ここには12枚の『問い』が書かれたカードがあります。
ゲストが、それぞれ選んだカードに書かれた『問い』について、インタビューを通じてゆっくり考えていきます。
カードには何が書かれているか、ゲストにはわかりません。
ここでの『問い』とは、唯一の正しい答えがあるものではなく、思考を深め、さらなる問いを生んだり、生涯にわたって何度も問い直したりするような本質的なもの。
そして、ゲストの考えや価値観、人柄に触れるようなものが含まれています。
簡単に答えは出なくても、こうした考える時間自体に意味があるのかもしれません。
いま、少しだけ立ち止まって、あなたも自分や周りの人に問いかけ、想いを馳せてみませんか。
赤穂市民病院に入職後、ICUで2年半勤務し、その後は透析室や内科病棟を経て、現在はHCUに配属されて約10年。看護師歴は25年になる。小学生のころから絵を描き始め、現在は看護師として働きながらイラストレーターとしても活動。好きなゲームは「MHW(モンスターハンターワイルズ」と「ZZZ(ゼンレスゾーンゼロ」。
著書(漫画):『ハイパーソノグラファーK』(メディカ出版)
小児科4年、整形外科・泌尿器科・内科系の混合病棟3年、その後、派遣で1年ほどクリニックや施設、ツアーナース、保育園などさまざまなフィールドで勤務。現在は整形外科病棟で非常勤をしながらライターとして活動して5年以上経つ。最近の楽しみは、仕事終わりのお酒と推しとまんが、それと美味しいごはんを食べること。
漠然とした将来に乗っかるのが嫌だった
白石:
小玉さん、はじめまして。いつもX(Twitter)ではガンダムやプラモネタでいいね押しまくっていてすみません(笑)。今日はいろいろとお仕事のお話をお聞きできたらと思います。まず、これまでのご経歴についてお聞きしていいですか。
小玉:
いつもありがとうございます。職場自体は就職してからずっと地元の同じ病院に勤めているんですけども。入職した当時ICUがあったので、ICU配属されて、そこで2年半ほど。その後は透析室や内科の病棟に行ったりしながら、最終的に元々あったICUがHCUに変わったので、HCUに現在配属されて約10年ぐらいですかね。
白石:
ずっと地元で、最初も地元の病院を選ばれたんですね。
小玉:
単に地元から病院が近いんです。元々実家住まいで、実家から30分ぐらいのところだったんで。学生のときに当時の院長が大卒の看護師を探しているらしいっていう話はあって、ちょうど実家から近かったのもあったので、就職試験を受けて、採用されたっていうのがきっかけで。だからもう25年になりますね。
白石:
そもそも、小玉さんが看護師を目指されたきっかけはなんだったんですか。
小玉:
一言で言ってしまえば、別に看護師じゃなくてもよかったんです。人と違うことがしたかった。なんか、みんながみんなそうじゃないと思うんですけど、いい高校出て、いい大学を出て、どこかいいところに就職してっていう、漠然としたものが周りにあって。そういう将来が見えてしまっているものに自分も乗っかるっていうのが嫌だった。
それで、受験のときに親が「こんな大学あるで」って言ってきたのが看護大だったんです。「男で看護師ってちょっと珍しくない? 面白そう」みたいな気持ち。だから、きっかけとしては不純ですよね。患者さんのためにとか、そういうのがベースにない。今でもたまに上司から叱られますよ。「小玉くんは患者さんのことみてないよね」って。
白石:
そうだったんですか。それにしても看護大学をすすめてくるって、なにか思うところあったんでしょうかね。
小玉:
どうでしょうね。特にうちの親は看護師でもなんでもないですし。ただ、「なんか人と違うことがしたい」みたいなことは多分言っていたので。今みたいにYouTuberとかプロゲーマーの学部があるって言われていたら、もしかしたらそういうところに行こうとしていたかもしれない(笑)。昔から絵を描いたりはしていたけれど、そういうのでは「食べていけんやろ」みたいなことはずっと言われていたので。そこはないっていうのは、なんかもう刷り込まれていたかもしれないですね。
理想に近い環境と向き合う体力の不安
白石:
小玉さんは同じ病院で25年間働かれてきて、それもすごく珍しいことだと思うんですけど、これまで転職を考えたことはなかったんですか。
小玉:
いやぁ、常々思っていますよ。常々思っているけど、そこに踏み切るほどのことがないというか。結婚して子どもができて、となってくると、どうしてもおいそれと転職できないというのもある。それで、他の病院に行ったとしても、状況はあんまり変わらないかなって。
よほどのこと……たとえば嫌な上司や同僚がいるという理由があったとしても、別の環境に行ったところで、多分同じような人はいるだろうし。都会のほうに行くってなったら、家建ててしまった後だと通勤が大変になるとか、引っ越しをしないとならないとか。仕事じゃないところで煩わしいことが増えるのが嫌だったんでしょうね。
白石:
なるほど。なんだかんだ、今の職場に満足しているってことでもあるんでしょうか。
小玉:
言われてみれば、現状に不自由がない。限りなく理想には近いのかな……。看護師でありながら、イラストの挿絵の仕事をさせてもらったり、それが叶っているというか。そうやってしていることに対して、ガチャガチャ言われたら辞めてやれって思うかもしれないですけど、そこまで言われない。ベースが公務員なので、生活基盤が整っている状態で、かつ自分のやりたいこともできている。その意味では今の環境は、ベストではないけどベターかなと思いますよね。
白石:
というと、ちょっと足りないものもないわけではないと(笑)。
小玉:
そう言われると、具体的になにってわけでもないんですけど(笑)。現状に甘んじていられるというのかな。
白石:
今の病院には小玉さんと同じように25年とか長年働かれている方も多いんですか。
小玉:
いえ、多くはないと思いますよ。同期で今も勤めているのは1人2人とかなので。なんだかんだみんな結婚して出る人もいれば、男性だと大学の教員になるとか。そんな感じで辞めて転職した人もいます。教員になった同期も、そこはそこで大変な部分がいっぱいあるじゃないですか。看護師として病院で働いているのとはまったく違う。同級生でも、やっぱりなんか先輩にいじめられてみたいな話を聞いたりしますし……。結局、それは、やっぱ変わらんのかな。よほど、命が脅かされるぐらいのなにかあるんだったら変わるべきかなとは思うんですけど、そういうことはないし。
白石:
それって、長年働くなかで、やっぱり今のところで頑張ろう、やっていこうと思うような変化があったんでしょうか。
小玉:
それで言うと逆かもしれないですね。元々は親からも同じところでずっと定年まで勤めるのが良いみたいなことを言われ続けていて、今でも言われるくらいなんですけど。退職金がしっかりもらえるとかそういう話を聞かされてきたので、自分もポンポンと転職するのはどうなのかなっていうのはあったんです。だけど、その反面で今思うのは、不満はそこまでなくても体力的にもしんどくなってくると思うので、この状態で定年まで勤めあげられるかという状況に直面しつつあるんですよね。
白石:
なるほど、それは体力的な心配、不安が大きいんですね。
小玉:
40過ぎて、もう50歳が見えてきて。定年まであと10年以上あるけど、これいけるのかなって。同じ世代の人でも、その中から管理職になる人って限られてくるじゃないですか。自分はなりたくないから、ならないっていう選択をしたんです。ということは、このままいったら定年までずっと現場の看護師として働き続けないといけない。今はたとえば師長さんたちだって、自分より年上の人が多いんですよ。よくやっているなって思います。でも60前後で夜勤して、ワァーって暴れている患者さんにどう対応するのか、とか。昔に比べて想像しやすくなってきた。このまま体力的なものだけでなく、現場の環境もいろいろ変わってきているのも含めて、しんどいなって感じるようになってきています。
院長のカルタから広がった表現の世界
白石:
小玉さんは看護師として常勤で働きながら、イラストのお仕事もされていますよね。最初に絵を描き始めたのはいつごろからなんですか。
小玉:
最初は小学生ぐらいからです。いとこのお兄さんが漫画家になりたいってずっと言っていて、それを見せてもらったりしていて。自分でも描いていいんだって思って、漫画を描き始めたのがきっかけですね。友だち同士で描いた漫画を見せ合いしたりして。当時、一番影響を受けた漫画は『ドラゴンボール』ですね。
大学の同級生の知り合いが小さな出版社をやっていて、そのイラストの仕事を学生のころから少しやっていたんです。一応医療系の挿絵というのかな、いわゆる風刺画のようなものです。就職してから、当時の院長が『医療安全対策いろはカルタ』を作るって言い出して。職員みんなから読み札を募集して、それに私が絵をつけるという形になりました。院長が自費出版みたいな形で販売されて。あとはHCUの案内版とか、ポスターとかにもよく絵を描いたりしていました。
白石:
院長先生や周りのスタッフは小玉さんがイラストのお仕事をされていることは知っていたんでしょうか。
小玉:
大々的に「イラストレーターをしています」みたいには言ってなかったですね。「ここにこういう絵がほしい」と言われたところにちょっと描いている程度。趣味の延長みたいな形です。今でも他の病棟の人はあんまり知らないと思います。
白石:
イラストレーターさんでもいろんなジャンルの、いろんなイラストの描き方があると思うのですが、小玉さんはどのようなものを得意とされているんですか。
小玉:
僕の場合は、漫画のストーリーの一部を切り取ったような、風刺画のようなものです。心臓の解剖図みたいなものじゃなくて、どちらかというと漫画に近い。たとえば、100歳超えのおじいちゃんがいろんな管につながりながらかろうじて生きている状況で、家族と看護師が「今日も元気そうですね」みたいなやり取りをしている、「どこがやねん」みたいなナンセンスな感じのイラストです。
白石:
常勤で働きながらだと、なかなか描く時間が取れなくないですか。休みの日にガッとまとめてやる感じですか。
小玉:
そうですね。休みの日を使ってやるのが基本で。夜勤明けでひと眠りして依頼が来ていたらザッと下絵やラフを描いて送って、返事が来たら時間の余裕があるときにまとめて仕上げるような。でも、だいぶ描くスピードは落ちてきていますね、勢いがないというか。
白石:
勢い。イラストを描く勢いってなんですか、アイデアが浮かばないみたいなことですか。
小玉:
なんでしょう、エンジンがかからないというのかな。最近は現実逃避が最優先みたいなところがあるので(笑)。「さあ描き始めよう」と机に向かうまでがしんどい。机に向かってしまえば、もう気づいたら夜中だったということはあるんですけど。机に向かわない理由を探してしまって、ゲームしたいなぁ、漫画読みたいなぁ、そんなことばっかり考えてしまって。気持ちを切り替えるのがしんどいことがありますよね。良くも悪くも、iPadとかでもイラストって描けるじゃないですか。だからテレビの前とかどこでもできるので、周りの誘惑がね……。
医療現場を知るイラストレーターの強み
白石:
看護師でイラストのお仕事をしたいという人は、私の周りにもいるんですけど、最初に仕事をもらうようになる段階が難しいと感じるようです。お仕事としてやっていくためには、どんなことが必要なんでしょうか。
小玉:
自分自身の話をすると、きっかけにすごく恵まれていたとは思います。当時の院長がだいぶ変わった人で、外に対しての発信力があって周りを巻き込む行動力もあって。そこで、出版社の人の目にも留まったというのはひとつあるだろうなって。SNSだと自分よりはるかにうまい人なんてたくさんいるじゃないですか。同じような土俵に立ったところで専門的に学んでいる人とか、四六時中絵を描いている人の中では埋もれちゃうんですよね。でも、医療の現場で働きながらでも少なからず描き続けてやってきたからこそ、きっかけが得られたのかなというのは、すごく思うんですよね。
白石:
看護師の仕事も続けながら描き続ける、ですか。
小玉:
看護師とか医療従事者のような専門職の人って、他の人が知りえないことをたくさん知っているじゃないですか。医療的な知識は本職としても大切なことですけど、イラストの中でも生かせること、こうやって使ってもらえることもあるんだという発見がいろいろあると思います。昔誰かに言われたんですよね。イラストがうまい人はたくさんいても、看護師としての知識があって、絵が描ける人ってなかなかいないのに、意外と「私、描けます」と対外的にやっている人は多くないと。医療の現場のこういう場面を間近に知っている人間として、的確に表現してもらえるとありがたいって言われたんです。それがやっぱり強みになるんですよね。
白石:
それはめちゃくちゃ思います。私もライターの仕事で挿絵をお願いすることあるんですけど、医療現場のことがよくわからない人にイラストの指示を出すのって参考画像をたくさんつけて伝えても伝わらないことがあって、とても大変なんだなって思うことがあります。
小玉:
そうそう。暗黙の了解のような感じで、多くを伝えなくても、看護師同士なら「こういう場面のイラストがほしいです」で伝わることも全然ありますからね。
白石:
ちなみに、看護師のキャリアは将来体力的な不安もあるという話がありましたけど、イラストのお仕事のほうは今後の夢とか考えているものはあるんですか。
小玉:
看護師の仕事もね、50歳をすぎて60歳までやっていけるのか、ドロップアウトするにしても、じゃあ辞めてどうするのというと、自分にできることって描くことぐらいなのかなって思うんで。漫画で一発当てたいなとか思ったりもするんですけど、もうね、それこそイラストもそうですけど、たくさんうまい人とかいるし。漫画ってやっぱり、ストーリーも絵もそうですけど、いろいろ計算されていないとダメなところっていっぱいあるじゃないですか。自分はそこを描き続けて鍛えていたわけではないので、またゼロからスタートラインに立つのは大変だよなぁと思うこともありますけどね。
天秤にかける感情、やりがいと魂を削る日々
白石:
それでは今回いくつか質問のカードを準備しましたので、こちらから選んでください。
小玉:
じゃあ右から1番目で。
白石:
「看護師の仕事をひとことであらわすなら」ですね。ちょっと真面目なやつだ。
小玉:
看護師の仕事をひとことで……。悩みますね……。
白石:
お子さんに「お父さんの仕事はこういう仕事だよ」って伝えるとしたら、とか……ふと自分の仕事ってこうだなと感じた場面でのイメージなどでもいいんですけども。
小玉:
そうか、そうすると……綺麗な言葉でいったら「やりがいのある仕事」っていうのはひとつあると思うんですけど、その反面命を削る仕事、自分の体力はもちろん魂も削られているような感覚がありますよね。心身ともに削りながら仕事しているなっていう思いはあります。
白石:
魂を削るというのは、たとえばどういった場面でそう感じますか。
小玉:
はっきりとは言いにくいですけど、不穏状態や重篤な患者さんとかをみているときとか……自分だけじゃなくて、自分たちって言ったらいいんですかね。看護師や医療者がこれって本当に患者さんのためになっているのかな、そうじゃないんじゃないかと思い悩む場面があるというか。たとえばDNRで、これ以上はなにもしないでって本人は言っていたけど、家族は最後までできることをしてほしいと、家族の希望のほうが最後は優先されて通ってしまうとか。医師の指示もあって、どんどん管につながれていく姿をみて、やらないといけないとなると、気持ちがしんどくなることもありますよね。
白石:
そのような状態が続いたとき、小玉さんはどのように対処されているんですか。
小玉:
一番簡単なのは、仕事を忘れて遊ぶことかな。ゲームしたりプラモデル作ったり、仕事じゃないことにがっつり集中するのが一番手っ取り早いかなとは思うんですけどね。
白石:
一時的に気分は少し晴れても、大元の問題は解決しない、もやもやは続きそうですよね……。
小玉:
そうなんです。どうしているんだろうなぁ。すべて納得できないままでも仕事をしないといけない場面もあるよなぁと思いつつ。でも、同僚と愚痴り合うというか、「これってやっぱり違うよな」「早くここから出て、家族とゆっくり会って話しができるようにしてあげたいよな」みたいに、話をすることはありますね。
なかにはもっと経験があって、自分の意見をはっきりと言える人もいるので、医師とディスカッションすることもあると思うんですけど。腹のなかでは思っていても、自分はあまり表立って言えるタイプではないので。それは良くないよなとも思うんですけどね。でも、そうやって言ってくれる人が職場にいるんで、それで救われることはたくさんあるし、ごくまれに自分も言ったこともあるかな。「本人はこう言っていましたよ」って。それで家族と話をする機会ができて、変化があったときはよかったなと思うし。看護師でもいろんなタイプの人がいると思うし、まずは自分の気持ちを先輩とか同僚に話してみるっていうのは大事なのかもしれないですね。
白石:
たしかにそうですね。若い看護師さんだと、自分の内に秘めてしまって、こんなこと思ったらおかしいのかもって思い悩んでしまうこともありそうですからね。
小玉:
そうそう。黒いものを腹のなかで溜めていると、どんどん毒されていくので、どこかで吐き出さないとね。
白石:
たとえば、他の病棟に移るとかそういうことは考えるんですか。魂を削りすぎないために。
小玉:
自分の場合は、病棟は病棟でまた質の違う忙しさや悩みがあると思うんですよね。たぶん自分には合わない。元々、循環器病棟にいたこともあるんですけど、そこではずっと終わりが見えないような状況で、仕事が終わってもなんか終わった感じがなく帰っていくみたいなことがあったんですよ。
白石:
あ~なんだかわかる気もします。
小玉:
HCUに比べれば、穏やかに時間がすぎるといえば、そういう一面もあるかもしれないんですけど、仕事はエンドレスな感じなんですよね。自分は透析室みたいに、今日はこれで終わりという一区切りあるほうが性に合っているんだと思います。だから今いるHCUもわりと透析室いる感覚に近いのかな。一定のところで病棟に渡せるので。
丁寧なケアに感動した経験、家族として見た看護の姿
白石:
先ほど、看護師の仕事を「やりがいのある仕事」とも言われていましたが、ここ最近でそれを感じた場面ってありますか。というのも、私は15年看護師やってきて、最近その感覚が薄れてきているなぁ、慣れてきちゃっているのかなぁなんて思うこともありまして。
小玉:
いや、そうですよね。なんだろうなぁ。ちょっとやりがいとは違うかもしれないんですけど、ふと思い出したことがあって。実は昨年の年末に叔母が亡くなったんです。10年以上脳腫瘍があって、手術してはまた出てきて、手術してはまた出てきてって何回か繰り返していて。それで、昨年の春だったと思うんですけど、最後に手術をして、それ以降もう意識が戻らなくなってしまって。働いているとわかるんですけど、脳外の患者さんって、なんか独特のにおいがするんです。つい最近、うちにもそういう脳腫瘍があって手術した患者さんが入ってきて、案の定そういう独特のにおいがしていたんですよね。だけど当時、たまたま1人で叔母の面会に行ったとき、全然においがしなかったんですよ。これはすごく丁寧にケアされているんだって感動して。
たしか葬式のときに会った叔父に話したんです。「脳外の患者さんって独特なにおいがするんだけど、叔母さんはそうじゃなかった。すごく丁寧にケアされていたんだよ。もう感動した。病院の看護師さんにもそう伝えてほしい」みたいに。それで後日、叔父が病棟の看護師さんに話しに行ってくれて、スタッフもすごく喜んでくれたと。ちょっと上から目線みたいになっちゃいますけど、同業者から理解を得られるような素晴らしい看護をしたと思ってもらえたのかなって。同業者から褒められるって、なかなかないじゃないですか。相手の看護師さんのやりがいにつながったと、それを伝えられたことがよかったなって思ったんですよ。
白石:
その看護師さんたちからしたら、当たり前にしていたことかもしれないですけど、そういう小さなことに気づいてもらえるって、純粋にうれしいですね。
小玉:
自分の仕事を外から見る、いい機会になりましたね。
白石:
たしかに外から見る機会も大事かもしれないですね。
それでは最後の質問に。「後輩の看護師に伝えたいことはなんですか」です。
小玉:
うちの子も含めて、昔から学生さんに話していたことでもあります。看護ばっかりするなって言ったら変ですけど、看護ではない視点も大事にしてほしいってことですかね。自分の好きなことでもいいんですけど、そういうことも一生懸命やってほしいなって思います。看護はもちろん、仕事としてもそうだし、自分の好きなこととして、看護するのもありだと思うし。それと同時に、仕事ではないところの趣味だったり、家庭のことだったり、いろいろあると思うんですけどね。
白石:
若くて真面目な看護師さんだと、遊ぶこととか悪じゃないですけど、その時間があったら勉強しなきゃみたいに思う人もいるかもしれませんよね。そんなことを言う怖い先輩とかもいるじゃないですか。
小玉:
まあね、もちろん勉強して知識や技術を身につけて看護に活かすってことも大事なんですけど。たとえば、担当の患者さんが亡くなったとか、いろいろとうまくいかなくてつらいことってたくさんあると思うんです。そういうときに、看護ではないところでの支えというか、逃げ道がなかったら、やっぱりしんどいと思うんで。そういう止まり木みたいな、自分なりの休める場所や空間を持っておくといいと思いますよね。周りでは「趣味とかないです」「休みの日はずっと寝ています」という子も多いので。寝るのもいいけど、もったいないよなぁって、もっと時間とお金を使ってほしいなぁ、なんて思ってしまいますよね。
白石:
止まり木って言葉いいですね。小玉さんの場合には、それがゲームをしたりプラモデルを作ることなんですか。私もフィギュアはいっぱい飾っていますけど、作るのはどうも性に合わないので。
小玉:
そうですね。時間があれば組み立てもそうですけど、こんな色にしたいな~とか、いろいろやりたいことはありますけどね。1日48時間ほしいなと思うこともあります(笑)。
白石:
いやぁ……48時間ほしいですね、切実に(笑)。今日はありがとうございました!
インタビュアー・白石弓夏さんの著書

私もエールをもらった10人のストーリー
今悩んでいるあなたが元気になりますように
デジタルアートや3Dプリンタを看護に活用したり、看護をとおして一生の出会いをつかみ取ったり、在宅のほうが担い手が少ないから訪問看護に従事したり、苦しかった1年目のときの自分を手助けできるようにズルカンを刊行したり、医療と企業の橋渡しをするためにスタートアップに就職したり、悩みながらも新生児集中ケア認定看護師の道をまっすぐ進んだり、ロリータファッションモデルとして第一線で活躍しながら看護師を続けたり、目的に応じて疫学研究者・保健師・看護師のカードをきったり、社会人になってから「あっ、精神科の看護師になろう」と思い立ったり……。
さまざまな形・場所で働く看護師に「看護観」についてインタビューしようと思ったら、もっと大事なことを話してくれた。看護への向き合い方は十人十色。これだけの仲間がいるんだから、きっと未来は良くなる。「このままでいいのかな?」と悩んだときこそ、本書を開いてほしい。
目次
◆1章 クリエイティブな選択肢を持つこと 吉岡純希
◆2章 大きな出会いをつかみ取ること 小浜さつき
◆3章 現実的な選択肢をいくつも持つこと 落合実
◆4章 普通の看護師であること 中山有香里
◆5章 ものごとの本質をとらえる努力をすること 中村実穂
◆6章 この道でいくと決めること 小堤恵梨
◆7章 好きなことも続けていくこと 青木美沙子
◆8章 フラットに看護をとらえること 岡田悠偉人
◆9章 自分自身を、人生や仕事を見つめ直すこと 芝山友実
◆10章 すこしでも前を向くきっかけを作ること 白石弓夏
発行:2020年12月
サイズ:A5判 192頁
価格:1,980円(税込)
ISBN:978-4-8404-7271-5
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