前回までのあらすじ
動脈硬化にはリスクファクターがいくつかあり、それがきっかけとなって、いくつかの行程を経て動脈硬化が作られていきます。高血圧、喫煙などによって内膜・内皮細胞が傷つけられる、LDL(悪玉)が高いのはよくない、HDL(善玉)は高いほうがよい、などを前回お話ししました。
今回はその続き。
早速ですが……みなさん、動脈硬化ってどのようにして血管内に存在するか知っていますか?
私はイメージとして、血管の内側にねっちょりと油(=脂)のかたまりが付いているっていうイメージだったのですが、どうやら違うようです。
コレステロールの侵入
血中に含まれるコレステロールが、高血圧などの影響で亀裂の入った血管内膜を見つけると、その亀裂にコレステロール(=脂)が侵入していきます(図1)。
その様子を見ていた単球(白血球のひとつ)が、これはいかん! と追いかけて内膜内に飛び込んでいきます。飛び込んだ単球は、正義の味方「マクロファージ」っていうやつになるんです(図2)。
マクロファージは、侵入しているコレステロールを次から次へと取り込んでいくのです。すごい! マクロファージはその後、脂成分を血管から殴打してくれる! と思いきや……取り込み過ぎて満腹になったのか、その場で死滅していくのです。
なんじゃそりゃ……
これが動脈硬化です。溜まっているものを「プラーク(=粥腫:じゅくしゅ)」と呼んでいます。プラークは、血管の内側にねっちょり付いているのではなく、血管の内膜と中膜の間に存在するのですね。
プラークの大好物
動脈硬化の中身は脂成分がたっぷり含まれています。その表面には線維性皮膜って呼ばれるものにがっちりと覆われています(図3)。線維性皮膜っていうのは、エリンギのような繊維と同じようにしっかりとした細い糸状のものです。これが束になってプラークを覆っているのです。
プラークは、カルシウムが大好物です。石灰化っていう言葉を聞いたことがありますか?石灰化と言うのは、プラークにカルシウムが沈着することによってできるものです。CTなどで血管を映すと、大動脈や冠動脈のところに白く輝くものが見つかります。これが石灰化なのです。
プラークの大好物がカルシウムなので、正常な血管に石灰化は存在しません。プラークあるとこに石灰化があるのです。逆に言うと、CTなどで石灰化を見つけるとそこにはプラークがあるよ! っていう目印になるんです。
プラークは次第に大きくなり、やがてはそれを覆っていた内膜と線維性皮膜が耐えきれなくなり、破裂してしまいます。それがプラーク破綻です(図4)。
中身のプラークは血流に乗って流れていき、破裂した膜は血流によりペラペラと旗めいてしまいます。破裂した部分を修復しようと血小板が集まります。せっせと修復作業をしてくれるのですが、これが血流の邪魔になり、血液がよどんで血液が固まって血栓となります。
これにより冠動脈が塞がり、血流が途絶えてしまって、心臓の筋肉に血液が届かなくなり、虚血状態となります。このときの状態が心筋梗塞ということになります。
いかがでしたでしょうか? 2回にわたり動脈硬化の出来かたについてお話ししてきました。マクロファージには少しがっかりしましたが、もとはと言えば、LDLコレステロールの高値や高血圧などなど、生活習慣に関わるものが要因で引き起こされるものなので、若いときから自分自身が気をつけておかなくてはならないですね。
では、次回は心筋梗塞と狭心症についてお話ししていこうかなと思っています。
いつもいつもお付き合いありがとうございます。
次回もよろしくお願いします。
新生会総合病院 高の原中央病院
臨床工学科 MEセンター
西日本コメディカルカテーテルミーティング(WCCM)副代表世話人
メディカセミナー『グッと身近になる「心カテ看護」~カテ出しからカテ中の介助、そして病棟帰室後まで~』など多数の講演や、専門誌『HEART NURSING』、書籍『WCCMのコメディカルによるコメディカルのための「PCIを知る。」セミナー: つねに満員・キャンセル待ちの大人気セミナーが目の前で始まる! 』など執筆も多数。