第一線で活躍する医師や看護師、医療従事者などが講師として登場し、わかりやすく解説する「メディカのセミナー」。そのセミナーのプログラムのうちチャプターの1つをメディカLIBRARYだけで特別配信します。
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講師
林 寛之
福井大学医学部附属病院 総合診療部 教授
今 明秀
八戸市立市民病院 事業管理者(CEO)
<セミナーを受講するとこんなことが学べます>
患者さんの「よくある訴え」から、「怖い疾患」「重要な疾患」を拾い上げるにはコツがあります。
「トリアージ」を理解し、症状ごとに見逃してはいけない疾患と初期対応を整理します。
5段階のうち、特に「赤:緊急」は一番大事です。それは命にかかわるからです!
ショックに対する初期対応の型をマスターしましょう。合言葉は「さるも聴診器」です!
これで、目の前の救急患者さんをアナタが! 助けられるようになります。
配信|CHAPTER 8:頭が悪いの?[後編]
さて事例です。
65歳男性、マージャン中に「あーーー!」と言って失神した。ろれつが回っていない。右片麻痺がある。CTを撮ったらまったく出血がない。痛いところはないと言っています。血圧は高いですよね。
《ジャジャン!問題です!》
どうしましょう?
次はMRIを撮るのか、超音波か、迷わず血栓溶解療法(t-PA)か。
脳梗塞の人って騒ぎますか? 「あーーー!」って叫ぶような脳梗塞の人っていますか?
血管が詰まったら「あれ、右手が動かないぞ、あれ、あれ……」と言葉もうまく出なくなるのが脳梗塞です。「あーーー!」って叫ぶような脳梗塞の人はいません。激痛が走るのは出血か解離です。
ということで、この事例は大動脈解離ですので、次は超音波、胸部CTです。
大動脈解離で内頸動脈まで裂けると完全に脳梗塞になりますが「ギャー」と言ってぶっ倒れます。
そして大動脈解離から失神すると、3人に1人は「痛い」と言いません。大動脈解離から脳梗塞になると50%は痛いと言いません。つまり脳梗塞まできた大動脈解離は2人に1人は痛いと言わない。だから首もみてほしいのです。脳梗塞だと思ったら首をみる。
では首をみました。裂けてますね。内頚動脈がふらっと見えているでしょう? ペラペラペラペラと裂けているのが見えますよね?(動画でご確認ください)
首の右も左もエコーを撮ってください。両方裂けている人がすごく多いです。みるのなら両方です。で、片一方だけ血流が悪くなって脳梗塞みたいになって見えています。
ということは、「あーーー」と言って倒れて、片麻痺で、脳梗塞っぽいな、頭に出血がないなと思ったら首のエコーだけあてればOKということになります。
この事例の人はお腹もみたら、お腹まで裂けていました。すごい範囲まで裂けています。
ということは、実は脳梗塞っぽくても、そのうちの1.1~9.5%は大動脈解離が内頸動脈まで裂けてできていることがあるよということになります。
それから、大動脈解離から見ると、神経所見で出る人って17%もいます。
だから国立循環器病センターが言っています。お願いだから脳梗塞といって患者さんを送ってくる前に首のエコーくらいしてよと。
脳梗塞だ!と思って首のエコーをしたら「裂けてる!」とわかった瞬間、それは脳梗塞ではないということです。
首のエコーはピュ、ピュと右と左にあてるだけ。10秒でわかります。
「D-dimerも測って」と言ってますが、エコーさえすればすぐにわかります。D-dimerはいりません。
片麻痺を見たら、首のエコーをしておくと安全だよということです。
いませんか? またに。片麻痺だということでTPAを打ってから亡くなってしまった、状態が悪くなった、解離を見逃していたということ。そういうトラブルはありますよね。
次は、ウソっこ脳梗塞、ホントは脳梗塞じゃないのに片麻痺で来るよということで、代表例は低血糖、それから大動脈解離、この2つは命にかかわるので覚えておいてください。
それからもともとてんかんのある人が、痙攣が起こってからしばらく麻痺が残るのがTodd麻痺ですので、もともとてんかんがあるか聞かなければなりません。あとはたいしたことありません。
ですので片麻痺となったら低血糖と大動脈解離は必ず考えなければなりません。
大動脈解離はいろいろな血管が関わってきて、脳梗塞にもなるし、心タンポナーデにもなるし、腸管虚血にもなるし、下肢動脈の閉塞症にもなるし、腎不全にもなります。
これはMalperfusion syndromeといって大動脈解離の3分の1はいろんな臓器の虚血症状で来るということを知っておくといいですね。
だから発症時は「ギャー」なのです。「ギャー」から発症して、変な症状が出たら大動脈解離です。そのため、そのときそばにいた人にどうだったか聞くことは大事です。
脳梗塞で来る大動脈解離の50%は痛みを訴えない、これをぜひ知っておいてください。患者さんは「痛い」と言わない。
では次は頭痛の話をしていきましょう。
ログインすると「頭痛」「片頭痛」についても視聴できます。また、ご購入いただくとすべてのプログラムがご覧いただけますのでぜひご検討ください。
プログラム
1・2 トリアージ総論
<救急看護診断学とキーワード>
●あっちから「急患でーす!」、こっちからも「急患でーす!」・・・・
誰が本当に救急かな? 「待ったなし」の救急はどれ?
●救急の基本は、「バイタルサイン」と「キーワード」の拾い上げから。
●重症(かもしれない)患者を待たせちゃ、「救急」の名がすたるってぇもの。
これでアナタもつかみはオッケー!
3・4 重症多発外傷初期対応
<Primary survey を中心に>
●「血の海」だって乗り越える! 多発外傷なんて、もう怖くない!
●合言葉は「ケガ来たドキドキ!」・・・ん?
「防ぎえた外傷死(Preventable Trauma Death)」をゼロにしちゃおう!
●後悔先に立たず。外傷はいちばん初めの「プラチナ時間」が大事なのだぁ!
【質問コーナー①】会場参加者よりいただいた質問への回答
5・6 ゲゲェ! ショックだぁ!
<ショックの初期対応と鑑別のための問診>
●出血によるショックの認識は? 血圧測定ではありません。
血圧が下がる前にHRが増加、拡張期血圧が上昇するの知ってました?
えっ、知らなかった?! それこそ、ショーーック!!
おっと、その前に「皮膚が湿って冷たくなる」んですよね。
●アナフィラキシーショックにステロイドと強ミノ???
これじゃあ助からないなー。病院に帰ったら、即刻、CT室に貼ってある製薬会社の古いポスターは剥がしましょう!
7・8 頭が悪いの?
<意識障害、脳梗塞、頭痛など ~主訴と各論~>
●明日から、意識がない患者さんを目の前にしても、パパッと勝手に体が反応してしまうでしょう。
●「頭痛ですか? 私のほうがアタマ痛いんだからぁ」なぁんて言いながら、本当の救急を見逃さない、そんな看護師に私はなりたい・・・・ってか?!
ハイ!そんな看護師への近道を用意しました。
9・10 胸が悪いの?
<胸痛、呼吸困難など ~主訴と各論~>
●死んじゃう胸痛は4つ。心筋梗塞と解離だけじゃないよ。
やることは心電図、胸部写真、それから???
●CT室へ行く前に!「見て」「聴いて」「触って」見抜くコツ教えます。
CT室へ移動中に、主治医へ「やっぱり肺塞栓でしょうか」と言えればカッコイイ、いや、患者さんのため!です。
【質問コーナー②】会場参加者よりいただいた質問への回答
11・12 お腹が悪いの?
<腹痛、吐血、下血、嘔吐、下痢など ~主訴と各論~>
●スゴ腕の外科医が1人いれば安心なんだけど・・・・でもいなかったら?
ブスコパンを使ってダメだったら、プリンペラン?
これじゃ、スイカに砂糖と塩を両方かけて食べるようなもの。
えっ、食べたことある?!
●「外科医の思考回路」を教えます。病歴から見抜く方法を教えます。
座れない場合のフリーエアーの見つけかたを教えます。
これで腹痛も怖くな~い! でもやっぱり、腹痛は難しいです。
●林先生&今先生のクロージングメッセージ