ある日、突然やってきたよく知らない看護師から、
「この患者さん、抑制外せない?」と言われたときおもわず、こう思ったことはありませんか?
「こっちの気も知らないで…」
“抑制しない”が理想なのはわかっている。
でも、“現実はそんなに甘くない”。
そんなジレンマのなかで、私たちは今日も患者さんに向き合っています。
いったい、誰のためなのか
病院では今、「身体拘束の最小化」のためのチームラウンドがさかんに行われています。
これは2024年の診療報酬改定が大きく影響しています。
算定や監査をきっかけに活発化しているこの動きについて、今、医療者が改めて考えたいこと。
それは、『この活動は、いったい誰のためのものか?』という問いです。
トリプルロックとは
病院での「身体拘束」といえば、ミトン・抑制帯・4点柵など、道具による物理的な拘束ではないでしょうか。
でもじつは、
患者の行動や意思は、もっと多方面から“ロック”されています。
それが「トリプルロック」という視点です。
・ 抑制帯やミトンなどによる『フィジカルロック』
・ 薬剤の過剰または不適切な投与による『ドラッグロック』
・ 言葉で行動を制限する『スピーチロック』
― 「転倒リスクが高いし、車椅子キーパーを装着しよう」
― 「不穏が強くて仕事にならへん…薬出してもらおうか」
― 「危ないです、立たないでくださいね」
よくあるケアに、よくある声かけ ――
私たちは無意識のうちに、患者さんの身体と心を “ロック” しているのかもしれません。
身体拘束に隠された “その人”
「不穏」「自己抜去」「不眠で落ち着かない」 ――
一言で片付けてしまえば、患者さんは見えづらくなります。
『患者さんの言葉にならない訴え』に思いをはせ、行動の背景を考えること。
これこそが、身体拘束の最小化に近づきます。
つまり、アセスメントの質こそ、身体拘束を減らす力なのです。
キーワードは「アセスメントが9割」
身体拘束の多くは「予防的」に行われています。
「転ぶかもしれない」「暴れるかもしれない」 ─ “かもしれない”という医療者の不安から始まるケア。
“トリプルロック”の3つが重なり合い、患者の自由を奪ってしまう陰には、患者の安全を守るために「良かれと思って」「忙しさのなかで」起きていることがほとんどです。
医療現場において声にならない患者の不安、動けなさ、伝えられない訴えに気づけるのは、看護師だと、私は信じています。
「身体拘束最小化はアセスメントが9割」
この本は“誰かを責める”話ではありません。
わたしたち看護師が、身体拘束が施されがちな患者さんを知るための書籍です。
身体拘束をされている患者の思いを考える一歩を、この本で一緒に踏み出してみませんか?
育和会記念病院・訪問看護リハビリステーションたもつ/認知症看護認定看護師
書籍のご案内

「トリプルロック」を防ぐためのアプローチ
身体拘束最小化に必須の知識と信念
身体拘束の最小化は、特定のスペシャリストだけの課題ではない。本書では身体拘束のきっかけとなりやすい点滴・胃管・尿道カテーテル・さらには転倒・転落リスクなどに着目し、フィジカルロックだけでなくドラッグロック、スピーチロックを含めたトリプルロックをいかになくせるかという視点で解説した、現場目線の1冊である。
発行: 2025年9月
サイズ:B5判 144頁
価格:2,860円(税込)
ISBN:978-4-8404-8825-9
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