こんにちわ!

私ごとですが、この度、働いている施設のカテ室がリニューアル。建物から新しいものが作られ、新しい機械が入って、先日オープンしました! やっぱり新しいところ、広いカテ室は気持ちいいですね! ますますがんばらなくては! と気ばかり焦っている今日この頃です。

さて、前回は急性心筋梗塞(AMI)のなかでもSTEMI(ステミ:ST上昇型心筋梗塞)の胸痛患者さんの治療は特に急げ! ということと、ST上昇のメカニズムについてお話ししましたが、今回はその続き、ST上昇は12誘導心電図でどのようにして認められるのか?についてお話しします。

マンガでわかるST上昇

だいぶん前にお話しした冠動脈の解剖(#004 心臓を栄養する冠動脈~小ネタを挟みながら~)。そのときに、冠動脈は3本あり、その1本1本はラグビーボールのようなカタチをしている心臓を縦横無尽に走っている。というようなお話をしました。

じつは、STEMIのときの12誘導心電図を読むためには、その解剖がすんごく大切になってくるんです。

まずは、12誘導心電図の電極の貼りかたをいま一度考えてみましょう(図1)。



胸の電極について貼り付ける順に説明します。

① 赤(V1)と黄(V2)の電極
胸骨を挟んで、肋骨の3本目と4本目の間、第四肋間に赤と黄の電極

②(電極1つ飛ばして)茶(V4)の電極
黄から肋骨1本下に越えて(1肋間下げて)茶の電極

③(飛ばされていた電極)緑(V3)の電極
茶と黄の間に緑(V3)

④ 黒(V5)・紫(V6)の電極
茶(V4)に続いて、脇腹に黒と紫の電極を順に並べて

さて、胸の電極は貼り付けられました。
電極は心臓を取り囲むようにして真上に貼り付けられています。

真下にある心臓を想像してみましょう。
そのなかでも、黄・緑・茶色は心臓の前側、前壁の上に電極を貼っています(図2)。



心臓の前壁といえば、冠動脈でいう前下行枝っていう大きな血管が養っていましたね。
ということは……冠動脈前下行枝が何らかの要因により詰まっちゃった場合には、前壁にダメージをくらい、虚血状態になるのですね。

ということは……前壁の真上に貼っている黄・緑・茶=V2・V3・V4で、STの上昇を示す。ってことになるのですね。

もう一度。
前下行枝が詰まっちゃったら……(V1)・V2・V3・V4でSTが上がる!
ってことです。

電極は手足にも4つ貼り付けます(図3)。



この4つの電極で心臓を周りから見ています。
右手:赤・左手:黄・右足:黒・左足:緑

この電極を2つ使って、

Ⅰ(いち)誘導:赤と黄色=左手から右手に向かって心臓を見ている
Ⅱ(に)誘導:赤と緑色=下から右手に向かって心臓を見ている
Ⅲ(さん)誘導:黄と緑色=下から左手に向かって心臓を見ている

それと、

aVR(えーぶいあーる)誘導=赤色=右上から心臓を見ている
aVL(えーぶいえる)誘導=黄色=左上から心臓を見ている
aVF(えーぶいえふ)誘導=緑色=下から心臓を見上げている

これを覚えておいて……

冠動脈には回旋枝っていうのもあるんです。
じゃ、回旋枝が詰まっちゃったら???

回旋枝は心臓の左真横(側面)、左脇腹付近を通って、心臓の後ろ側に向かって走っています。
脇腹に貼っている電極は黒・紫=V5・V6でした。
なので、回旋枝が詰まっちゃったら、V5・V6でSTが上がります。

でもそれだけじゃないんですよね。心臓を周りから見ている誘導では、左側から心臓を見ている誘導は、ⅠとaVLなので、左側面を養っている回旋枝が詰まっちゃうと、Ⅰ・aVLもSTが上がるんです。

まとめると……

回旋枝が詰まっちゃったら、V5・V6そしてⅠ・aVLでSTが上がる!
ってことなんです。


もう1本! 右冠動脈は心臓の下側の壁、下璧っていうところに向かって行っています。
心臓を下から見上げている誘導は、II・III・aVF。
右冠動脈が詰まっちゃうとⅡ・Ⅲ・aVFでSTが上がるんです。

まとめると……

Ⅱ・Ⅲ・aVFでST上昇を認めると、右冠動脈が詰まってる?!
ってことになるんですね。

ここで注意することは、それぞれの冠動脈の大きさは違うってことなんです。
人によって冠動脈の大きさが違うので、どの血管がどこを栄養しているかは、一概に断言できないのでご注意を! あくまでも予測として考えておいてください。

心筋梗塞のST変化の特徴

もうひとつだけ(図4)。



例えば、V2-4でST上昇、前下行枝が詰まっていて前壁にダメージの場合、その反対側の下璧を監視している誘導 Ⅱ・Ⅲ・aVFで、STが低下を認める場合があります。これをミラーイメージっていいます。日本語で鏡面変化っていって、鏡で映し出されたように、一方でSTが上がっていれば、一方でSTが低下していることを認めることがあります。

これは心筋梗塞のST変化の特徴です。ST変化は心筋梗塞の場合だけではないので、ミラーイメージがあれば、心筋梗塞の変化だということが予測されるでしょう。

胸痛患者さんが運ばれました。V2からV4でSTが上がっています!

医師は「前壁がやられてるな……、前下行枝が詰まってるな!」と考えます。

医師は占い師でも予言者でも、もちろんクイズ王でもありません。冠動脈の解剖と心電図の誘導が、しっかりリンクしているから、そんなことが言えるのですね(図5)。

プロフィール:野崎暢仁
新生会総合病院 高の原中央病院
臨床工学科 MEセンター
西日本コメディカルカテーテルミーティング(WCCM)副代表世話人
メディカセミナー『グッと身近になる「心カテ看護」~カテ出しからカテ中の介助、そして病棟帰室後まで~』など多数の講演や、専門誌『HEART NURSING』、書籍『WCCMのコメディカルによるコメディカルのための「PCIを知る。」セミナー: つねに満員・キャンセル待ちの大人気セミナーが目の前で始まる! 』など執筆も多数。