COVID-19「これまで」と「これから」|#002|ワクチンは世界を救えるか|藤田烈

この記事は藤田烈先生(国際医療福祉大学未来研究支援センター)を講師にお迎えしたWEB講義『臨床現場での感染対策』の受講者限定で行われたWEB配信(2021年6月19日)をまとめたものです。COVID-19の最新情報と一般的な感染対策の考え方、そして、いま大きな関心事であるワクチンについてお話しいただきました。

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SARS-CoV-2ワクチン試験で報告された有効性

ワクチンはどのくらい効果を期待できるのかという話ですが、スライド①の2行目がファイザー、3行目がモデルナ、5行目にアストラゼネカのワクチンが示されています。いま日本で入っているのがこの3つくらい。これから遅れて入ってくるかもしれないのが1行目のジョンソン・エンド・ジョンソンですが、それぞれの治験のデータ、開発段階で調べた有効性を紹介します。

スライド①


順番に見ていきますが、左側がCOVID-19を予防する効果、右側が重症化を予防する効果です。ファイザーの予防効果は95%くらい。打たない人が168人感染してるいのに対して打った人は8人の感染で済んでいることから、感染確率を95%減らすことがわかっています。

モデルナもほぼ同じくらいで94%です。アストラゼネカはちょっと落ちて約70%という結果が出ています。94%、95%というのは非常に高いですね。アストラゼネカの約70%というのは低いと思われるかもしれませんが、じつはインフルエンザワクチンの予防効果はこのくらいなんです。

新型コロナウイルスワクチンは、右側に示されている重症化予防効果が高いということも知られていて、どのワクチンも非常に高い値を示しています。そのためワクチン接種には重症化予防効果の意味が一つ、あと予防効果が70%であってもたくさんの人が打つと集団として減っていくので流行が収まっていくわけです。集団免疫と言いますが、それを期待するには十分な結果が臨床研究で得られているというのが開発段階でのデータです。

ただ、ワクチンに限らず治療薬はすべてそうですが、開発段階で発表された評価・成績は、臨床で使用すると多少落ちるのが常です。治験段階では、本当に使ってほしい人に正しい使い方で実験が組まれますが、実臨床では対象者にはいろんな併存疾患があったり、注射手技の影響も受けますので、少し成績が下がるのが通常です。

今回の場合、どれくらい落差があるかを確認すると、スライド②はイスラエルのデータです。ファイザー、モデルナのワクチンですが、販売されてからイスラエルがおそらく世界でいちばん早く大量に接種しています。ですからこれは治験ではなく、実際にどのくらい効いたかという実社会のデータです。

スライド②


上から2つのオレンジの線がワクチンを打っていない人で、いちばん上の実線が症状のあるCOVIT-19感染の発生リスクです。%で書いてありますので、ワクチンを打たなかった人のうち何割が感染したかということです。ワクチンを打っていない人を2カ月くらい追跡調査すると、そのうち10%強の人が症状のある感染を起こします。また上から2番目の線ですが、無症状の感染者も4%くらいいるので、合計すると15%くらいは2カ月以内に感染します。

対して、グラフの上から3番目と4番目の線ですが、ワクチンを打った人では、症状のあるなしもほとんど関係なく、およそ1%を切っていて、これは無症状の感染も予防できるという根拠にもなります。

ワクチンを接種しないと2カ月で12%が感染するところ、接種により1%になること自体効果が高いのですが、さらに具体的な数字で評価したのがスライド③です。

スライド③


イギリスで、ワクチン接種していない71万人と、ワクチン接種した10万人をそれぞれ追跡調査しています。赤線で囲ったところが予防効果だと思ってください。Adjustedのところを見るとDose 1で0.3って書いてあるのはワクチンを1回打つとリスクが0.3倍になる。つまり70%発生確率を抑えるということです。ワクチンを2回打つと0.15倍になるということなので発生確率が85%削減されます。つまり、実際に何十万人に接種した実臨床での有効性は85%くらいです。治験よりも1割くらい下がるということがわかります。

先ほども言いましたが、これはまったく珍しいことではなくて、85%っていう結果を聞いても我々はまったく落胆することはなく、思ったよりしっかり効いているという印象を受けます。

もう1つ、接種してからどのくらいの期間でワクチンが効いてくるかですが、右側にあるグラフは感染確率の比だと思ってください。Hazard ratioというのは、要するにこれが低くなるとワクチンが効いたということですが、横軸が打ってからの経過時間です。見ると1回目の接種からHazard ratioが下がってくるのがおよそ14日目くらいです。つまり1回目接種から2週間くらい経つと60%から70%くらいの有効性が出てきます。

さらに2回目を打つと1週間くらいで効いてきて、最終的に85%くらいまで有効性が上がってきます。ですので、ワクチンを打つことは大事ですが、打ったらすぐに感染リスクが下がるわけではなく、有効性が得られるまでには一定期間が必要なワクチンであるということは知っておいていただければと思います。

ワクチン接種後の変異株への感染

もう1つ、ワクチンの話のトピックとしては変異株ですね。イギリス株それから南アフリカ株、最近はインド株などいろんな変異株が出てきて、感染力の強さが危惧されています。

ワクチンが変異株にどれくらい効くかはまだデータが少ないので、日進月歩でアップデートされているところです。ワクチンの変異株に対する不安が話題になり始めたのは4月後半、ファイザーとモデルナを接種した人たちを追加観察していたところ、E484Kと呼ばれる南アフリカ株に感染した人が出てきたという第1報でした。ここからワクチン接種しても新型株には効かないのではないかと世界中が戦々恐々とし始めたわけです。

英国・南アフリカ変異株に対するワクチンの有効性


ただその後、5月5日に論文が出ました(スライド④)。この論文では先に流行したイギリス株と南アフリカ株について、ファイザーのワクチンの有効性を調べたものです。カタールでイギリス株や南アフリカ株が流行しており、ファイザーのワクチンを大量の人に接種してその効果を検証しました。結果としては、イギリス株に対してはワクチンを2回接種して14日以経つとだいたい90%くらいの有効性があり、南アフリカ株に対しては少し下がりますがそれでも75%くらい有効性があると確認されています。

スライド④


ということで、いちばん最初の既存株よりは下がりますが、十分に有効性が期待できるので継続して打っていきましょうと言われています。重症化予防効果は言わずもがな97%強です。

インド型変異株に対するワクチンの有効性

最近流行している、いま日本でも危惧されているインド株はまだ十分なデータがありませんが、6月中旬にイギリスの公衆衛生庁から調査結果が出ています。イギリスなのでアストラゼネカのワクチンを接種している人が多いため、ファイザーかアストラゼネカかどちらかを2回接種し終わった人の有効性ですが、1回目の接種から3週間後だと有効性は33%とやはり低いです。ただ、1回接種だけだとイギリスですでに流行している株に対しても50%の効果しかありませんでしたが、2回目接種した人たちには、ファイザーではインド株でも88%有効性がありました。また、アストラゼネカは少し低めですが2週間後のインド株への有効性は60%だったことが報告されています。

ここでは基礎的な話はあまり突っ込んでしていませんが、日本でいま接種が始まっている医療者はだいたいファイザーのワクチンを打っていますし、また職域接種でよく接種されているモデルナはファイザーワクチンと同じ種類のワクチンで、mRNAワクチンといわれるものです。ですから、あんまり予測でものは言ってはいけないのですが、多くの専門家はインド株に関してもファイザーのワクチンあるいはモデルナのワクチンは、ある程度有効性を期待できるのではないかという予測をして、接種を勧めています。


#003へ続く(2021年7月22日配信)
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藤田 烈
国際医療福祉大学 未来研究支援センター 管理課長/准教授
赤坂心理・医療福祉マネジメント学部医療マネジメント学科 准教授
国際医療福祉大学 研究管理室 室長

国立病院機構名古屋医療センター、東京大学医学部附属病院臨床研究支援センター、帝京大学医学部臨床研究医学講座講師/臨床研究センター講師、国際医療福祉大学未来研究支援センター講師を経て現職。