大変です!ACSかも!!~急変を予測するって大切なんです~|心臓のはなしをしましょうか|#014|野崎暢仁

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こんにちわ!
いつもお付き合いいただきありがとうございます。

前回は、冠動脈の解剖と心臓の壁と心電図をリンクさせましょう!というお話をしてきました。

今回は……ではなぜ、心電図をそんなに詳しく見ないといけないのか?

どこが詰まっているかを予測しなくても、どうせ冠動脈造影すればどこが詰まっているのかなんてわかるでしょ!

とか、

私は救急外来だからカテのことはよくわかんないし、 私はカテ出ししたら任務終了!だからどこが詰まっているかなんて関係ないし!

なんて、思っていませんか??

今回も、
救急の担当のみなさん!
ICU・CCU・HCUのみなさん!
病棟のみなさん!
カテスタッフのみなさん!
必見です!

前回にも出したイラストをもう1回出しておきます(図1)。
このなかで注目は、「aVR」誘導です。

aVR、ST上昇は超重症の可能性大

aVR誘導は右上から心臓を見下ろしています。心臓の全体を見渡している誘導なんですね(図2)。



冠動脈は大きく分けて2本、左冠動脈と右冠動脈があります。

左冠動脈は2本に分かれます。前下行枝と回旋枝。この2本の冠動脈の根元が「左冠動脈主幹部(=LMT:エルエムティ)」っていうとこなんですね。

LMTは2本の冠動脈の根元なだけに心臓の壁の多くの範囲を養っています。

このLMTが詰まってしまったら心臓に対するダメージは相当なものです。多くの場合は心臓がほとんど動いておらず、血液を全身に送ることができなくて、各臓器が血液不足に陥る超重症な状態(=ショックに陥る可能性大)と言えます。いつ心臓が止まってもおかしくありません。

胸痛患者さんで、aVRでST上昇を認めた場合には要注意です! とにかく患者状態を注意深く観察し、急変の準備をしつつ、極めて急いで治療の準備を整えるべき症例と言えるでしょう。

VFになりますよ!

前回、V2からV4は前下行枝が詰まって前壁に虚血(ダメージ)が起こっているっていうお話しをしました。前壁の急性心筋梗塞の場合、あるたいへんな不整脈が起こる可能性大です。

前壁心筋梗塞の場合、約8割の症例で心室期外収縮(PVC)が出るって言われています(図3)。



このとき注意しなくてはならないのはPVCの出るタイミングです。PVCはいつ出るかわかりません。心臓の動き関係なく自分勝手にPVCは発生します。

そのなかで、心臓の拡張期(=心筋が緩む=油断している)、心電図でいうとT波の部分で、たまたまPVCが発生した場合(R on T=アールオンティー)に、心筋がビックリしてしまって痙攣を起こすことがあるんです。

痙攣=心室細動(VF:ventricular fibrillation)が起こるんです!

心室細動が発生したら、すぐさま胸骨圧迫・除細動が必須ですね。とにかく急いで蘇生処置が必要な状態です。

前壁心筋梗塞=V2からV4でSTが上がっている場合は、約8割でPVCが出る。PVCがたまたまT波のタイミングと同時に出ると、VFになってしまう。

大切なのはVFになってから慌てて準備をしないこと。PVCが出てから準備しても遅いかも。V2-4 ST上昇を見たときには、スタンバイオッケー!にしておきたいですね。

除細動の準備、急変の準備、カテ室への移送の場合にも他院搬送の場合にも、そしてカテ室での治療の場合にも、必ずそばに、いつでも使えるように、除細動をスタンバイしておく必要がありますね(※除細動の準備は常日ごろから整えておくべきで、前壁梗塞だけ準備しておくっていうことではありません)。

Ⅱ、Ⅲ、aVFでのST上昇は徐脈

Ⅱ、Ⅲ、aVFでSTが上昇していた場合は、右冠動脈が詰まっている可能性があります。右冠動脈は、刺激伝導系を養っていることが多いです(図4)。



刺激伝導系は心筋に電気を送る大切な役割をしています。心筋に電気が送られなければ、心臓は動くことができません。そんな刺激伝導系も血液によって栄養をもらっています。

その供給源が右冠動脈のことが多いんですね。右冠動脈が詰まってしまうと、刺激伝導系に栄養がいかなくなり、電気が発生できなくなります。そのため、心拍数がゆっくりになり徐脈になってしまいます。

そう。Ⅱ、Ⅲ、aVFでSTが上がっている場合は、徐脈になることが多いため、救急室でも脈が上がるお薬とか体表面のペースメーカー(除細動器についている機能)とかの準備が必要になってきますね。

今回は、どこでSTが上がっていたら、どんなことが起こりやすいのか?ということをお話ししました。

ひとくちに急性心筋梗塞って言っても、どの症例も重症な疾患ではありますが、起こりうる合併症が異なったり、頻度が異なります。

ある程度予測を立てて、合併症が起こることを予測して患者さんと向き合わなくてはなりませんね。

急性心筋梗塞の合併症については、まだまだあります。
また、ボチボチお話ししていきますね。

今回もお付き合いありがとうございました。
また次回!

プロフィール:野崎暢仁
新生会総合病院 高の原中央病院
臨床工学科 MEセンター
西日本コメディカルカテーテルミーティング(WCCM)副代表世話人
メディカセミナー『グッと身近になる「心カテ看護」~カテ出しからカテ中の介助、そして病棟帰室後まで~』など多数の講演や、専門誌『HEART NURSING』、書籍『WCCMのコメディカルによるコメディカルのための「PCIを知る。」セミナー: つねに満員・キャンセル待ちの大人気セミナーが目の前で始まる! 』など執筆も多数。