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今回は心房細動です。

言わずと知れた心房細動ですが、意外に奥が深いんです。というわけで今回は心房細動について語ります(語る?)。

心房細動とは?



まず心房細動というのはおもに、左心房と肺静脈(肺から左心房に向かう血管)のつなぎ目のあたりから1分間に何百回もの電気が発信します。

その電気が心房に渡るわけですから心房は1分間に何百回も収縮する形になり、それが小刻みに震えているように見えるので心房細動という名前が付いたそうです。

心房細動の原因はストレスや心疾患、生活習慣などさまざまな原因があります。

しかも、心房が震えることによって有効な心房収縮がなくなってしまうので、心拍出量は少し減ってしまいます。

なぜ心室に電気が通じないのか



1つ疑問に思いませんか?心房で何百回も電気を発信しているなら、なんで心室にもその電気が通じないのか。

じつはその答えは房室結節にあります。

房室結節は心房から心室への電気を橋渡しする役割がありますが、房室結節の機能はそれだけではありません。

心房細動のときの心房からの電気をそのまま心室に伝えたら、心室も震えてしまい、ポンプ機能が果たせません。生命の危険があります。

そのため、房室結節は心房からの電気を吸収してくれます。その吸収のおかげで心室への電気の伝達は多すぎず、少なすぎずの数になっています。

心房細動の最大の困りごとは血栓形成



そして、心房細動の最大の困りごとは血栓形成です。

心房が震えているということは心房収縮がないということになります。心房が震えているので心房内の血液が淀んでしまうのです。

淀むと血は固まってしまいます。なので、心房内で血栓ができやすく、血栓ができたらその血栓がふとした拍子に心室へ流れ込んでしまい、脳や他の血管が詰まる可能性があります。

淀むってどういうことかっていうと、うどんでもラーメンでも混ぜながら茹でないと麺がくっついて固まっちゃうじゃないですか。

血液の凝固も一緒で、流れてないと固まっちゃうんです。

心房細動というしっかり収縮できない不整脈では心房で血液が淀んでしまいまい、血の「固まり」になっちゃいます。

基本的には心房細動の波形の見分け方は、はっきりしたP波がなくてRR間隔がバラバラです(下図)。



心房細動の患者さんがいたら左心房に血栓ができやすいので、抗凝固薬を飲んでいることが多いのですが、透析患者さんの場合は3回/週に透析しているときにヘパリンやコアヒビターという抗凝固薬を使用しており、逆に出血しやすくなるので抗凝固薬は服薬していないこともあります。

心房細動と関係ないと思われている房室結節の凄み



そもそも、心房がぶるぶると震えているならば、心房の電気を心室につなげる役割を担う房室結節が、それらの電気を心室へ伝えてしまったら、心室もぶるぶるしちゃうので大変です。

そのため、心房細動になっても房室結節が余分な電気を吸収し、早過ぎず遅過ぎずの心拍数を保っています。

ということはつまり、房室結節が機能しなくなったら(完全房室ブロックという房室結節の橋渡し機能がなくなってしまう不整脈があります)、どんなに心房が電気を送っても房室結節で遮断してしまい、心室まで届きません。

ならばどうやって動いているか。

刺激伝導系でいう自動能って覚えてますか? 洞結節が60-80回/分、房室結節が50回/分、心室が30-40回/分のペースで心臓の各部から電気を発生させるというものです。

なので、心房細動が完全房室ブロックと合併すると、なんとなんとRR間隔が一定になります(下図)。



バラバラに心房が動いていても、電気が房室結節で遮断されているので、心室が「あれ?電気こないじゃん。いいよ、ワシが打ってやるわい」と回数を補ってくれるというわけです。

※完全房室ブロック

よくいう完全房室ブロックの説明というのは、心房と心室の動きがバラバラ、心電図ではP波とQRSがバラバラというふうな説明が多いと思います。
しかし、心房と心室をつなぐ役割を持つ房室結節が機能していないため、心房の動きを表すP波やf波(心房細動も心房がぷるぷるするのでf波が出ます)があっても、房室結節から心室へは電気が流れないので、心室側からしたら電気が来ないということになります。そのため、心室が収縮するというものが完全房室ブロックといいます



心臓に負担がかかる病気は心房細動になりやすい



心房に負担がかかる病気は心房細動になりやすくなることがわかっています。

心房細動のストレス、飲酒、喫煙、睡眠不足などさまざまです。ほかの病気と同様に生活習慣が大きく関わってきます。

心筋症、虚血性心疾患など心疾患が既往にあるだけで心臓に負担がかかってしまいますよね。なので、それだけでも心房細動になる要因になります。

さて、今回はこれくらいにして、次回は心房細動の要因の中でも臨床で役立つ、知っていて損はない要因を語っていきます。

それでは、また次回!

本日のまとめ

・心房細動とは、左心房と肺静脈のつなぎめから、1分間に何百回もの電気が発信されている状態。
・心房細動の波形は、はっきりとしたP波がなく、RR間隔がバラバラ。
・心房細動と完全房室ブロックが合併すると、RR間隔が一定になる。



著者紹介 白石拓人 しらいし・たくと
血圧を測りに行ったのに血圧計を忘れるとんこつ...いやポンコツナース。『わからないことを馬鹿にするのは間違ってる精神』で密かに若手ナースを応援している。
「僕なんかできない…」より「僕でもやってみよう…」と考えたい超マブなお年頃。心電図を通してあなたが自信が持てたり、何かに挑戦するスピリッツを持ってもらえるように頑張るんば←黙っ
この心電図の勉強も挑戦でしょう。とにかくなんでもいいから挑戦するあなたの背中押します。ドンっ!!!