ここには12枚の『問い』が書かれたカードがあります。
ゲストが、それぞれ選んだカードに書かれた『問い』について、インタビューを通じてゆっくり考えていきます。
カードには何が書かれているか、ゲストにはわかりません。

ここでの『問い』とは、唯一の正しい答えがあるものではなく、思考を深め、さらなる問いを生んだり、生涯にわたって何度も問い直したりするような本質的なもの。
そして、ゲストの考えや価値観、人柄に触れるようなものが含まれています。
簡単に答えは出なくても、こうした考える時間自体に意味があるのかもしれません。
いま、少しだけ立ち止まって、あなたも自分や周りの人に問いかけ、想いを馳せてみませんか。



ゲスト:平川亜弥
2008年、新卒で地元にある医療法人社団成蹊会岡田病院に入職。看護師3年目で循環器や心臓血管外科に強い大きな病院に転職するも、祖父の看病のために地元の病院に戻る。2020年より主任へ昇進し、プレイングマネージャーとして勤務。4児の母。メンタルヘルスマネジメント2種、心電図検定2級、BLSプロバイダー、ファーストレベル修了。

インタビュアー:白石弓夏
小児科4年、整形外科・泌尿器科・内科系の混合病棟3年、その後、派遣で1年ほどクリニックや施設、ツアーナース、保育園などさまざまなフィールドで勤務。現在は整形外科病棟で非常勤をしながらライターとして活動して5年以上経つ。最近の楽しみは、仕事終わりのお酒と推しとまんが、それと美味しいごはんを食べること。

母親と同じ職業、同じ職場で

白石:
お久しぶりです。亜弥さんは以前、出産・子育て経験のある看護師さんの取材でお話しして以来のインタビューですね。今回は亜弥さんがこれまでどんな風に働いてきたのかいろいろお聞きしたいです。まず、最初に入職したのは亜弥さんのお母さまも看護師として働かれていた病院だそうですね。同じ病院を選んだのは、なにか理由があったんでしょうか。

亜弥:
看護師になったきっかけが、地元の人の役に立ちたいという気持ちからだったのが大きいですね。私の父親が公務員でわりと家にいたんですが、母親は看護師でずっと病院にいるような状況だったので、祖父母がずっと家にいて私を育ててくれました。また、祖父母以外にも地域の人がよく面倒をみてくれて。地元は高齢化でお年寄りに囲まれて育ったこともあり、自分の知識や技術を地元の人のために使いたいという気持ちが強くありました。あと、母親はあまり家にはいなかったですけど、憧れもあって。地元が田舎の病院で人手不足だったこともあり、母親から勧められて入職を決めました。

でも、最初は周りの目がけっこう気になりましたね。親子だからって、正当に評価されているとは見てもらえないとか、甘やかされていたんじゃないかと。私が昇進したときも親子だからという人もいて、悩む時期もありましたね。

白石:
あまり家にはいなかったお母さまということですが、どのような面で憧れを抱いていたんでしょうか。

亜弥:
中学生くらいの頃に祖母が大動脈弁狭窄症で、家で意識を失って倒れたときがあり、そのときに母親が迅速な対応しているのを見て、かっこいいなって。普段は仕事から帰ってきても、寝ずに勤務表を作っていたか、「宿題やったんか」とよく怒られていた記憶が多いんですけどね。そういうのも含めて、私なりにかっこいいなって思っていたんだろうなと思います。誰かのために自分の力を注ぐというか、やっぱりいいなと思っていました。

白石:
看護師になろうと思ったきっかけは、その中学生の頃の出来事からだったんですか。

亜弥:
そうですね。もともと中学の理科や生物の授業で身体のしくみ、心臓の勉強をするのが好きだったんですよね。「おばあちゃんが悪いところはここだ」って。当時は電車でよくお見舞いに行っていたので、そのときから看護師の仕事や人体のしくみに興味があったと思います。

白石:
先ほど、お母さまがいる病院で親子だからと言われることもあって悩まれたと話されていましたが、今ではもう気にならなくなったんでしょうか。

亜弥:
私の耳には全然入ってこなくなった気がしますね。私はわりとネガティブで自己肯定感をうまく保てないので、まだ頑張り足りないって感じで苦悩していたタイプで、親子だからってそれは仕方ないとある程度割り切るというか、目的のためにもうその特権を使ってもいいんじゃないかと思っている部分もあって。そのかわり、誰よりも職場に早く行ってめちゃくちゃ仕事しますし、自分の立場的にもみんなが働きやすいように翌日の整理をして帰って、みんなに還元していこうという姿勢で頑張っているので。そこに関して文句は言われない、言われる筋合いはないよなと思っています。

母親のほうがそこの割り切りが難しいタイプかもしれないです、真面目すぎるというか。母親は逆に私にだけ厳しくあたっていたので、それで守ってくれていたこともあるんでしょうけどね。私は厳しくしてもらっていいんで、今では母親と同じこの病院で働いてよかったと思っています。

座右の銘、一日一生

白石:
亜弥さんはお子さんが4人いて、そのなかで産後もわりと早く復帰されて病院で夜勤もしながら働いて、いろいろ資格勉強とかもされていますよね。どこにそんな時間やエネルギーがあるんだと思うんですが。

亜弥:
自己肯定感が低いところから、たぶん仕事で社会に貢献することで、それが保てているのかなと思うんですよね。産後って誰でもメンタルが不安定になると思うんですけど、私の場合は授乳しながら家にひとりでいると、「私は社会に貢献できていない」みたいな考え方の癖、病み方をしていたんですよ。だけど、今思えば子どもを産んで育てるってそれだけで社会に貢献していることだし、友だちが同じように病んでいたらそうやって声をかけると思うんですけど、自分のなかでは社会で働くことを、貢献している実感を得ないとダメだったんだろうなって思います。

私、座右の銘があるんですよ。「一日一生」っていう、1日を人生にたとえて生きていくっていう考え方で、朝起きて寝るまでが一生だと。ファーストレベルの研修に行くときも、私は休み扱いで行ったので、そうすると日勤、日勤、研修、日勤、日勤と連勤になってしまうんですよ。それを一日一生で、次の日には生まれ変わったような気持ちで乗り切りましたね。仏教のような考え方ですけど、生まれて死ぬまでにどうしても時間が限られるので、子どもたちと過ごせる時間も限られるし、楽しく過ごしたいという気持ちが強くて、この一瞬一瞬は大事にしようと思っていますね。

たぶん自分が子どものときに親とかかわれなかった寂しさがあるので、子どもたちといる時間は大事にしたいと、一番削っているのは睡眠かもしれないです。必ず寝る前に子どもたちには「大事だよ」と言って寝かしつけて、子どもたちが寝てから自分の勉強と思っているので。

白石:
本当にすごいです。働き方の理想として看護師としての自分のキャリアも、子どもや家族もどちらもと考えるけど、両立できる人はなかなか多くはないと思っていたので。

亜弥:
ちょうど今日、後輩から「人間じゃないです、主任」って言われましたね(笑)。あとはうちの病院の夜勤は変則の2交代で夜の19時スタートなんですよ。ちょっと家のこと済ませてから出勤できるので、子育て世代には働きやすいのかもしれないですね。

白石:
管理職の仕事って、残業とか家に持ち帰りの仕事とかも多いんじゃないですか。

亜弥:
私はプレイングマネージャーで部屋持ちしながらリーダーや管理業務をやっているので、その日の業務はめちゃくちゃ忙しいんですよね。それで、残業も2~3時間ということもありますが、残業にならなくても、その日が終わるとクタクタなので、なるべく持ち帰らないようにはしていますけど、持ち帰るときもありますね。でも、家ではちょっとアホになる時間をあえて作るというか。子どもたちにも仕事の話をしていると、一番上の子は小学6年生なんですけど、「ママはよく頑張ってるよ、家ではだらだらしていいんだよ」とカウンセラーみたいなことを言ってくれて、癒やしてもらっていますね。

白石:
旦那さんとは仕事とか子育て、家のこととかはどのようなスタンスなんですか。

亜弥:
主人の仕事は消防士なので、24時間勤務の固定サイクルなんですよね。なので、それに合わせて私の勤務の融通をきかせてもらっています。主人がいないときは私が必ず家にいるようにしていて。結婚前からお互い仕事が大事だとわかりながら結婚しているので、わかってくれていると思うけど、やっぱりコミュニケーションは大事だなと思っていますね。親も働いていて頼れないので、基本は2人でやるというところで、子育てや家事はそれぞれにできるので。よくできた人と結婚させてもらいました(笑)。

とりあえず職場に行った自分を褒めるスタンス

白石:
亜弥さんは看護師になってから、心が折れそうになったとか、そういうことってあったんですか。

亜弥:
めちゃくちゃありました。それこそ本当に新卒の最初のころは、わからないことがわからない状態が続いていて、職場の先輩たちもみなさん忙しいので、手取り足取りずっと一緒に教えてもらうわけにもいかず、自分ができていないことに気づかないまま何時間か過ぎてから「なんでこれできてないの」と言われちゃうこともけっこうあって。

うちは田舎の病院なので特殊かもしれないですけど、新卒で入職して2~3カ月でリーダー業務をやって夜勤に入るような、どんどん進んでいく感じだったんです。なので、いろんな疾患の勉強もしながら嫌だ嫌だ、行きたくない、看護師向いていないと思うこともありました。当時は実家にいたので、朝「行きたくない」って言うと、母親が「いってらっしゃい」って言うんですよ。行きたくないって言いながら出勤していました(笑)。

白石:
お母さまとは同じ病院なんですもんね(笑)。

亜弥:
そうそう。当時はね、朝の情報収集とかもあるし、先輩より早く行って、心電図モニターの記録を印刷してカルテに貼ったり、日勤の準備したりして。あと、転職した後の大きな病院では、私は3年目でそれなりに仕事になれてやる気満々の状態で行ったから、毎日のように「明日のオペはAAAだから疾患や術式のレポート書いてきて」と言われても勉強が面白いという気持ちがありましたけど、新卒で行ったらきつかったでしょうね。心電図なんか本当にわけわからんってなっていましたね。

白石:
亜弥さんにもそういう時期があったんですね。その状態から、どのようにして抜け出したんでしょうか。

亜弥:
とにかく職場に行くところからはじめたというか、とりあえず行ったらもう終わるまでやるしかないというか。でも難しいですよね。今は職場の選択肢が増えているだろうし、転職のハードルも下がっていると思うんで、合わないと思ったら別に辞めてもいいと思うし。私みたいに、やっぱりここで働いているようなかっこいい看護師になりたいみたいな、自分のなかでなにかあれば続ける価値があればいいじゃないかと思うし。真面目に向き合っているからいろいろ悩むんだと思うので、とりあえず職場に行った自分を褒めるようなスタンスで頑張っていましたね。

白石:
お話を聞いていると、亜弥さんは自己肯定感が低いと言っていましたけど、元々自分に求めているものが高いのかなと感じました。

亜弥:
そうだと思います。誰かに認められたいのかっていうのは、自分でもよくわかっていないんですけど、……結局は自分なんだろうなと思うんですけど。自分で自分が認められなくて、まだ足りない、まだ足りないとずっとやっているのかな。理想とする看護師とか、理想とする母親のイメージが相当高いんだろうなって思います。

白石:
それはお母さまの影響も大きいのかなと思うんですが、ほかにも自分に影響を与えたものがなにかあったりするんですか。

亜弥:
人の役に立ちたいっていう気持ちですよね。毎日仕事が終わって家に帰って寝る前に「今日はこれがよかった、これはもうちょっとこうしよう」とか振り返りをするんですよ。ポジティブに考えればこれは”のびしろ”だと思うんですけど。普段は保育園とか小学校の保護者さんとも人見知りであまり話ができなかったりして、そういう反省ばかりしていて、今日もこの後ひとり反省会をすると思うんですけど(笑)。でも、もうそろそろ自分を褒めてあげてもいいんじゃないかという気持ちもあるんですよね。みんながもっと働きやすいように今主任として頑張っているところでもあるので。

白石:
自分に求めているものが自分のレベルがどうこうというよりも、どれだけ周りに役立てているかみたいなところに軸があるように感じますね。

N字みたいな伝い方を意識、相手のいいところを伸ばす

白石:
それでは質問のカードを準備したので、こちらから選んでください。

亜弥:
右から4番目でお願いします。

白石:
「最近声を出して笑ったことはなんですか」ですね。

亜弥:
なんですかね、普段も笑っていること多いと思うんですけど、どんなジャンルにしよう。あ、うちの病棟仲がいいんですけど、仕事中の話でもいいですか。

白石:
いいですよ、思いついたもので。

亜弥:
もうひとつしか思いつかない(笑)。この間、病棟で外科のカンファレンスと他病棟への転棟と入院が一気に重なって、申し送りを聞かないといけなくなって。そんなときにカンファレンスに集まった先生たちはのんきにブレーキ付きの歩行器の話で盛り上がっていて、ちょっとそれを見てイラっとしたんです。それで気が高ぶった話を別チームのリーダーと話していたときに、なんでかわからないけど私おならが出ちゃったんですよ。そのまま「最近おしりゆるいよね」って話でめちゃくちゃ笑って、イラっとした気持ちとかどうでもよくなったなって。すみません、もうこれしか思いつかなくて(笑)。

白石:
すごいタイミングだったんですね、おならで笑ってどうでもよくなってしまうってそれもなんかいいですね。

亜弥:
田舎の病院なんで、40~50代とかベテランの人も多いので、新卒さんもいるけど和気あいあいとしていると思います。

白石:
いいですね。亜弥さんからみて年上の方が多いと、主任をしている立場上、ちょっとやりにくいとかそういうことはないんですか。

亜弥:
私の下っ端感はありますけど、言わないといけないことはちゃんと言うようにしていますね。たとえば、N字みたいな伝え方を意識していて、「最近こういうこと頑張っていますよね」という話から、言わないといけないことを言いつつ、最後は良いところを伸ばす、期待しているというメッセージを送るようなイメージです。主任として目標管理の一次評価に携わっているので、夜勤で2人になったときとかに話したりします。逆に年下だから言いやすいこともあると思うんですよね。こういうところ尊敬しています、見習いたいですって、こうしたやりとりをすると受け入れてもらいやすいと思います。急性期だと仕事が速い人が正義みたいなところありますけど、よく見てみるとすごく丁寧にケアをする方や、器用な方もいて、そういうポイントはしっかりと伝えるように意識していますね。

白石:
上手にされているんですね。主任になりたてのときとかは、今よりも苦労されたりしたんですか。

亜弥:
いろいろありましたね。それこそ母親のおかげだろと言われたこともありましたけど。以前いた師長が私を主任にしたいと推薦してくれて、「絶対に文句言わせんようにするから」って味方してくれたことがあったんです。推薦は母親ではなく、その師長さんのおかげなんですよね。すでに看護師3年目で一度転職する前あたりから師長代理をしていて、目をかけて育ててくれていました。そのあたりから、主任になるフラグが立っていたのかなって。

その頃から興味があって勉強したいなと思っていたのがメンタルケアで、最初に取った資格がメンタルヘルスマネジメント2種なんです。当時はまだ管理的な仕事は教わっていなかったけど、自分のなかで意識していこうとしていて、みんなの役に立てたらいいなっていう気持ちでいましたね。育児中かなんかにユーキャンで資格を見つけて勉強しました。

過去に一度メンタルを崩したことがあって

白石:
亜弥さんみたいに、自分の視点やエネルギーが外に向いている人って、一方で自己犠牲的になりがちというか、しんどくなってしまうっていうこともあるのかなと思ったんですけど、亜弥さんはあまりそのイメージはなくて。そのへんどううまくバランスとってやっているんですか。

亜弥:
高校生くらいのときに、人間関係で一度メンタルを崩したことがあったんですよね。そのとき先生に、「社会に出るとこういう風になる人も多いから、今のうちに自分がどういうときに病みやすいか知っておいたほうがいいよ」みたいなことを言われて、たしかにって思ったんです。そのときはそのときで学校に行きづらくなってしんどかったんですけど、意外と自分の趣味である勉強のスライドを作ることにハマったりもして……。

白石:
勉強が趣味みたいな感じなんですね。亜弥さんの場合、資格とか勉強って自分の知的好奇心を満たすような部分も大きいのかなと思いました、勉強って時間を作ってやらなきゃいけない、しんどい、苦しいみたいなイメージではなく。

亜弥:
ごはんみたいな感覚ありますね。

白石:
そのメンタルを崩したときは、どのようにして過ごしていたんですか。

亜弥:
様子がおかしいからって母親が病院に連れて行ってくれたのかな。あとは、友だちでもちょっと似たような状況の子がいて、学校に行けていなくて、その子と話したりするなかでいろいろ教えてもらったりして、少しずつ復活していきましたね。それからは、ある程度いったらブレーキがかけられるというか、俯瞰的に自分のことを見られるようになったと思います。いろんな人と出会って話を聞いたりもするし、『嫌われる勇気』っていう本も教えてもらったり、いろんな考え方を知って視野を広げたりして。高校生のころの体験から、自分のなかに秘めすぎないというのは意識していますね。今だと家族に話を聞いてもらうとかしています。いろんな対処法とかコミュニティとか持っているといいなって。

白石:
亜弥さんにとってのコミュニティって、たとえば。

亜弥:
子どもの習い事の保護者とか、SNSで知り合った人とか、地元にいる友だち、看護学校の友だち、職場と旦那と家族と……って感じですね。

白石:
旦那と家族と別々なのがなんかいいですね(笑)。

看護は素晴らしい、自分のしたい看護を楽しんで

白石:
それでは、最後の質問です。「後輩の看護師に伝えたいことはなんですか」です。

亜弥:
看護は素晴らしいので、自分のしたい看護を楽しんでほしいと思います。もうこれだけ、あとはぜひ一緒に働きたいですね。

白石:
私が一緒に働きたいです(笑)。亜弥さんが思う、自分のしたい看護って昔と今と比べてなにか変化とかありましたか。

亜弥:
昔は月並みに大きなことを考えていたんですよね。患者さんがよくなってほしいとか。でも今はナイチンゲールの看護覚え書きのように、患者さんの生活を支える部分から介入していく、適度な睡眠がとれるとか、照明や室温とかそういうところから整えていけるように、と思うようになりました。もう本当に基本の基本だと思います。看護師のこうしたかかわりで患者さんが安心して眠れるとか変わるってことを目の当たりにして、人として患者さんを大事にすることって本当に尊いなって。若い頃はなんだかうわべだけというか、ナイチンゲールの覚え書きもピンときてなかったんですけどね。患者さんが安心して治療に専念できる環境を整えるっていうのが、一番大事なことだなって思っています。

心電図モニターでPEA(無脈性電気活動)というので、波形は出ているけど実は脈は触れないという状態、モニターで見えているものと実際の患者さんの状態が一致しないことがあります。自分がいつも見ている患者さんを信じる、データだけに捕われないようにと思いますね。それが看護だと思っているので、患者さんの一番近くにいる存在として自信を持って、患者さんの変化にいち早く気づけるような知識や技術を、看護を提供する、それが看護の楽しさだと思います。

白石:
看護は素晴らしい、楽しいものだってなかなか自信を持って言えないと思ったんですけど、亜弥さんだからこそ説得力がある言葉ですね。亜弥さんはお母さまが看護部長をされていて、今後管理職としてステップアップしていって、ゆくゆくは看護部長にということは考えられているんですか。

亜弥:
いや、もうさらに先を考えていて。もしかしたら看護部長になるかもしれないけど、母親はデータ分析とかそういう方面に強くて、でも私は苦手なので。別の方法で職場環境の改善とか役立てていけたらと考えています。その先というのは、うちの病院で看取りのできる訪問看護ステーションを作って、最後はそこで働きたいと思っているんですけど。今の地域は、どうしても家で看取りができるところがなくて。そこが最期の私の職場でありたいと考えていますね。それで次の看護部長さんを育ててみたいと、いろいろ取り組みながら考えています。

白石:
あ、想像のさらに上をいく回答でした、最後はやっぱり地域なんですね。ありがとうございました!

インタビュアー・白石弓夏さんの著書



Letters~今を生きる「看護」の話を聞こう~

Letters~今を生きる「看護」の話を聞こう~
私もエールをもらった10人のストーリー


今悩んでいるあなたが元気になりますように
デジタルアートや3Dプリンタを看護に活用したり、看護をとおして一生の出会いをつかみ取ったり、在宅のほうが担い手が少ないから訪問看護に従事したり、苦しかった1年目のときの自分を手助けできるようにズルカンを刊行したり、医療と企業の橋渡しをするためにスタートアップに就職したり、悩みながらも新生児集中ケア認定看護師の道をまっすぐ進んだり、ロリータファッションモデルとして第一線で活躍しながら看護師を続けたり、目的に応じて疫学研究者・保健師・看護師のカードをきったり、社会人になってから「あっ、精神科の看護師になろう」と思い立ったり……。 さまざまな形・場所で働く看護師に「看護観」についてインタビューしようと思ったら、もっと大事なことを話してくれた。看護への向き合い方は十人十色。これだけの仲間がいるんだから、きっと未来は良くなる。「このままでいいのかな?」と悩んだときこそ、本書を開いてほしい。

目次


◆1章 クリエイティブな選択肢を持つこと 吉岡純希
◆2章 大きな出会いをつかみ取ること 小浜さつき
◆3章 現実的な選択肢をいくつも持つこと 落合実
◆4章 普通の看護師であること 中山有香里
◆5章 ものごとの本質をとらえる努力をすること 中村実穂
◆6章 この道でいくと決めること 小堤恵梨
◆7章 好きなことも続けていくこと 青木美沙子
◆8章 フラットに看護をとらえること 岡田悠偉人
◆9章 自分自身を、人生や仕事を見つめ直すこと 芝山友実
◆10章 すこしでも前を向くきっかけを作ること 白石弓夏

発行:2020年12月
サイズ:A5判 192頁
価格:1,980円(税込)
ISBN:978-4-8404-7271-5
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