白石弓夏

発行:2020年12月
サイズ:A5判 192頁
価格:1,980円(税込)
ISBN:978-4-8404-7271-5
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