第一線で活躍する医師や看護師、医療従事者などが講師として登場し、わかりやすく解説する「メディカのセミナー」。そのセミナーのプログラムのうちチャプターの1つをメディカLIBRARYだけで特別配信します。

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講師
諫田淳也
京都大学大学院医学研究科 血液・腫瘍内科学助教

<セミナーはこんな内容>
化学療法に不安を感じる…
好中球減少症や血小板減少症などの看護に慣れていない…
“血液のがん”に対する苦手意識を克服しよう!
限られた観察ポイントを効率よく学び、対応できます。
症状・治療・薬・ケアをわかりやすく解説!疾患をイメージできます。


配信|CHAPTER 3:骨髄異形成症候群~「骨髄」の造血管細胞が「異形成」を呈し、正常な血液細胞が作れない!


ではこのパートでは骨髄異形成症候群について勉強していきましょう。

骨髄異形成症候群というのは、「骨髄」の造血管細胞が「異形成」を呈して正常な血液細胞が作れないということなのですが、ちょっとわかりにくいかもしれませんのでもう少し見やすくしていきますね。

よくわかる!血液のがん01


もう一度最初からですが、骨髄異形成症候群というのは、「骨髄」の造血管細胞というものが、形が変になってしまうのですね。変な細胞ができてくる原因は遺伝子変異といわれています。それにはいろんなものがあって、まとめて「骨髄異形成症候群」と名前が付いています。

骨髄異形成症候群は、高齢者に多い、なかなか治らない、治るとしたら移植のみという病気です。

よくわかる!血液のがん02


もう一度別の角度で見てみますが、骨髄異形成症候群というのは大本の幹細胞自体が変な細胞になってしまうため、ここから成長するものがすべて変なものになってしまって血が作れなくなってしまうというものです。

急性骨髄性の白血病は次のスライドにある「芽球」のあたりが病気になったものですが、それよりももっと前の幹細胞が変になったものが骨髄異形成症候群です。

よくわかる!血液のがん03


では骨髄の異形成とは、というところを見てみましょう。

細かくは見ないですが、パッと見てもわかるところがあると思います。上段の赤芽球系(赤血球)の正常な細胞は左端の画像ですが、一つ右の画像になるとすでに変な細胞になっています。核が3つに分裂したり、もう一つ右の画像のように2つに分かれてしまったりしています。

続いて中段、顆粒球系(好中球)の正常なものはだいたい核が5個くらいなのですが、過分葉核になると10個くらいに分裂していたり、右側のようにすべてがペタッとくっついてしまって中に空洞ができる輪状核になってしまいます。

下段の巨核球系(血小板)の若い正常な細胞はいちばん左のような感じですが、微小巨核球では一つ右の画像のようになったり、もう一つ右の画像のように分離多核といってたくさんに分離してしまったりします。

骨髄異形成症候群では、これら赤芽球系、顆粒球系、巨核球系すべての細胞に異形成が生じます

よくわかる!血液のがん04


骨髄異形成症候群の症状は白血球減少から生じるもので、感染しやすくなったり、貧血症状が出たり、血小板が減少して出血したりします。

よくわかる!血液のがん05


そして骨髄異形成症候群においては染色体異常が非常に重要になってきます。

次のスライドに46本23種類を示しましたが、例えば5番の染色体が異常になっていたり、こういったいろんな染色体が異常を起こして、これが予後に影響してくるため重要になります。

もちろんこれら一つひとつを覚える必要はないのですが、こうしたことがあるということを理解してもらえたらと思います。

よくわかる!血液のがん06


次のスライドも覚えなくていいのですが、骨髄異形成症候群の「症候群」というにはどんなものがあるのかというイメージだけもってもらえたらと思います。

たとえば、一つだけ異形成をもっているもの、いろんなものが異形成をもっているもの、鉄芽球というものをもっているもの、芽球が増えて白血病の手前になってくるもの、いろんなパターンのものがあって、多種多様なものがあるというイメージをもっていただければと思います。

このなかで重要なのは「芽球増加を伴う異形成症候群」でして、赤字で記載していますが骨髄芽球(骨髄の悪い細胞)が5~9%だとEB-1と名前がつき、10~19%だとEB-2という名前になります。では20%を超えるとどうなるかですが、これが白血病です。

すなわち、芽球のパーセントがこの分類を決めますし、20%を超えると急性骨髄性白血病(AML)に進展するということになります。

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ここまで骨髄異形成症候群にはいろいろなものが含まれるという話をしましたが、これによって予後も大きく変わります。

骨髄中の芽球のパーセント、核型(染色体異常)の種類、減少している血液細胞の種類によって点数が付き、この点数によってLow、Int-1、Int-2、Highに分かれます。

そして高リスク群、Highに関しては50%の生存率がわずか0.4年となりますし、白血病に移行するリスクが45%になります。非常に高いですよね。

こういったように予後を分類して我々は治療を決めています

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また、ここは覚えなくてもいいのですが、骨髄異形成症候群はいろんな遺伝子変異によって予後が分類されるといわれています。特に重要なのはTP53という遺伝子変異で、この変異があると予後が極めて悪いということなります。

こういったことも携わっていると将来的にわかるようになってきます。

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次は骨髄異形成症候群の経過ですが、どんどん汎血球減少が進行してきて、白血球が下がって、感染症となり、入院を繰り返したり、貧血だと輸血していればなんとかなりますが月1回~週1回必要となり、血小板減少でも輸血が週1~2回必要となります。

あるいは、感染症で入院して命を落とすこともあれば、白血病になってしまうこともあります。

これがおおよその骨髄異形成症候群の経過です。

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ではここからは骨髄異形成症候群の治療にはどんなものがあるかを見ていきましょう。



ログインして動画でご覧いただくと、骨髄異形成症候群の治療についての解説まで視聴いただけます。また、ご購入いただくとすべてのプログラムがご覧いただけますのでぜひご検討ください。

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プログラム

1)“血液のがん”患者のアセスメントに必要な知識【29min】
・よく見る症状:出血、貧血、発熱、腹部膨満、リンパ節腫脹、意識障害
・白血球、赤血球、血小板、凝固因子の理解
・血液検査データの読み方
・骨髄穿刺、生検手技について

2)急性白血病~異常な白血球が無限に増えて、正常な血液細胞が作れない!【33min】
・急性白血病の症状と治療の流れ
・微量残存病変(MRD)とは
・急性骨髄性白血病(AML)
・新規治療:遺伝子変異阻害剤
・急性リンパ性白血病(ALL)
・チロシンキナーゼ阻害剤
・新規治療:BiTE療法
・造血幹細胞移植
・自家移植と同種移植の違い

3)骨髄異形成症候群~「骨髄」の造血管細胞が「異形成」を呈し、正常な血液細胞が作れない!【11min】
・骨髄異形成症候群(MDS)とは
・抗がん剤:アザシチジン(ビダーザ®)
・治療で目指すゴールは

4)多発性骨髄腫~形質細胞の腫瘍が、骨を溶かし、多発骨折・高カルシウム血症などを引き起こす!【22min】
・見落とされる骨髄腫
・次々と登場する新薬
・多発性骨髄腫患者におけるエマージェンシー
・多発性骨髄腫の治療の流れ

5)悪性リンパ腫~リンパ節がどんどん腫れてくる!【22min】
・ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫
・びまん性大細胞型B細胞リンパ腫
・R-CHOP療法とその副作用
・濾胞性リンパ腫

6)“血液のがん”患者に特有の病棟での管理とケア【34min】
・なぜ「口腔ケア」が重要なのか?
・食事内容(食べてよいもの、いけないもの)
・無菌室による患者管理
・発熱性好中球減少症
・予防内服(抗菌薬・抗真菌薬)
・長期間にわたる看護(患者・家族対応)
・ホスピス or 在宅 or 一般病棟
・血液内科疾患の患者は若年者が多い
・妊孕性をどのように守っていくか?