2026年9月に刊行され大好評中の書籍『ねころんで読める小児てんかん・けいれん』(小児ねこてん)コラボ企画!
医療従事者、患者家族の方、学校や療育関係の方から多く寄せられるギモンに、著者がお答えしていきます!
初回は、【けいれん発作編】。突然のけいれん発作に遭遇してテンパらないために、適切な対応とは?
★Q1:そもそも、けいれん(発作)は自然に止まることも多いと思うのですが、なぜ対応が必要なのでしょうか?
たしかに多くの場合、けいれん発作は2~3分ほどで自然に止まります。ただ、「自然に止まることが多い」と「何もしなくてよい」とは別です。
ではなぜ対応が必要か? それは、発作による脳や身体へのダメージを防ぐためです。例えば、短い発作でも、倒れて頭を打ったり、入浴中なら溺れたりする危険があります。まず必要なのは、発作を無理に止めようとすることではなく、患者さんの安全を守ることです。
一方、けいれん発作が長く続くと自然には止まりにくくなり、直接的に脳へのダメージが及ぶこともありえます。この場合には、できるかぎり早く発作を止めなくてはなりません。
また、けいれん発作の原因はてんかんだけではなく、低血糖や電解質異常、脳血管障害や脳炎・脳症などの場合もあります。「止まったから大丈夫」とは言い切れないわけです。目の前で発作が起きれば、誰でも慌てます。だからこそ、普段から「安全を守る」「時間を測る」「呼吸を見る」という対応を知っておいていただきたいですね。
★Q2:どのくらいの時間、発作が続いたら対応すべきですか?
発作が5分以上持続する場合が一つの目安とされています。ただ、誤解しないでいただきたいのは、「5分までは何もしなくてよい」という意味ではありません。発作が始まったら、まず周囲の危険を取り除き、呼吸や顔色を確認しながら時間を測ります。けいれん発作が5分以上続く場合は、その後自然に発作が頓挫する可能性は低くなりますので、重積状態として緊急の治療が必要になります。
また、一回ずつは短くても、意識が戻らないまま発作を繰り返す場合も同様です。呼吸が苦しそう、顔色が悪いといった場合には、5分を待たずに救急要請してください。
なお、発作のタイプによって治療開始や救急搬送要請の目安は違います。すでに発作を繰り返している患者さんでは、頓用薬を使う時期も含めて、主治医と事前に対応を決めておくことが大切です。
★Q3:具体的にどのように対応すればよいですか?
まず安全確保につとめてください。周囲の硬い物や熱い物を遠ざけ、頭の下に枕やタオルなどの柔らかい物を敷きます。首元の衣服は緩め、吐いた物が喉に流れ込まないようにします。時間を測り、そして、無理のない範囲で横向きにします。激しく動いている身体を押さえつけたり、無理に姿勢を変えたりする必要はありません。
特に覚えてほしいのは、口に指や箸、タオルなどを入れないことです。かえってけがや窒息の原因になります。そして呼吸と顔色を確認し、持続時間を測定してください。意識が十分に戻るまでは、水や食べ物、飲み薬も口から与えないようにするのも重要です。
余裕があれば、顔と全身が映る動画を撮影いただくと、診断の大きな助けになります。動画を撮影されるのであれば、全身が映るようにしてください。ただ、動画撮影より介助が優先です。特に一人で対応しているときには、無理に動画を撮ろうとしなくて大丈夫です。
★Q4:病院外でけいれん発作が起こった場合、救急車をよぶタイミングは?
一般的には、5分以上続く、意識が戻らないまま繰り返す、呼吸や顔色が悪い場合は、救急車を呼んでくださいと説明しています。また、大きなけがをした、水の中で発作が起きた、いつもと明らかに様子が違う場合も、救急要請してください。初めての発作の場合も、救急要請していただいてよいと思います。すでに止まり、普段どおりに戻っていても、初めての発作なら、できるかぎり速やかな診察が必要です。
一方、いつもの発作が短時間で止まり、その後も普段どおりに回復している場合は、必ずしも毎回救急車が必要とは限りません。主治医と「この子の場合は、いつ呼ぶか」を決め、ご家族だけでなく園や学校とも共有しておくことが大切です。
それでも、実際に目の前で起きると判断に迷いますよね・・・。拙著では「迷えば救急車を呼んでよい」と書きました。ご家族や周囲の方だけで、難しい判断を抱え込まないでほしいと思っています。
★Q5:てんかん重積状態となった場合の対応法は?
てんかん重積状態では、呼吸・循環動態を確認しながら、発作を止める治療を遅らせないことが重要です。気道・呼吸・循環の評価、モニター装着、血糖測定、静脈路確保などを並行して進めます。発作中は静脈路確保に手間取ることも少なくありませんが、発作の治療が遅れないよう注意が必要です。そのような場合には、ミダゾラム口腔溶液やジアゼパム点鼻液が有用となりえます。
静脈路が確保できた場合の第一選択は、ベンゾジアゼピン系薬剤です。効果が不十分なら、同系統の薬を漫然と繰り返さず、第二選択薬へ進むのがよいと思います。それでも止まらなければ集中治療が必要ですので、場合によっては高次施設への搬送調整を早めに考慮します。
いざというときに動けるよう、薬剤の投与量や治療の順序を普段から確認しておいてほしいですね。各自の施設でプロトコールを作成しておくのもよいでしょう。
★Q6:発作が起こらないように気を付けたり注意することはありますか?
完全に防げるとは限りませんが、発作を起こしにくくするためにできることはあります。まず、抗てんかん発作薬を処方されている場合は、指示どおりに服用し、自己判断で減らしたり中止したりしないことが基本です。
生活面では、十分な睡眠をとり、生活リズムを整え、疲れをためすぎないことが大切です。小児では、年末年始や長期休暇中の夜更かしや、休み明けの急な生活の変化がきっかけになることもあります。ただ、発作を心配するあまり、学校行事や好きな活動を何でも制限してしまうのは避けたいですね。運動会に参加した日や疲労がたまった日などは早めに休むなど、楽しみをできる限り制限せず、生活面を工夫してほしいと思います。光過敏性などの特定の誘発因子がある場合は個別の対策も必要です。
ただ、十分に気を付けていても発作は起こり得ますが、本人やご家族の努力不足ではありません。そのため、予防と併せて、発作が起きたときの対応を準備しておくことが、安心して暮らすために大切だと思います。
けいれん発作、てんかん重積については、『ねころんで読める小児てんかん・けいれん』5章8-9に詳しく掲載されていますので、ぜひご一読ください(=^・^=)
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