第一線で活躍する医師や看護師、医療従事者などが講師として登場し、わかりやすく解説する「メディカのセミナー」。そのセミナーのプログラムのうちチャプターの1つをメディカLIBRARYだけで特別配信します。
※上部のサムネイルをクリックして視聴できます。
※視聴にはメディカIDが必要です。メディカIDをお持ちの方はログインしてそのままご視聴ください。
講師
大原 玲子
国立成育医療研究センター 手術・集中治療部 手術室診療部長
<セミナーを受講するとこんなことが学べます>
・妊娠中の母体の変化とそのメカニズム
・麻酔の種類とそれぞれの特徴
・重要な合併症と早期発見のポイント、緊急時の対応
・麻酔が母児に及ぼす影響
・日本の産科麻酔の現状と安全のための取り組み
配信|CHAPTER 2:麻酔に必要な生理学と麻酔の基礎知識
妊婦の生理学、皆さんご存じだと思うんですけど、この場を借りてかんたんにサマリーをしてみます。
妊娠中は大きな赤ちゃんがお腹の中を占めることによって、各臓器の変化が起こります。血液が増えたり、心臓への負荷が増えたり、いろいろありますので、これについて説明していきます。
一般的には、腹腔内の容積が増えて、お産の出血に備えるために、血漿成分を増やして、ヘモグロビンがお産の時に減るのを防ぐため、水っぽく・むくみっぽくなって母体の循環血液量が増えます。そして、凝固因子が増えてくれて、過凝固の状態になっています。
血液の成分をそれぞれ見てみますと、今お話しした通り血漿量が妊娠とともに増えてきて、トータルの血液量が増えるということになっています。
具体的に、血漿量が増えることで、データ上はヘモグロビンが減ったように見えるのですが、実際には赤血球も白血球も増えますし、血液凝固因子も増えてお産に備えていきます。
血小板の数は減ったように見えるのですけど、これも希釈性と言われています。血漿量が50~60%増えるということで、妊婦さんの血液は重くなっています。
心臓のほうは、妊娠とともに血液量が増えますし、心拍出量といって1回に心臓から出る血液の量も3~4割増えます。分娩中は陣痛に備えて心臓も負荷がかかってきますので、50%増えてきます。
ただし、麻酔をすることで痛みの刺激が減ると、心臓の負荷が減るということも分かっています。
これぐらい自然な経過ですと、お産をするためにお母さんにはすごい負担がかかっているということです。
次に消化管のほうですけれども、ご存じのとおりお腹が大きくなってきて胃が圧迫されます。お産中に吐いたりする人がよく見られると思うんですけど、つねに胃の中は消化が悪い状態だからです。
一般的に、データ上でも胃の内容の停滞時間も延長しますし、胃の内圧も上昇しますし、すごく吐きやすいような状況になっています。
消化管の能力も落ちているので、つねにフルストマックという状態が考えられます。
呼吸器のほうですけれども、赤ちゃんが大きくなってくると横隔膜が圧迫されます。みなさんハァハァハァハァなっている時があるんですけど、普通にしていても機能的残気量が20%低下します。
この機能的残気量というのは人間の酸素の予備能を示すものですから、何かあった時に予備力が20%低下しているので、すぐに低酸素になりやすいという状況があります。妊婦さんは低酸素になりやすいということを、今日持って帰っていただけたらと思います。
あと、気道の変化ですね。すごくむくみやすいというのはみなさんもご存じだと思うんですけど、お産の前は、「アーン」と口を開けたら喉の奥が見えるんですけど、分娩が10時間くらいたってきますと、だんだん体がむくんできて、痩せていたとしても気道の奥がむくんでいます。
万が一、気道確保のために気管内チューブを挿管する場合は、非常に困難で視野がとりにくい状況があるということで、万が一の時はそういうこともあるんだということを頭の隅に入れておいてください。
以上が妊婦さんの生理学のかんたんサマリーになります。
ログインすると「CHAPTER 2:麻酔に必要な生理学と麻酔の基礎知識」が視聴できます。また、ご購入いただくとすべてのプログラムがご覧いただけますのでぜひご検討ください。
プログラム
#01 はじめに
周産期に必要とされるものを振り返り、産科麻酔の現状を知ろう!
周産期に必要なものは?
分娩の鎮痛方法
日本の産科麻酔の現状
看護師・助産師が安全な無痛分娩の核
#02 妊婦の生理学 かんたんサマリー
妊娠中に起こる変化を臓器ごとに押さえて、観察に活かそう!
妊娠中の各臓器の変化
変化① 血液
変化② 心臓
変化③ 消化管
変化④ 呼吸器
変化⑤ 気道
#03 麻酔の基礎知識
麻酔を種類ごとに整理して、無痛分娩中に起こるかもしれない変化を押さえよう!
全身麻酔と局所麻酔の違い
無痛分娩で使用される麻酔の種類
図で見る硬膜外麻酔と脊髄くも膜下麻酔
脊髄くも膜下硬膜外併用麻酔(CSEA)
分娩時の麻酔の歴史
#04 無痛分娩
無痛分娩が母児にもたらす影響と、観察のポイントを押さえ、デメリットの防止につなげよう!
マギールペインスケール
硬膜外麻酔、脊髄くも膜下硬膜外併用麻酔とその副作用・合併症
硬膜外麻酔の体位
無痛分娩のメリット・デメリット
影響① 分娩への影響
影響② 児への影響:局所麻酔薬
影響③ 児への陣痛の影響
影響④ 児への間接的影響:臍帯血流量と子宮収縮
硬膜外麻酔 前後のCTGモニター
#05 麻酔の実際
麻酔中の重要事項を知り、実際の現場で動けるようになろう!
麻酔開始の流れ
どんなときに人を呼ぶべきか
緊急カートに何を準備する?
麻酔前から開始するモニタリング
手順① 麻酔前診察
手順② 硬膜外麻酔キットや薬液の準備
手順③ 麻酔導入時の体位
手順④ 介助・手技
手順⑤ テストドーズの重要性
手順⑥ カテーテルの固定
助産師が行う麻酔中の観察ポイント
#06 麻酔の合併症
重要な合併症を学び、メリットだけを提供し、デメリットのない無痛分娩の実施につなげよう!
看護師・助産師の大きな役目
合併症① 低血圧
合併症② 後位脊椎くも膜下麻酔
合併症③ 局所麻酔中毒
合併症④ 硬膜外血腫・硬膜外膿瘍
合併症⑤ PDPH:硬膜穿刺後頭痛
講義のまとめ
#07 質問コーナー
お寄せいただいた質問に大原先生がお答えしました!
麻酔中の母体の血圧低下について
耳鳴りや金属味覚、多弁などを感じたときの対応
無痛分娩に対して、不安で迷っている妊産婦への説明方法
自己調節硬膜外鎮痛法で産婦にコントロールを任せるときの説明方法
自己調節硬膜外鎮痛法で産婦の観察ポイントについて
自己調節硬膜外鎮痛法ならではの合併症・トラブル
▼詳しくはこちらから
無痛分娩に関する書籍の紹介
▼無痛分娩に関するその他の商品はこちらから