「動かないで」
「こけるから立たないで」
「やめて」
──焦りのあまり、思わず口にしていませんか?
言葉や態度で行動を抑制する「スピーチロック」
次々と業務に追われるなかでの鳴り止まないナースコール。
そんなとき、おもむろに立ちあがった患者へ「立たないで」と、口にしてしまった……。
看護師なら、誰もが経験したことのある場面ではないでしょうか。
“リスクを回避したい”
“滞りなく業務を行いたい”
そんな思いから生まれる言葉こそ、第三のロック“スピーチロック”です。
訴えのない患者の「言葉を聴く」ことが回避のカギ
忙しい現場では「危ないからやめて」「静かにして」──と、思わず制止してしまうことがあります。
けれど、その一言は“動きたい”“できることをしたい”という患者の意欲や思いを閉じ込めるのです。
「なぜ動こうとするの?」「なんで叫んでるの?」──
言動の背景に耳を傾け、“訴えのない声”を聴こうとする姿勢こそ、スピーチロックを防ぐ第一歩です。
福祉の世界ではよく知られている
スピーチロックは介護の分野ではすでに広く知られていますが、医療現場ではまだ十分に浸透していません。
「言葉」は看護師にとって最も身近で強力なツール。
だからこそ、看護師自身がその影響力に気づくことも大切です。
言葉ひとつで、患者の不安を深めることも、安心を生むこともできるのです。
優先すべきは、誰のペースか
「時間がないから」「先に処置を終わらせないと」──そんな焦りのなかで、いつの間にか“医療者側の都合”が優先されていないでしょうか。
患者のペースを置き去りにすれば、結果的にスピーチロックが生まれます。
患者の力を信じて、患者のペースを尊重する姿勢。
それは、“医療者ペースで進む業務時間”から、“医療者と患者がともに歩む時間”へと変わります。
行動背景を知り、看護の力を高めよう
スピーチロックの回避には、言葉で制する前に“患者の行動背景”を見つめることが大切です。
「なぜ声を荒らげるのか」「なぜ拒否するのか」──
行動の裏側にこそ、ケアのヒントは隠れています。
“言動の裏にある思いを見よう”とする看護師の姿勢は、患者を“看る力”を磨き、高めていくと信じています。
身体拘束最小化はアセスメントが9割
『身体拘束最小化はアセスメントが9割』(メディカ出版)では、医療の世界で知られていないスピーチロックを現場のリアルな事例で紹介しています。
「言葉のロック」を外すことは、患者の力を引き上げるケアです。
この本が、その気づきの一歩となりますように。
「身体拘束最小化はアセスメントが9割」
この本は“誰かを責める”話ではありません。
わたしたち看護師が、身体拘束が施されがちな患者さんを知るための書籍です。
身体拘束をされている患者の思いを考える一歩を、この本で一緒に踏み出してみませんか?
育和会記念病院・訪問看護リハビリステーションたもつ/認知症看護認定看護師
書籍のご案内
「トリプルロック」を防ぐためのアプローチ
身体拘束最小化に必須の知識と信念
身体拘束の最小化は、特定のスペシャリストだけの課題ではない。本書では身体拘束のきっかけとなりやすい点滴・胃管・尿道カテーテル・さらには転倒・転落リスクなどに着目し、フィジカルロックだけでなくドラッグロック、スピーチロックを含めたトリプルロックをいかになくせるかという視点で解説した、現場目線の1冊である。
発行: 2025年9月
サイズ:B5判 144頁
価格:2,860円(税込)
ISBN:978-4-8404-8825-9
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