第一線で活躍する医師や看護師、医療従事者などが講師として登場し、わかりやすく解説する「メディカのセミナー」。そのセミナーのプログラムのうちチャプター①をメディカLIBRARYだけで特別配信します。
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森 茂雄
愛知県厚生農業協同組合連合会 豊田厚生病院 管理栄養室 管理栄養士
<こんな方にオススメです!>
「栄養は難しくてよくわからない」「今までなんとなくの知識で栄養をやり過ごしてきた」そんな思いを抱えた看護師さんを対象にしたセミナーです。
看護と栄養をどのように結びつければよいか、日頃の看護にどのように活かすことができるのかを、管理栄養士がわかりやすくお伝えします。
配信|CHAPTER 1:経腸栄養とは
こんにちは。JA愛知厚生連豊田厚生病院の管理栄養士、森茂雄です。私は病院や介護保険施設、在宅などさまざまな場所で活動してきました。今日は経腸栄養について看護師のみなさんにわかりやすくお話ししたいと思います。
まずは栄養士と管理栄養士の違いについて説明をします。私は栄養士から管理栄養士になったのですが、栄養士は都道府県知事の免許を受けた資格です。対象は健康な方で、栄養指導、給食運営といった、主に食事を作る仕事です。
一方、管理栄養士は栄養士の上級資格に位置付けられていて、厚生労働大臣の免許を受けた国家資格です。対象は先ほどの栄養士の健康な方に加えて、病気を患っている方、高齢で食事が取りづらくなっている方です。栄養指導や給食管理はもちろん、高度な栄養管理を行っているのが管理栄養士です。
みなさんが現場で接する栄養士は管理栄養士であることが多いです。
私も現場で実際に看護師さんと仕事をしていますが、非常に多いのは「栄養が大切なのはわかるけど、具体的にどうしたらよいかわからない」という意見です。
一昔前であれば、病棟に栄養士がいると「なんで栄養士さんが来るの?」「栄養ってなんでやらなきゃいけないの?」といった質問が多かったのですが、いまは栄養が大切だということが認知されていますので、栄養士の必要性はみなさんわかっているようです。
ただ、実際に、栄養を具体的にどうしたらいいか、わからない方が多いようです。ではなぜ、わかりにくくなってしまうのかについて説明しますが、栄養療法には、経口栄養、経腸栄養、静脈栄養という3つの栄養投与ルートがあります。これは1つだけであれば内容を把握しやすいと思いますが、3つ同時になったとき、または2つが同時に重なったときには、中身がブラックボックスのようになってわかりづらくなります。
看護師の方は、実際にこれらの手技や管理に携わっていますが、それぞれに指示や管轄がバラバラであることが多く、中身がわかりづらくなってしまいます。
実際に、看護と栄養がつながらないから、わからない、苦手だという方が多いのですが、これはわかってしまえば簡単です。実は、つながりは非常にシンプルです。「なるほど!」と思ってもらえれば、栄養は看護に簡単に活用することができます。
そこで本日は、経腸栄養の初心者を脱出するために、栄養がわかるポイントをお話しします。ポイントは「詳しく覚え過ぎない」ということです。つまり、大まかなイメージをつかんでいただければ十分です。
ではまず基礎編から始めます。
まずは「経腸栄養とは」からです。
栄養投与の経路は先ほどもお話ししましたが3つあります。経口栄養、経管栄養、静脈栄養、この3つになりますが、本日はこのなかの経管栄養についてお話しをします。
経管栄養は、主に鼻や胃、腸に通して管を使って栄養を投与する方法のことを言います。
この栄養方法のポイントは、消化管が安全に使用できるかということです。またその期間によって、鼻から管を通すか、お腹に孔を開けるか、というふうに分かれます。
栄養ルートによる比較をスライドに示しました。
経口栄養は、みなさんが普段やっていることなのでわかると思いますが、口から食べる・飲むということになりますので、もっとも生理的であり、感染症や侵襲が少ないということが言えます。
逆に、経管栄養や静脈栄養になると非生理的であり、侵襲も加わっていきます。経口栄養に比べて経管栄養は栄養素が吸収しやすく分解されているので、非経口栄養といわれるものになればなるほど代謝性の合併症を生じやすくなったり、血糖値も上がりやすく、身体の免疫自体も維持しづらいという特徴があります。
したがって、感染症にもかかりやすくなってしまうというデメリットも出てきます。
これまでにお話ししたなかで、少し気づかれた方もいるかもしれませんが、そもそも、経腸栄養、経管栄養という2つの言葉が混じっています。これはどういうことなのか、私も調べてみました。
「経腸栄養」という用語の定義が実は明確ではないということが言えるんです。言葉の意味だけを取れば「経腸栄養」というのは「腸」を「経由」する栄養になるので、食事から経管栄養までが含まれるということになります。
では学会のガイドラインや、一般的に示されている定義について説明すると、スライドの通りとなります。
まずは日本外科代謝栄養学会の「代謝・栄養・侵襲 用語ガイドライン」です。
またASPENというアメリカの栄養学会の定義はこちらです。
このことから、本邦での「経腸栄養」の一般的なイメージは経腸栄養剤を使用する栄養法ということが言え、チューブを用いた強制栄養は「経管栄養」と言えるようです。
たくさん用語が出てくると混乱してしまうので、今回は管を使って栄養を投与する経管栄養を「経腸栄養」という用語で統一して説明します。
では、経腸栄養についてさらに話を進めていきたいと思いますが、続きはぜひログインして動画をご視聴ください。
プログラム
<基礎編>
CHAPTER 1.経腸栄養とは
栄養士と管理栄養士の違い / 栄養を学ぶことの難しさ
栄養投与経路 / 消化管が安全に使用できるか?
栄養ルートによる比較 / 経管栄養? 経腸栄養?
侵襲と栄養 / どの患者さんにも適応できる栄養療法
CHAPTER 2.栄養剤の種類
栄養剤って何種類あるの? / 経腸栄養剤の種類と使い分け
経腸栄養は消化管が使用できるか? / 消化と吸収の能力で分類分け
「半消化態栄養剤」が第1選択になる理由 / ちょっと変わった栄養剤
半固形状栄養剤 / 粘度可変型栄養剤
代表的な栄養素を確認しよう
CHAPTER 3.投与方法
消化管が安全に使用できるか? +α / 循環動態は安定しているか?
消化器と循環器を組み合わせてみる / 急性期における血糖値のイメージ
投与方法の違いについて / 経腸栄養の投与速度
RTH(ready to hang)製剤 / 栄養剤の容器投与について
経腸栄養の観察ポイント
<実践編>
CHAPTER 4.必要栄養量の算出
食事摂取基準 / 体重は栄養を計算する根拠になる
必要栄養量を算出する / NPC/N比 について
電解質の単位:mEq / 水分投与量の目安
経腸栄養と静脈栄養の切り替えのタイミング
【質問】経腸栄養の追加水に水道水を使ってよいのか?
CHAPTER 5.経腸栄養の評価
経腸栄養の評価項目 / 経腸栄養で多いトラブル
腸蠕動音の聴取について / 排便管理と便のアセスメント
嘔吐・逆流について / 水・電解質異常について
経口補水液の有効性
【質問】絶食にはグルタミン製剤から開始になるの?
【質問】下痢が継続する場合の原因について