こんにちは!

前回の#017「~75mL送り出すための 3つのキーワード~」からの続きです。血行動態のお話でしたね。

血行動態とは、全身に血液を届けている様子を評価するもの。いつも私たちは、それを「血圧」で評価しています。今回のお話の前に#017をぜひ読んでくださいね!

前回のおさらい

心臓が、血液を送り出し、全身に血液を届けるという仕事ができるための条件が

SV×HR=Co

という式に隠されていました。

SV:一回拍出量
HR:心拍数
Co:心拍出量


そのなかでも、SVには「前負荷」「収縮力」「後負荷」3つのキーワードがあると言いました。3つのキーワードが揃ってはじめて血液が全身に送り出せる。つまり「血圧」を生み出すことができるのです。

前負荷

前負荷は、次に送り出すために血液が返ってくる血液の量のこと。心臓が1回収縮するごとに75mLの血液が送り出されるので、右心房に75mLの血液が戻ってこなくてはなりませんね(#002「血圧ってどうやってできてる?」を参照してください)。

では、前負荷がうまくいってないときとは、どのようなときなのでしょうか?

前負荷がうまくいってないとき①

例えば、大量出血しているとき。循環している血液量が減ってしまいます。そのときには心臓に返ってくる血液は少なくなってしまいますね。そうなると、心臓から送り出す血液の量も減ってしまうので、全身を巡る血液の量も減ってしまいます。そんなときには血圧は下がってしまいますね。

こんなときに血圧を上げるためには、ボリュームを足すことが必要になります。大量出血しているときには、輸血を必要とする状態になるかもしれませんね。

前負荷が下がっているために血圧が下がっているときには、それを補うためにボリュームを入れて、血圧を上げることが必要になります。

ちなみに、このときにみて欲しい大切なポイントはHR(心拍数)です。

何度もお示ししている大切な式

SV×HR=Co

この式のポイントは「×(かける)」です。 1回拍出量かける心拍数は、1分間に心臓からの拍出される血液の量になります。

×( かける)」なので、結果を維持するためには、一方が下がれば一方を上げればいいのです。大量出血によって前負荷が下がれば、一回拍出量は下がってしまいます。そこで、心拍数を上げることによって1分間の心臓から拍出される量を維持することができるのです。一回拍出量が下がっているサインは「心拍数の上昇」です。

いま、前負荷が低下して血圧が下がってしまった場合には……というようなお話をしていますが、大量出血して前負荷が下がったとしても、すぐには血圧低下を示さず、心拍数が前負荷の低下を補っている場合もあります。心拍数も合わせてバイタルサインを見るようにしましょう。

前負荷がうまくいってないとき②

気をつけなくてはならないのは、ボリュームを入れすぎないこと。
ボリュームを入れれば入れるほど血圧が上がるのか?

そうではありません。
ボリュームを入れすぎると逆に一回拍出量は下がってしまい、血圧は下がってしまいます。それは、フランクスターリングの曲線()が教えてくれています。



ボリュームが多すぎるのも、一回拍出量が低下する要因となります。

これは、尿が出ていないなどによってボリュームオーバーになっているときにも言えることですね。その場合には、利尿剤が必要になる場合も考えられます。

この前負荷については、#016「~ここをまずみる!要観察 POINT1to7~」でノリア・スティーブンソン分類(Nohria-Stevenson分類)についてお話ししたときにもふれています。いま一度見返してみてくださいね。

血圧が下がった!

一口に血圧が下がったといっても、それには原因があるでしょうね。
血圧が下がったときの対処には、輸液をする・薬剤を入れるなどなど、さまざまな処置がありますが、処置は血圧低下の原因に対しての対処でないといけませんね。

今回は、前負荷が低下したことによって、血圧が低下した場合のお話をしました。

この後も、血行動態についてお話を続けていきたいと思います。
お付き合いのほどお願いいたします。

今回もありがとうございました。
では、また!

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プロフィール:野崎暢仁
新生会総合病院 高の原中央病院
臨床工学科 MEセンター
西日本コメディカルカテーテルミーティング(WCCM)副代表世話人
メディカセミナー『グッと身近になる「心カテ看護」~カテ出しからカテ中の介助、そして病棟帰室後まで~』など多数の講演や、専門誌『HEART NURSING』、書籍『WCCMのコメディカルによるコメディカルのための「PCIを知る。」セミナー: つねに満員・キャンセル待ちの大人気セミナーが目の前で始まる! 』など執筆も多数。