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事例

Aさん(60歳、女性)は、うつ病(depression)で、夫と2人暮らしです。自宅で自殺目的にて縊首したところを発見されました。発見が早く生命への影響はなかったため、うつ病の治療のために医療保護入院となりました。身長155cm、体重40kg(この2カ月で体重は8kg減少)、血圧102/60mmHg、脈拍数66回/分、SpO299%、採血データ上、脱水と低栄養状態の所見を認めました。

問題

入院時から抑うつ感や自責感が強く、希死念慮を認めていたため、身体拘束を施行しました。意欲低下が著しく、ベッド上で同一体位で過ごすことが多く、Aさんからのニードの表出はありません。食事摂取量も低下しています。Aさんへの看護として適切なものはどれですか。
<正解率75%>

(1)下肢筋力低下予防のための理学療法

(2)行動制限の緩和、解除

(3)活動性低下による褥瘡と肺血栓塞栓症の予防



… 正解は …











(3)

解説

(1)⇒意欲低下が著しい時期の理学療法の導入は、患者にとってストレスとなります。
(2)⇒うつ症状が切迫し、自傷行為のリスクが高い状態では、行動制限は必須であり、今は安全確保が優先されます。緩和や解除は不適切です。
(3)⇒抑うつ感や意欲低下による活動性の低下および、低栄養状態、身体拘束による四肢関節の可動域制限、自力体位変換困難などで褥瘡発生のリスクが高い状態です。また、身体拘束による同一体位や脱水により、肺血栓塞栓症の発症リスクも高くなります。

身体拘束実施中の患者は、褥瘡や肺血栓塞栓症発生のリスクが高いため、身体的ケアが不可欠です。病状によっては自己の体の状態を適切に表現できない、あるいはニードを他者に伝えることが困難な場合もあります。精神症状が改善するまで、患者の身体状況をよく観察し、身体拘束による2次合併症を予防することが大切です。