
第一線で活躍する医師や看護師、医療従事者などが講師として登場し、わかりやすく解説する「メディカのセミナー」。そのセミナーのプログラムの一部をメディカLIBRARYだけで特別配信します。
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講師・プランナー
加藤 明彦
浜松医科大学医学部附属病院 血液浄化療法部部長・病院教授
講師
磯部 伸介
浜松医科大学医学部附属病院 腎臓内科助教
石垣 さやか
浜松医科大学 血液浄化療法部・診療助教
石川 敬子
浜松医科大学医学部附属病院 看護師長/透析看護認定看護師
江間 信吾
浜松医科大学医学部附属病院 臨床工学技士
<セミナーを受講するとこんなことが学べます>
・透析療法のキホン編
・透析療法のケアのキホン編
・腎移植のケア・腎代替療法選択のキホン編
・血液透析の原理・透析装置・穿刺のキホン編
・透析患者の食事療法のキホン+アップデート編
配信|透析患者の食事療法のキホン+アップデート編:Q 透析患者さんはどうして低栄養になりやすいのですか?
今回の講義では、「透析患者さんはどうして低栄養になりやすいのですか?」という点についてわかりやすく解説をしたいと思います。
透析患者さんが低栄養になる原因として、いくつかのものが考えられております。
その代表的なものとして、①食事摂取量の低下、②食欲の低下、③内分泌や代謝の異常、④慢性的に持続する炎症、⑤透析排液からの栄養素の喪失、こういったさまざまな要因が影響しあって、低栄養になりやすいと考えられています。
実際、透析患者さんはリンやカリウムの高い食事を避けなければ、ということで食事を控えめにされている方が少なくありません。
これは2017年に発表された過去の論文で、どれくらいの食事を遵守できたかというのをまとめたシステマティックレビューからのデータです。
たとえば、エネルギー摂取量であれば23.1%、たんぱく質摂取量であれば45.5%、脂肪摂取量であれば41.4%の方しか目標量が達成できていないということで、多くの方が必要十分な栄養がとれていないことがわかります。
一方で、リン制限、カリウム制限、減塩、あるいは水分制限、こういったものは6割以上の方が遵守されておりますので、食事に注意するために十分な栄養がとれていない可能性があるということがわかります。
透析患者さんでは食欲の低下も多く自覚されております。これは過去4週間の食欲低下について患者さんに質問したDOPPS研究のデータですが、食欲低下がないという方はだいたい6割ぐらいで、残りの4割は程度の違いはあれ、やはり食欲不振というのを自覚されております。
この食欲不振の原因はさまざまあるといふうに考えられております。この食欲低下に関係する原因の一つに慢性炎症というものがあります。慢性的な炎症、この原因としては、たとえば心不全、あるいは歯科口腔トラブルなどが考えられるわけです。
こういった炎症がありますと、食欲が落ちるだけでなく、安静時のエネルギー消費量が増える、結果的に低栄養に陥る、あるいは筋肉のタンパク合成が減って、分解が亢進する、そしてサルコペニアになる。
低栄養とサルコペニアがありますと、フレイルや心血管病の発症、感染のリスクが高まりますし、そういったことが重なりますと、認知機能が低下して、要支援、要介護が必要になる、そして入院や最終的には死亡に至る。こういった経過が考えられております。
透析中にはアミノ酸あるいはアルブミンが排液中に抜けます。これは血流量が300から400、透析流量が500から600という一般的な透析の条件で行われたものですけど、たとえば4時間の透析をすると1回あたり12gのアミノ酸が抜けるということが報告されております。
それでは、この抜けたアミノ酸を補うためにはどれくらいの食事をとったらいいかということで、この研究では食事摂取量と排液中に抜けるアミノ酸の関係をみておりますが、1回あたり550kcal、たんぱく質20g、こういった一般的なお食事をとって排液に抜けるアミノ酸がとんとん、いわゆる食べた分と抜けた分が等しくなるにはだいたい20g相当のタンパク質が必要だと分かっております。したがいまして、これを補うには透析の間、あるいは前後に20g以上のたんぱく質をとっていただくことが必要ということになります。
今回の講義では、透析患者さんにおける低栄養の原因についてお話ししました。その原因のいちばん大きなものは、やはり食事からのエネルギーやたんぱく質の摂取不足、これが考えられます。
その理由として、いわゆる高カリウム血症、高リン血症に注意するためにお食事を控えているという方も多いかと思いますが、4割くらいの方は食欲が低下している、これが原因になっております。
それではなぜ食欲が低下するか、その背景の中の一つに慢性的な炎症の存在が考えられております。いわゆる悪液質という病態ということが言えるかと思います。
それ以外にも透析排液からの、アミノ酸、アルブミン、あるいは水溶性ビタミン、亜鉛、こういったものが喪失いたしますし、今日はあまり深く触れませんでしたが、代謝性アシドーシスやインスリン抵抗性に伴う骨格筋委縮といった代謝異常も関与するということが分かっております。こういったさまざまな理由が絡まりあって低栄養が起きているということをご理解いただければ幸いです。
ご購入いただくとすべてのプログラムがご覧いただけますのでぜひご検討ください。

プログラム
■透析療法のキホン編
・透析を開始する基準は何ですか?
・透析患者の血圧はどうして変動しやすいの?
・透析患者はどうして貧血になりやすいの?
・透析患者はどうして便秘になりやすいの?
・国内の透析患者の特徴を教えてください
・血液回路から入れる薬剤を教えてください
・ドライウエイトって何ですか?
・血液透析患者に飲水制限は必要ですか?
・透析患者に勧めるワクチンはありますか?
・不均衡症候群って何ですか?
■透析療法のケアのキホン編
・来院した透析患者に対して何を観察すればよいの?
・透析患者のフットケアはなぜ大切なの?
・足がつったらどうしたらいい?
・かゆみの対処法は?
・透析中に地震がきたらどうする?
・透析室の感染対策はどうするの?
・透析終了後は何に気をつければいいの?
・日常生活では何に気をつければいいの?
・透析の医療費のことについて教えてください
・透析患者の心のケアはどうすればいいの?
■腎移植のケア・腎代替療法選択のキホン編
・何を基準にして腎代替療法を選べばよいですか?
・献腎移植を希望する場合どうすればよいですか?
・腎移植は誰でも受けることができますか?
・腎移植後の生活上の注意点は?
・腎移植後の体調管理の注意点は?
・腎移植後の予後はどうなっていますか?
・腎移植前にどんな準備が必要ですか?
・腎代替療法を行わないとどうなりますか?
・生体腎移植ドナーは誰でもなることができますか?
・免疫抑制薬の注意点は?
■血液透析の原理・透析装置・穿刺のキホン編
・血液透析の原理を教えてください
・血液透析(HD)とオンライン血液透析濾過(on line-HDF)の違いを教えてください
・除水の原理と設定方法について教えてください
・透析液の作り方と濃度について教えてください
・ブラッドボリューム(⊿BV)計の見かたを教えてください
・血液透析中に発生するアラームについて教えてください
・血液透析中の抗凝固薬の使い方を教えてください
・透析中に発生しやすいインシデントについて教えてください
・バスキュラーアクセス(VA)の種類を教えてください
・穿刺の手順を教えてください
■透析患者の食事療法のキホン+アップデート編
・透析患者はどうして低栄養になりやすいのですか?
・どんなときに食事内容に気をつけたらよいですか?
・透析患者の低栄養はどうやって評価すればよいですか?
・リンって何? どうして制限する必要があるの?
・カリウムって何? どうして制限する必要があるの?
・透析患者の食事量を増やすにはどうしたらよいですか?
・動物性と植物性たんぱく質の違いは何ですか?
・血液透析中の高カロリー 輸液の適応は?
・亜鉛やカルニチンの補充はどうすればよいですか?
・腹膜透析患者の食事はどうすればよいですか?
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