第一線で活躍する医師や看護師、医療従事者などが講師として登場し、わかりやすく解説する「メディカのセミナー」。そのセミナーのプログラムのうちチャプターの1つをメディカLIBRARYだけで特別配信します。
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講師
安宅一晃
奈良県総合医療センター救急・集中治療センター センター長
森安恵実
北里大学病院集中治療センターRST・RRT室係長/集中ケア認定看護師
<セミナーはこんな内容>
臨床で使える血ガスの読み方のコツ、ここにあり。
明日からの診療・ケアの視点が変わります。
難解なイメージから苦手意識を持つ人の多い血液ガス検査を「苦手」→「読める」→「読みこなせる」までステップアップ!
キホン知識やコツをじっくり・わかりやすく説明し、現場で活かせるような事例を通しての実践知識までしっかり解説します。
配信|CHAPTER 2:症例①ぼーっとしている糖尿病の70歳男性
安宅 症例1です。70歳の男性で、高血圧、糖尿病で通院中です。自宅で活気がなく、食欲低下となって3日前に緊急入院しました。既往としては尿管結石を指摘されたことがありました。
次に森安さん、経過を教えてもらえるでしょうか。
森安 この患者さんはICUではなくて病棟の患者さんなんですが、前日からの経過をご説明します。
まずシバリングとともにぐっと熱が上がって、熱が上がったらアセリオ®という解熱剤の投与の指示がありました。なので血圧の低下に注意しながら投与していたのですが、アセリオ®を投与して熱が下がって、その後またシバリングを起こしてまた熱が上がるというようなことを繰り返していました。
グラフの×のマークが血圧ですが、若干下がっていますがガクッと下がることはなく経過していたように思います。
夜は寝られてて、朝は起きていたのですがなんとなく元気がないということはみんなで共有していました。
安宅 熱は前日12:00で上がって、18:00で下がって、ということですね。それ以外にも気になる点はあったでしょうか。
森安 ちょっと脈が速くなっているかなと思います。
安宅 この赤い線ですね。
森安 そうですね。こうやって2日間の経過を並べると脈が速くなっている感じはしていましたが、病棟のスタッフ間ではあまり問題としてはあがっていなくて「熱が高いからだね」というくらいの認識でした。
安宅 本日12時に最後のバイタルを測っているんですね。18時が定期の血糖値チェックでしょうか。
森安 はい、そうです。
安宅 では18時にチェックした際の様子を教えてください。
森安 糖尿病の患者さんなので夕食前に血糖値のチェックをしたところ、スライドのイラストのように「はぁ、はぁ」と患者さんがしんどそうにしている様子を見つけました。そのため、あれっと思って、もう少ししっかり見なければならないなと思いました。
具合が悪そうだな、なんで具合が悪そうなのかなと思ってよく見ていくと、意識が悪そうだと気づきました。まだ18時で、前日だったら夕食を楽しみにしている患者さんだったんです。
意識が悪いので、低血糖なのかな、高血糖なのかなといった予測をしたり、血圧が下がってしまったのではないかなとも思いました。
そしてその後に、それだけじゃなくて熱がありそうだなと思ったので、また感染があったのか、ぶり返したのかなということも思いました。
患者さんは「はぁ、はぁ」となっていたので、ちょっと呼吸が苦しそうだなあと思いまして、感染という紐づけで肺炎を起こしたか、誤嚥をしたか、というふうにも思ったのですが、スポットでサチュレーションモニターを着けてみたらサチュレーションは良かったので、じゃあ肺炎ではないのか、ということで、頭の中で考えがグルグルしていました。
なので、何か新しい問題が出現したかもしれないと思いまして、状況を整理してみようと思いました。
安宅 なるほど、では状況を整理してみてください。
森安 はい、意識のレベルはまったく反応しないということではなくて、傾眠がちで、ゆっくりですが受け答えはなんとなくできるくらい。呼吸数は32回/minでやや努力様呼吸で、酸素投与しておらずサチュレーションは98%、脈拍は110回/min、血圧は90/48(62)mmHg、体温が39.0℃あったのと、血糖値測定の時間だった測ったのですが120mg/dLだったので、そこまで悪くないという感じでした。そして体が熱くて、末梢も温かい状態でした。
なので、こうした情報についてアセスメントを加えながら、医師には、かくかくしかじか、呼吸も悪いし、熱もあるし、感染かもしれないということで、血ガスを含めて採血をしてほしいとお伝えしました。
安宅 そうですね、これは血ガスをとったほうがいいですね。そして取ったデータが次のスライドですね。
森安さん、このデータで気になるところはどこでしょうか?
森安 パッと見たところはよくわからない感じですが、酸素化(Pao2)が良いかなくらいでしょうか。
安宅 そうですね。初期のころはPaO2を見て、96.0mmHgあったら良いじゃないかと思ってしまうのですが、血液ガスを読むときに注意してもらいたいのは、いま森安さんが言ってくれた酸素化というのも一つ大きなファクターです。酸塩基平衡を見ることもできます。血液ガスでは、2つのことを1つのデータから読まなければなりません。ですので、まず、自分はどちらを読みたいのか、目的を持つことが大事です。
肺の状態を見るのであればPaO2とPaCO2、酸塩基平衡を見たいのであればpH、PaCO2、HCO3-をバランスよく見てほしいです。
これは手元に『みんなの呼吸器 Respica(レスピカ)2023年1号』があれば18ページにこの話が掲載されています。
森安さん、一つ前のスライドに戻りますが、CO2はどうでしょうか?
森安 CO2は、はけてます。
安宅 正常位置はどれくらいでしょうか?
森安 40mmHgですね。
安宅 40mmHgから考えると28.9mmHgというのは、患者さんとしてはフィジカル的にはどういう状態でしょうか。
森安 呼吸数が増加して「はぁ、はぁ」していたので、CO2の低下は理にかなっていると思います。
安宅 呼吸数が多くなって、その結果こうなってしまったということなんでしょうね。その原因は、熱かもしれませんし、他の原因があるかもしれません。肺の状態としてはCO2は飛んでいるもののO2は正常のため、良いだろういう判断になります。
そうしてもう一方の酸塩基平衡ですが、こちらのほうが読むのがややこしいです。BEも大事ですが、BEはいろいろな条件を加えた値のため、ここでは生のデータから読んでいこうと思います。
ちなみに、血液ガス検査の電極はpH、PaCO2、PaO2の3つしかありません。残りの値は計算して出しています。そのためpHとCO2から計算値を出していきますので、肺の状態はO2とCO2で見られる、酸塩基平衡についてはpHとCO2の2つから読んでいきましょうということになります。
で、その読み方には3つのステップがありますのでここから解説していきます。
解説の続きはぜひログインして動画でご覧ください。また、ご購入いただくと症例2の解説と、最後に症例も踏まえたQ&Aなどを視聴いただけます。ぜひご検討ください。
プログラム
1.オープニングトーク
血ガスはどんな時にとる? 何に使う?
2.症例①ぼーっとしている糖尿病の70歳男性
・異変に気付く
・血ガスを採る
・血ガスの読み方の3ステップ
・血ガスの結論と対処
3.症例②ぼーっとしているCOPDの80歳男性
・異変に気付く
・血ガスを採る
・血ガスを読む
・代償について
4.まとめ
5.質疑応答
本セミナーと連動している専門誌の紹介
苦手→強い味方に
絶対マスター
血液ガス講座
■Part.1 血液ガス検査のキホン
1 血液ガス検査の目的/検査項目と単位
2 血液ガス検査から何がわかるか(酸素化/酸塩基平衡の概説)
3 血液ガス検査結果を読んでみよう
4 血液ガス用語 一覧
■Part.2 血液ガス検査を読みこなす
1 酸素化を読むステップ
2 酸塩基平衡を読むステップ
3 アシドーシス:病態と処置
4 アルカローシス:病態と処置
5 代償機構:病態と処置
6 AG(アニオンギャップ)
■Part.3 血液ガス検査の実践知識
1 症例でもっとわかる呼吸性アシドーシス
2 症例でもっとわかる代謝性アシドーシス
3 症例でもっとわかるアルカローシス
4 症例でもっとわかる混合性アシドーシス
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