これまで年間138タイトル、348会場で開催してきた「メディカセミナー」は、このコロナ禍ですべて中止となり、いまも再開できていませんが、セミナーでしかできない学びの機会を提供するため、昨年より「WEB講義」とカタチを変え1年が経過しました。
このたび、さらなる学びの機会として、無料オンラインセミナー『もう一度基本から理解する血液透析』の開催が決まり、講師の門川俊明先生(慶應義塾大学)にセミナーへの“思い”を語っていただきました。
初回となるDAY1『透析アタマをつくる~医師はどんな考えかたで血液透析を処方しているか~』は無料で受講いただけます。
もう一度基本から理解する血液透析
透析アタマをつくる
~医師はどんな考えかたで血液透析を処方しているか~
日時:2021年7月11日(日) 10時~11時20分(約80分)
締切:2021年7月9日(金) 昼12時まで
対象:医療従事者
定員:500名(先着順)
参加費:無料
※参加受付は外部サイト「PEATIX」を利用いたします。ご了承のうえお申し込みください。
※当日はZoomウェビナーを使用します。インターネットに接続可能なスマートフォン、パソコン、タブレットをご用意ください。
※インターネット接続にかかる通信費は、参加者負担となります。
Q1.今まで(今年で9年目/累計受講者数3,300人)集合型の「メディカのセミナー」としてご好評いただいてきた『もう一度基本から理解する血液透析』ですが、今回、そこから満を持してオンラインセミナーとしてご講義いただけることになりましたが、今のお気持ちを聞かせください。
そうですね、これまで毎回セミナーをすると、主には看護師さんが参加されていますが、非常に熱心で——実際のリアルセミナーでは、朝の9時30分から夕方4時くらいまでですから、たぶんぶっつづけで5〜6時間という、毎回かなり長時間のセミナーになっているのですが——みなさん本当に熱心に聴いてくださっていました。
僕なりにいろいろな教育の技法を使いながらやっていますので、できれば対面でやれることが本当は望ましいなぁと思っています。いつもセミナーが終わった後、個別質問の時間をとれば行列ができる感じなので……。ぜひ、そういう(セミナーを受けたい)声にお応えしたいなぁという思いもありつつ、このコロナの状況の中で昨年開催できず、今年も開催が難しいとなった場合に、やはりエッセンスの部分だけでも、なんとかお届けしたいなと。
だから、対面のセミナーよりは少し内容を絞らなきゃいけないし、質問とかに十分お応えできないかもしれませんが、それでも僕の考えの“コアな部分”はオンラインセミナーでもお伝えできるかなと思っています。
Q2.ナース向けの教育セミナーをするときに心掛けていることを教えてください。
なるべく自分の体験した症例から学んだ「実例」をたくさん盛り込むようにしています。ただ教科書的な話ではなくて、実はこんな患者さんがいた——例えば、まぁ自分でもびっくりしたんですけど、リンの制限をするとき、普通リンの制限というとタンパク制限をするわけですが、缶コーヒーを飲むのが習慣になっている患者さんがいて、じつは缶コーヒーのなかには結構リンが入っていたりしてですね……で、それをやめてもらったら、急にリンの管理が良くなったこととか、そういう身近な話題で日頃の患者さん教育に役立つようなことをなるべく盛り込むようにしています。
いつも限外濾過の解説で「ミカンを手で握りつぶす」という例えを使って説明されています——例え解説も印象的ですね。
そうですね、「透析の原理」の話は、かなり概念的な説明になり難しいので、まぁそこを理解してもらいやすいように、自分なりの「例え」を使うこともよくあります。
Q3.全3回のオンラインセミナーの聴きどころを教えてください。
【DAY1】は『透析アタマをつくる』っていうことで、じつはここが僕なりの「透析の根本」って思っていて、ここの内容がわからない人は、透析をなかなか本質的に理解できないでいると思います。
簡単に言えば、いわゆる「透析処方を行う」ということを1時間ちょっとで解説します。透析のオーダーは通常、医師が行うわけですが、「医師がどういうプロセスで処方を考えているのか」を理解していただくのがの目的です。
【DAY2】はですね、前半が「バスキュラーアクセス」と「そのトラブル」のお話、後半が「オンラインHDF」になります。
前半の「バスキュラーアクセス・トラブル」っていうのは、看護師さんは、やっぱり「いかに穿刺がうまくできるのか」、それから「患者さんのバスキュラーアクセスにトラブルがない」っていうことに大きな関心があります。比較的最近のことですが、その点について自分なりに「あぁ、こういう観点でみると非常に看護師さんに伝えやすいな」ということが見つかったので、単にバスキュラーアクセスの使いかただけじゃなくて、「どういう部分が閉塞しやすいか」を理解いただきながら、完全に詰まってしまう前に発見できるようなTips(ちょっとしたコツ)をお話しします。
後半の「オンラインHDF」は、ここ4、5年、圧倒的に増えていますよね。オンラインHDFとHDって見比べても、まぁ……なんら変わりがないように見えるわけですけれども、そこをあえてオンラインHDFをやっているメリットは何なのか? 原理をきちんと理解してもらうことに重点をおいて解説します。
【DAY3】は、透析患者さんはいろんな薬剤を使いますが、やっぱり合併症の管理が非常に重要です。そのなかでも頻度が高いのは、「貧血」、それから「カルシウム・リン代謝異常」ですね。特に「カルシウム・リン代謝異常」は、使えるお薬が非常にたくさんあるおかげで、看護師さんにとって「なんでこの患者さんはこのお薬を使って、この患者さんにはこのお薬を使っているのか」っていうことがなかなか理解できない。そこをクリアカットに、ロジカルに、「こういう患者さんだったら、この薬を使うことにたどり着きますよね」ってことを、僕なりのやり方で理解していただきます。
そんな全3回になっています。
Q4.メディカLIBRARYは「学びかたを学ぶ、選択肢をふやす」がコンセプトなのですが、最後に、私たちのこれからの「学び方」「選択肢」について思うところをお聞かせください。
そうですね、これは“対面”か“オンライン”という学びかたも一つありますし、それから“講義”で学ぶのか“書籍”で学ぶのか……この点については、日ごろ医学教育学を専門としていますので、いろいろな考えがありますが、僕としてはなるべく選択肢をたくさん挙げて、そのなかでいちばん合った学びかたをしてもらうのがいいかなぁと思っています。
僕は、じつは他人の講義を聴くのがものすごく苦手で、自分で本を読んで勉強するほうが好きです。その一方で、最近はYouTubeをはじめとした動画系の教育コンテンツは非常に増えています。その部分についても、この2年ぐらいで、かなり徹底的に自分なりにスキルを上げてやってきています(https://www.youtube.com/user/tmonkawa)。
やはり動画っていうのは書籍とは違う良さというのもあって、うまく使えばそれにフィットする人もいるということで——今回のオンラインセミナーは、対面でもない、書籍でもない、いわゆる動画系に近いような学びかたになるかなと思います。もしかしたら最近の若い方っていうのはそういう学びかたに慣れているのかも知れないと思っています。
僕としても良い経験になるかなぁと思って、みなさんにお会いできることを楽しみにしています。
慶應義塾大学医学部医学教育統轄センター教授
慶應義塾大学医学部卒業後、米国シアトル University of Washington腎臓内科に留学。慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科助手を経て現職。医学教育を専門とするとともに、腎臓内科、血液透析の臨床、研究を行っている。最近読んだ本でオススメは「器質か心因か」尾久守侑著。