第一線で活躍する医師や看護師、医療従事者などが講師として登場し、わかりやすく解説する「メディカのセミナー」。今回は最新トピック「中心静脈ルートが確保できない場合における低濃度ノルアドレナリンの末梢持続投与」解説チャプターをメディカLIBRARYだけで特別配信します。

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講師
讃岐 美智義
NHO呉医療センター 臨床研究部長・中央手術部長・麻酔科科長

<どんなセミナー?>
周術期薬がなかなか覚えられない……そんな悩みに応えるセミナーです。
薬を単体で暗記しようとしても、なかなか定着しませんよね。実は、大切なのは「薬が使われる状況」のほうです。「どんな患者さんに、どんな場面で使うのか」をセットでつかむことで、現場でも自然に思い出せるようになります。
このセミナーでは、現場での実際の使われ方と、薬の作用のしくみを解説。薬剤情報やガイドラインも最新の知見にアップデートしています。
さらに最新のトピックとして、「中心静脈ルートが確保できない状況における低濃度ノルアドレナリンの末梢持続投与」について取り上げ、安全性と手順をわかりやすく紹介します。
周術期薬の「なぜ?」と「いま」を、140分でしっかり学びましょう!


配信|最新トピック:中心静脈ルートが確保できない場合における低濃度ノルアドレナリンの末梢持続投与



Dr.讃岐のツルっと明解!周術期でよくつかう薬の必須ちしき01


昇圧薬には2種類あります。血圧を上げようと思ったら、「心臓を打たせるか」「血管を締めるか」ですね。血管を締める方がよいのですが、それでは上がらない場合もあります。血管収縮はしているけど、心臓の動きが悪くて血圧が下がっている人ですね。そういうときは心臓を打たせたほうがいい、ということでα作用とβ作用の話になります。

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血管を収縮させるのがα刺激薬、心臓を打たせるのがβ刺激薬です。忘れやすいので、こう覚えておいてください。

αは締めるヒモ--血管をギュッと締めるイメージ。
βはムチ--心臓にムチを打って動かすイメージ。βの文字の形がしなるムチに見えますね。

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これが、かつて私が発表した「王族・貴族・平民」の話です。特許は取っていないんですが、私が考えたものです。2017年にオペナーシングに載せてから、いろんなところで見るようになりました。他でこの話をしている人がいたら、これを見たんだなということで(笑)。

6つの昇圧薬があります。

平民:エフェドリンとフェニレフリン
貴族:ドパミンとドブタミン
王族:ノルアドレナリンとアドレナリン

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なぜ平民かというと、薄めてちょこちょこ行くからですね。だいたい10倍に薄めて1~2ccずつちょこちょこ投与する。平民っぽいですよね。ちょこちょこ感が半端ないです。

貴族はエレガントです。シリンジポンプでソソソーッと行くんですね。ボーラスで投与することがない。だからこれが貴族です。

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王族は、天皇家をイメージしています。日本の王族ということで天皇陛下にしたんですが、アドレナリンが天皇で、ノルアドレナリンが皇太子という感じです。天皇(アドレナリン)はβが強くてαがちょっと弱め。皇太子(ノルアドレナリン)はαが強くてβが弱め。でも2人とも、αもβも両方持っています。アドレナリンはβが強くて、心臓が止まったときに使う薬ですね。ノルアドレナリンは血圧が下がったときに持続で行く、最近よく使われる方です。

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エフェドリンは「間接型」と言われています。エフェドリン自体にはαとβ両方の作用がありますが、このうちαのほうが間接型なんですね。

つまり、直接血圧を上げるのではなく「体内のノルアドレナリンをバーッと遊離させることで血管を締める」という作用で、他人に依存しているわけです。当たるも八卦当たらぬも八卦、というやつですね。

だから、カテコラミンが枯渇してしまっている人、ショック状態でカテコラミンを出し尽くしてしまった人には、遊離させるものがそもそも残っていないのでぜんぜん効かない。
そういう薬なので、エフェドリンが効かなかったら次はフェニレフリンに切り替える、ということになります。

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フェニレフリン(ネオシネジン)、これが「平民2」です。αのみ、だけど直接作用。だからエフェドリンが効かない人でもこっちが効くことは多いです。ただ作用時間が短いので、ちょくちょく投与しないといけない。

帝王切開にも使えます。それから反射性徐脈が起きるので、これを入れて血圧が上がると、脈が落ち着いてきます。脈が速いときはフェニレフリン(ネオシネジン)、遅いときはエフェドリンというのが平民の使い分けになります。

なお、フェニレフリン(ネオシネジン)はあまり持続で使わないほうがよくて、最近は低用量ノルアドレナリンの持続投与が流行ってきています。これは後ほど出てきます。

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次にドパミン(イノバン)ですね。「いのいちばん」のイノバン、イノトロピック(心臓を打たせる作用)が“バンバン”になる、イノバンです。

だけど最近はあまり使われなくなってきています。これも間接型なので、効かない人にはぜんぜん効かない。逆に言えば、ドパミンが効くということは「そんなに病態は悪くない」ということでもあります。

それから腎血流を増やす目的での投与は、最近はあまり好まれなくなっています。少量で使うとβ作用、たくさん入れると血管収縮作用が出る、とされていますが、実際にはそんなにきっちり分かれているわけでもなく、最初から血管収縮作用が出ることもあります。αもβも両方あるから、お手軽に始めるにはいいかもしれないですが。

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ドブタミン(ドブポン、ドブトレックス)はβの直接刺激です。心臓が打たない人には第一選択になります。ただし虚血性心疾患や閉塞性肥大型心筋症(HOCM)には禁忌です。虚血性心疾患には、量を調節すればまだ使えますが、特にHOCM、左室の出口が狭くなっている人には絶対ダメで、禁忌中の禁忌です。

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そしてこれが最近流行っている低用量ノルアドレナリンです。だいたい1Aを50ccに希釈して、末梢から投与することもあります。手首から上のルートを使うなど、いろいろ条件はあるんですが。

ノルアドレナリンは王族なので、まず効きます。なぜ効くかというと、エフェドリンのように「体内のカテコラミンを遊離させる」間接型ではなくて、体の中にもともとあるものを外から直接補充するだけだからです。カテコラミンが枯渇してしまっていても、なくなった分を外から入れるだけなので、まず効く。王族が効かないというのは、もうよっぽどの状態だということです。

低用量ノルアドレナリンは末梢投与が許容されています。ただしあんまり濃いものはダメなので、1アンプルを50ccに希釈して、時間あたり15cc程度がマックスのイメージです。それ以上必要になるようなら中心ルート(中心静脈路)を取りなさい、ということになります。中心ルートであれば3Aでも5Aでも15Aでも、もっと濃いものを入れることができます。

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なぜこういう使い方が広まってきたか。

まず、術中は平均血圧を65mmHg以上に保ちましょうというコンセンサスが広まってきました。特に長時間手術ではよく言われます。

それから、輸液をドカドカ入れるのは良くないということで、輸液戦略が転換されてきました。大量輸液は好まれなくなり、かといって少なすぎるのも良くないので、「バランス晶質」という考え方に変わってきています。足りないときはまず最小限のボーラスに、HES製剤(ボルベン)をちょっと--半分入れたり1本入れたり、という使い方が増えてきました。足りなければ最初からボルベンを使っていることもあります。

また産科麻酔にフェニレフリンが良いと言われるようになり、さらにノルエピネフリン、ノルアドレナリンも有用だということが示されてきました。

それから、敗血症において「中心ルートがなければ末梢から入れてもいい」という考えが出てきたことで、薄めたものなら末梢でもいいよね、という流れになってきました。

モニタリング技術(GDT)が進んで血管の拡張状態が把握しやすくなったことも後押しになっています。

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添付文書では、末梢静脈から行くときは「1mgを250 ccに希釈」と書かれているんですが、これがまたまどろっこしいですね。投与速度も30~60ccと幅があって、「こんなに行くの?」という感じです。

実際には点滴の側管から、1Aを50ccに希釈して、0.05~0.1μg程度を目安に投与します。体重によって差はありますが、だいたい5cc/時から始めて10~15cc/時で調整する、というイメージです。20cc/時以上行くなら中心ルートに切り替える、という判断になります。海外の文献では16~32μg/mLという記載もありますが、20μg/mLあたりが妥当なところでしょう。

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最後に、末梢投与にあたっての注意点をまとめておきます。

・20G以上の留置針を使用すること
・専用ルートを確保すること
・投与濃度、速度の上限を守ること(目安として24時間以内、最大48時間まで)、それ以上続ける場合は中心静脈ルートに変更すること
・1~2時間ごとに穿刺部位を観察すること(発赤・浮腫といった漏出初期徴候を絶対に見逃さない)
・動脈ラインをきちんと確保しておくこと
・漏出が起きた場合は速やかにカテーテルから吸引し、その部位に血管拡張薬を注射すること
・スタッフへの教育と手順書(プロトコル)の整備を行うこと

以上、最新のトピックでした。

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