第一線で活躍する医師や看護師、医療従事者などが講師として登場し、わかりやすく解説する「メディカのセミナー」。そのセミナーのプログラムのうちチャプターの1つをメディカLIBRARYだけで特別配信します。
※上部のサムネイルをクリックして視聴できます。
※視聴にはメディカIDが必要です。メディカIDをお持ちの方はログインしてそのままご視聴ください。
講師
花房規男
東京女子医科大学 血液浄化療法科 准教授
<セミナーはこんな内容>
■指導・ケアに活かせるポイントをDr.花房が伝授!
■検査値を総合的にみて「患者の全体像」がつかめるようになる。
■透析患者の検査値の見かたを、1年目の透析室スタッフでも理解できるようやさしく、わかりやすくレクチャーします。
■患者指導に活かせるポイントを盛り込みながら、透析関連合併症(CKD-MBDなど)といった長期的なスパンで発症する合併症や、高カリウム血症などの一時的な異常でも即座に命にかかわる検査値の異常など、おさえておきたい検査データの読み解き方がわかるようになります。
■正常値や異常値、食事・薬と検査値との関係はもちろん、透析室スタッフが知っておいてほしいパニック値や経時的な変化が問題となるケースなど、現場ですぐに活かせる知識がてんこ盛り!
■すべての透析室スタッフ必聴のセミナーです。
配信|CHAPTER 2:各検査値の基本
ここまでは「透析患者の検査値は特殊?」ということでお話してきましたが、ここからは各論です。検査値の概要ということで、今回は大きく7つに分けてお話をしていきたいと思います。
まず、1つ目に透析の効率・老廃物の蓄積に関連する項目、2つ目は貧血、3つ目は炎症、4つ目は炎症と非常に深い関連のある栄養について、5つ目は電解質やミネラル、CKD-MBDと関連する項目、6つ目に糖尿病・脂質異常症に関連する項目、最後に血液透析の患者さんあるいは腹膜透析の患者さんでも血圧をいかにコントロールしていくか、ドライウエイトをどうやって決めていくか、そうしたことが非常に重要になってきますので、そうしたことと関連した指標についてそれぞれお話ししていきたいと思います。
はじめに「透析の効率・老廃物の蓄積に関連する項目」について見ていきましょう。
このあとの説明のなかで「基準値」とか「目標値」といったお話をしていきますが、「目標値」に関してはガイドライン等で目標が設定されている値を「目標値」としてお話しします。また「基準値」というのは透析患者さんでよくみられる値、基準となる値、概ねこのあたりに検査値の値が落ち着くであろうという値を「基準値」として示しています。
1つ目は血中尿素窒素(BUN)です。
透析患者さんにおける基準値や目標値は設けられていません。では、実際にどのくらいの値なのかということですが、日本透析医学会の調査を基にして調べてみます。
Kt/V 1.4以上、nPCR 0.9以上というのは、しっかり透析をされていて、しっかりタンパク質をとっている患者さんですが、そうした患者さんの血中尿素窒素の平均値は70mg/dLぐらいとなります。ですので、透析をされていない方、腎機能が正常な方に比べると高くなっているということが見てとれると思います。
もうひとつ、1週間の平均値(TAC urea)というのがあります。これは何かというと、1週間の血中尿素窒素を平均してみるとどれくらいになるかということです。計算方法は、例えば透析が月・水・金の患者さんですと週初め月曜日の透析後と水曜日の透析前の血中尿素窒素の値の平均値を出します。この平均値が1週間の平均値に等しいということになっています。この平均値は65mg/dL未満になるのがいいですよね、とされています。
血中尿素窒素の値を見るポイントとしては、透析の効率、あるいはタンパク質摂取量の両方に影響を受けますので、血中尿素窒素が高い場合には「透析が十分足りているかな?」ということ、逆に血中尿素窒素が低い場合には「タンパク質が十分とれているいるかな?」ということを考えていかなければなりません。
続いてクレアチニン(Cr)です。クレアチニンも基準値というのは設けられていないのですが、しっかり透析されている、タンパク質も十分とられている方の平均値は約10mg/dLくらいとされています。
もともと慢性腎臓病の患者さんですとクレアチニンで腎臓の機能を見ましょうとなっているわけですが、透析患者さんの場合にもう一つ重要なのは、筋肉量の指標としても使われるということです。
ですので、クレアチニンは低ければ低いほどいいかというと必ずしもそうではなくて、じつはクレアチニンが低い患者さんの場合には筋肉が少なくなっている、いわるゆサルコペニアの可能性も考えられます。むしろ疫学的な調査をみてみると、ある程度クレアチニンが高い患者さんのほうが合併症が少ないということもいわれています。
次は標準化透析量(Kt/V)です。これは何を示しているかというと、血中尿素窒素に注目をして、体の中の水の何倍の血液から尿素窒素が除かれたかということを表しています。
標準化透析量は、血液透析と腹膜透析とで目標値が異なっています。
血液透析の場合には、1回の透析前後の値から計算される標準化透析量が1.4以上、つまり体の中の水の1.4倍以上の血液から尿素窒素を除きましょうということが目標とされています。一方で最低でも1.2を維持することも目標値として設定されています。
腹膜透析の場合には、1週間あたりで、残腎機能を合わせて標準化透析量1.7以上というのが目標値となっています。
これらの目標値に対して低い場合はどうするかというと、スライドでは血液透析の場合について記載していますが、血流量とか透析時間、ダイアライザの膜面積あるいは透析液流量も関連しますので、これらの調整を行って目標値に近づけていくことになります。
もう一つ、透析の効率・老廃物の蓄積に関連する指標として使われるのがβ2ミクログロブリン(β2-MG)というタンパク質です。
β2ミクログロブリンは分子量が約1万2000くらいあります。血中尿素窒素が60くらいですので、それよりもずっと分子量が大きいわけです。こうした分子量の大きな老廃物がどれくらい除去できているかということの指標になります。
ガイドラインでは週はじめの透析前では25mg/L未満を目標に、最低でも30mg/L未満を目指しましょうとなっています。
ただ最近はオンラインHDFが多くなっていると思いますが、オンラインHDFだとβ2ミクログロブリンが非常によく除去できます。そのため、オンラインHDFはもっと分子量の大きいα1マイクログロブリンを指標にしていたりもします。
いずれにしても、先ほどの標準化透析量(Kt/V)が小分子を指標としたものである一方で、β2ミクログロブリンというのは大きな分子量のものを指標としたものとなります。
ログインして動画でご覧いただくと、次の「貧血に関連する項目」まで動画でご覧いただけます。また、ご購入いただくとすべてのプログラムがご覧いただけ、透析看護において必要な患者さんの検査値が網羅できますのでぜひご検討ください。
プログラム
1.透析患者の検査がなぜ大切か
なぜ透析患者の検査が重要なのか、正常な腎機能をもつ人とのちがいを解説します
2.各検査値の基本
検査の目的、基準値・目標値、検査値から何がわかるか、どうしたら変化するかといった基本を解説します
3.検査値と食事・栄養摂取の関係
食事・栄養摂取がどのように検査値や合併症に影響するのか、食事指導のポイントについて解説します
4.検査値と薬の関係
検査値に影響を及ぼす薬剤や、患者指導のポイントについて解説します
5.症例紹介
3つの症例から、検査値のどこに注意し、どのように対応するべきかを学びましょう
6.まとめ
パニック値や経時的な変化が問題となる検査値について解説します
7.質疑応答
みなさんの疑問にDr.花房がお答えします!
本セミナーと連動している専門誌の紹介
1年目スタッフでもポイントがわかる!
透析患者の検査値の見かた
■略語一覧
■特集1 透析患者の検査がなぜ大切か
■特集2 各検査値の基本
■特集3 検査値と食事・栄養摂取の関係
■特集4 検査値と薬の関係
■特集5 症例紹介
■特集6 まとめ
▼詳しくはこちらから