第一線で活躍する医師や看護師、医療従事者などが講師として登場し、わかりやすく解説する「メディカのセミナー」。そのセミナーのプログラムのうちチャプターの1つをメディカLIBRARYだけで特別配信します。
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講師
森脇睦子
東京科学大学 医療本部 クオリティ・マネジメント・センター 特任准教授
<どんなセミナー?>
「数字が苦手…」「グラフを見ると身構えてしまう…」そんな看護管理者や現場リーダーのためのデータ分析入門セミナーです。
医療機関のICT・DXが進む中、病棟マネジメントやケアの質改善、生産性向上には、データを使った判断が求められています。
本セミナー「基礎」編では、データ分析の目的や考え方、進め方、数字やグラフの読み方・示し方を、日々の臨床に結びつけながらわかりやすく解説します。
配信|データから読み解く改善の証
次に「データ分析に必要な知識」の4つ目、「データから読み解く改善の証」について解説します。
ここまでで、棒グラフや加減乗除(足し算・引き算・掛け算・割り算)だけでも、かなり色々なことが分かるというお話をしてきました。
ただ、そこからさらに重要になってくるのが、「読み解く力」です。
ここからは「データをどのように読み解いていくのか」というところを少しお見せしていきたいと思います。
「改善の証、均てん化の証をグラフで示すには?」という内容です。示し方はいろいろありますが、ここではその一例をお示ししたいと思います。
右側は箱ひげ図です。見たことはありますか? あまり馴染みがないかもしれませんが、右が箱ひげ図、左が棒グラフです。
たとえば「~~実施率」のような指標があるとします。
「~~実施率」のような指標は、「高いほうが良い」「低いほうが良い」といった明確な方向性がないといけません。高いのも低いのも怪しいというのは指標にならないので、その点は気をつけてください。
仮に、この「~~実施率」が「高いほうが良い」指標だったとします。
左は、自分の所属病棟だけを図にしたものです。年度比較にしていますが、月別でも構いません。このように棒グラフでだんだん良くなっていると示すと、「うちの病棟はすごく良くなった」と感じるかもしれません。
ただ、病院全体で見たときに、本当に良くなっているのか? という点も見ていく必要があります。
そこで箱ひげ図を使います。これは病院全体で、各病棟の「~~実施率」を集めたものです。
自分の病棟のデータを星印でプロットしてみると、0%だったものが20%台、30%台、60%台あたりに分布していることが分かり、たしかに良くなっているように見えます。
箱ひげ図の詳しい説明は後ほどしますが、このように自分の病棟だけを分析するのではなく、病院全体との比較、つまりベンチマークを行うことで、当該病棟の位置づけが見えてきます。
本当に突出して頑張っているのか、それとも全体的な底上げの結果なのか、ということが明らかになっていきます。
ここに箱ひげ図を示しています。小学校の算数でやったような気がする、という方もいるかもしれません。
箱ひげ図は、データの分布を把握するのにとても有用な図です。
この図が何を示しているかというと、まず「四分位数」を表しています。下から順に説明しますね。
Excelなどでも箱ひげ図は作れますが、表示によっては最小値ではなく、10%タイル値で示されている場合もあります。今回は一般的な形として、ここを最小値としています。
この細い線の部分をひげ、中央の四角い部分を箱と呼びます。ひげの下端が最小値、上端が最大値です。
箱の底辺の線が第一四分位数で、これは25%タイル値になります。100人いれば下から25番目、200人いれば50番目の値です。
箱の中央の線は中央値で、50%タイル値、つまり真ん中の値になります。100人いれば50番目です。
このバツ印は平均値です。これはExcelで「特異ポイントを表示する」設定をした場合に出てきますが、一般的な箱ひげ図では平均値を表示しないことも多いです。
箱の上の線が第三四分位数で、75%タイル値になります。
この箱の長さを「四分位範囲」と呼びます。「範囲」というのは、最大値と最小値の差を指します。
たとえば手洗い実施率を0%~100%の指標だと考えてください。
まず、第一四分位数が30%だとします。
これは、集団を下から並べたときに、下位25%の人たちは「手洗い実施率が30%以下」である、という意味になります。
次に、第三四分位数が90%だとします。
これは、集団の75%の人が「手洗い実施率90%まで」に含まれている、ということです。
この箱の中には、集団のちょうど半分の人が入っています。
そのため、箱が短いほど、その半分の人たちの実施率が近く、皆が同じような水準でできている状態だと考えられます。
一方で、箱が長い場合は、その半分の人たちの中でも実施率に差があり、低い人もいれば高い人もいる、ばらつきの大きい集団であることを示しています。
このように、箱の長さを見ることで、集団全体の実施状況をイメージすることができます。
ただし、箱ひげ図には向き不向きがあります。分布が2峰性の場合、箱ひげ図は適さないとされています。
2峰性というのは、山が二つある分布です。たとえば、子どもと大人が混ざった集団の年齢分布などは、2峰性になりやすいです。
このような分布が見られた場合は、性質の異なる集団が一緒に分析されている可能性があります。その場合は、集団を分けて、それぞれ別々に分析する必要が出てきます。
こうした箱ひげ図の特徴を頭に置いたうえで、箱ひげ図から「均てん化」をどのように読み取るかを見ていきたいと思います。
ここでは、先ほどの「~~実施率」という指標を例にしています。横軸は年度で、右に行くほど年が進んでいると考えてください。
まず、①の実施率を見ると、箱が長くなっています。これは、きちんとできている病棟もあれば、あまりできていない病棟もある、つまり実施率にばらつきがあることを示しています。
平均値もまだ低いですね。この段階では、病棟間で実施率にばらつきがある状態だと読み取れます。
そこから年度が進むにつれて、箱がだんだん短くなり、ヒゲも短くなっていきます。同時に、平均値も上がってきています。
箱が短くなるということは、病棟ごとの実施率の差が小さくなり、どの病棟でもきちんと実施できるようになってきている、つまり均てん化が進んでいる状態を表しています。
最終的に、箱が非常に小さくなり、平均値が高く、ヒゲも短くなっている場合は、全体として実施率が底上げされ、改善が進んできたと判断することができます。
大学ではさまざまな質の可視化や指標を使って分析やモニタリングを行っているのですが、こういう箱ひげ図がきれいに出てくると、ちょっと感動します。「おお、すごく良くなっているな」と。
このように均てん化が見えると、平均値があまり変わっていなかったとしても、箱が短くなっていること自体に大きな意味があるとわかります。
つまり、「全体の平均が上がったかどうか」だけでなく、「ばらつきが小さくなったかどうか」も、改善を評価するうえでとても重要だということです。
こうした見方を知らないと、箱ひげ図を見せられても、ただの絵にしか見えないかもしれませんよね。
ですが、見方が分かるようになると、「現場がどのように良くなってきているのか」というイメージを、具体的に思い描けるようになります。
今回はあくまで一例ですが、箱ひげ図はこのような視点で見ていきますよ、というお話でした。
最後になりますが、今日は「データの特徴を捉える」というお話をしてきました。
集団の特徴を、全体として把握することはとても重要です。ただ、ここができる人は少なかったり、忘れられがちだったりします。
なので、ぜひ自分が扱っているデータについては、その集団の全容を必ず把握するようにしてください。
また、分析の初期段階で、すべての変数について、その特徴を捉えられるようにしておくことが大切です。
記述統計を丹念に行うことで、分析対象となる集団を数値として捉えることができます。
ぜひ、「特徴を捉える」という視点を常に意識しながら、データを扱っていただければと思います。
ご購入いただくとすべてのプログラムがご覧いただけますのでぜひご検討ください。
プログラム
1.データ分析に必要な思考
・看護管理者になぜデータ分析が必要なのか?
・何のために何を分析するのか?
・どういう流れでデータを分析するのか?
2.データ分析に必要な知識
・データを集めたら何をするのか?
・データの性質を理解する
・集団をとらえる
・データから読み解く改善の証
・【質問】分布が2峰性の場合、箱ひげ図はどのように表現されますか?
・【質問】「調査対象集団を要約する」際の項目数の目安について
【ミニワーク】分析目的に則したグラフの選択
・講義のまとめ
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