「安全のため……」
「転倒しないために……」
「事故を予防するために……」
医師の指示という名目ながら、実際に患者に身体拘束を施すのはわたしたち看護師です。
そのたびに胸の奥で小さな葛藤を抱えているのではないでしょうか。
道具を用いた物理的な身体的拘束「フィジカルロック」
ある患者さんが、何度もベッドから立ち上がろうとしている。
ふらつきも強いし、転倒リスクが高い。
だから身体拘束を行った。
抑制帯やミトン、車椅子の安全ベルト……現場では毎日のように目にする光景ですが、これこそが第一のロック “フィジカルロック” です。
「危ないから」が引き起こす“負の連鎖”
ドレーン抜去予防のミトン、転倒予防の車椅子キーパー、不潔行為の拘束着
一見“事故予防”のいたしかたないフィジカルロックに見えますが、本当は、“患者が起こす行動の理由”を聞けていなかっただけかもしれません。
「痛みで体を動かしたかった」「回復を確かめたかった」「トイレに行きたかった」──
『思いを聞く』 ── 看護師にとって大事なことのはずなのに、目の前の「危ない」に囚われてしまいがちです。
数字で評価する風潮に潜む ―看護の危うさ―
「うちは身体拘束○%低下させました!」「うちの抑制率は○%です!」
それって本当にいいことなの?
数字で成果を示す取り組みが進むけど、 その“中身”は見えているでしょうか。
たとえ身体拘束率が10%でも、10人のうち9人が本当は必要なかったとしたら──?
量ではなく「一人ひとりの背景」を見つめることこそ、看護の本質のはずです。
知らぬ間に“数字”が“その人”を置き去りにしていないでしょうか。
ロックのないケアは、現場の“余裕”から生まれる
「インシデントを起こしたくない」「クレームを避けたい」「管理者に怒られたくない」
身体拘束は、スタッフのそんな思いが関連しています。
責められる文化から抜け出し、心理的安全性を保つことは身体拘束最小化の一歩です。
それでも「理想論でしょ」と言いたくなる場面もあります。
私も、同じように現場で悩んできました。
しかし理想論ではありません。
小さな気づきから始まるチームでの実践です。
身体拘束最小化はアセスメントが9割
その一歩は、どう踏み出せばいいのか──
『身体拘束最小化はアセスメントが9割』では、現場のリアルな悩みを看護師・患者双方の目線から解き明かしてみました。
身体拘束に悩んでいる、あなたのヒントになる一冊になることを祈っています。
「身体拘束最小化はアセスメントが9割」
この本は“誰かを責める”話ではありません。
わたしたち看護師が、身体拘束が施されがちな患者さんを知るための書籍です。
身体拘束をされている患者の思いを考える一歩を、この本で一緒に踏み出してみませんか?
育和会記念病院・訪問看護リハビリステーションたもつ/認知症看護認定看護師
書籍のご案内
「トリプルロック」を防ぐためのアプローチ
身体拘束最小化に必須の知識と信念
身体拘束の最小化は、特定のスペシャリストだけの課題ではない。本書では身体拘束のきっかけとなりやすい点滴・胃管・尿道カテーテル・さらには転倒・転落リスクなどに着目し、フィジカルロックだけでなくドラッグロック、スピーチロックを含めたトリプルロックをいかになくせるかという視点で解説した、現場目線の1冊である。
発行: 2025年9月
サイズ:B5判 144頁
価格:2,860円(税込)
ISBN:978-4-8404-8825-9
▼詳しくはこちらから
▶Amazonでの購入はこちら
▶楽天ブックスでの購入はこちら
