伊藤敬介
高知医療センター SCU / 脳外科・耳鼻科病棟 看護科長 / 救急看護認定看護師

高知県・高知市病院企業団立高知医療センター勤務。2011年に救急看護認定看護師取得。2015年に高知県立大学大学院 看護学研究科博士前期課程修了。著書に『ナースのための臨床推論で身につく院内トリアージ 最速・最強の緊急度アセスメント』(2016年、学研プラス刊)。高知医療センター 救命救急センター/ 救急外来看護科長を経て、現在はSCUおよび脳外科・耳鼻科病棟の看護科長職に従事。
(2020年執筆時点の内容です)


命を救う、その先の看護観を模索

現在は、脳卒中ケアユニット(SCU)と脳外科・耳鼻科が中心の病棟の2つの部署で看護管理者をしています。そのため主に看護管理業務に従事することが多く、自ら患者にケアを提供することは少なくなりました。しかし、救急看護認定看護師の知識や技術、そして経験を活かして、入院患者の緊急度を判断することや急変対応の指揮をとることは多々あります。それだけでなく、救急看護認定看護師として学んだことは、ベッドコントロールを含め、病棟を管理することに大いに活用できるものと感じています。

これまで救急看護に尽力してきたこともあり、「命を救うこと」に看護の価値を見出してきました。しかし、2018年より現職に就きましたが、病棟には耳鼻科疾患である頭頸部のがんで闘病する患者が入院しています。そして、なかには終末期ケアを受ける患者もいます。そういった患者と家族に関わるなかで、「患者や家族が望む治療・療養施設、そしてどのように死を迎えるかといった希望」を少しでも叶えるために、看護師としてできることは何かということを強く考えるようになりました。今は看護師として、死が間近に迫った人に対して、それぞれが望むかたちで死を迎えることができるよう、しっかりとサポートしたいと考えています。

社会情勢をみすえた看護教育の研究

現在、救急看護学会のプレホスピタルケア委員会の委員長を務めており、ドクターカーに乗務してプレホスピタルケアに従事する看護師の教育に関する研究に携わっています。高齢社会と地域包括ケアといった医療を取り巻く社会情勢において、院外で展開される看護の需要は高まっています。そういった背景のなかで、ドクターカーによるプレホスピタルケアには、無限の可能性があると考えています。この研究において、その看護の指針を明確にすることをめざしています。

院内では、病院全体の院内急変対応の指導・教育にも携わっています。そのなかで最も関心があることは、ID(インストラクショナルデザイン)を活用した教育法を習得することです。IDを学びながら、どうすれば看護師の行動変容を起こすことができるかについて研究しています。


ドクターカーでの処置の様子。プレホスピタルケアの需要はますます高まっています。

相手を尊重した指導と患者のための協働を

看護管理者であるため、日々スタッフへの指導を行っています。そのなかで心がけていることは、相手の立場に立ち、相手を尊重することです。スタッフはそれぞれ経験も看護観も異なります。個々のスタッフにより良い指導を行うために、それぞれの個性にadjustした指導を心がけています。

現在、SCUにおいて、スタッフとともにリハビリテーション看護に尽力しています。そこで大切にしていることは、医師だけでなく、PT、OT、STといったセラピストやMSWとの情報共有を強化し、さまざまな角度から患者のより良いゴールを検討することです。動作能力の向上のためのリハビリテーションだけでなく、患者の健康問題を解決し、QOLの向上を追求していくには、看護の視点だけでなく、他職種の視点や考えを知り、何が患者にとってベストかを柔軟に考えることが必要だと思います。

これまで救命救急の世界で看護を実践し、看護師としてのキャリアを積んできました。そのことはいかなる看護にも活かすことができると強く感じています。ぜひ、皆さんも今、置かれた場所で真剣に看護を考え、自分にできる看護を精一杯実践してください。今後の看護師としてのキャリアに、救急看護のすべての経験が活かされます。病に苦しむ患者のためにできることを、ともに考えていきましょう。


本コラムは『Emer-Log(エマログ)』の2020年年間購読限定の特典として刊行された『デキる救急医・救急看護師の3つの習慣』からの再掲載です。

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Emer-Log(エマログ)2023年2号


Emer-Log(エマログ)とは?
チームで読める、救急看護の専門誌。二次救急や救命救急センターなど、さまざまな場での患者さんの評価、初療対応を取り上げます。救急看護を深めたいあなたへ、「自己学習」と「後輩指導」に役立つプラクティカルな知識をお届けします。
本誌:隔月刊/増刊:年2冊刊行

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1 JRC蘇生ガイドライン2020:一次救命処置(BLS)
2 JRC蘇生ガイドライン2020:二次救命処置(ALS)
3 JRC蘇生ガイドライン2020:小児の蘇生(PLS)
4 JRC蘇生ガイドライン2020:急性冠症候群(ACS)
5 JRC蘇生ガイドライン2020:脳神経蘇生(NR)
6 外傷病院前救護ガイドライン(JPTEC)
7 外傷初期診療ガイドライン(JATEC)
8 外傷初期看護ガイドライン(JNTEC)
9 頭部外傷治療・管理のガイドライン第4版
10 急性腹症診療ガイドライン2015
11 急性膵炎診療ガイドライン2021
12 急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドライン2018
13 急性中毒標準診療ガイド
14 日本版敗血症診療ガイドライン2020
15 ①熱中症診療ガイドライン2015
②新型コロナウイルス感染症流行下における熱中症対応の手引き(第2版)[医療従事者向け]
16 日本版・集中治療室における成人重症患者に対する痛み・不穏・せん妄管理のための臨床ガイドライン(J-PADガイドライン)
17 急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
18 2020年改訂版 大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン
19 肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断、治療、予防に関するガイドライン(2017年改訂版)
20 ARDS診療ガイドライン2021
21 成人肺炎診療ガイドライン2017
22 脳卒中治療ガイドライン2021
23 救急・集中ケアにおける終末期看護プラクティスガイド

定価:2,970円(税込)
刊行:2023年3月
ISBN:978-4-8404-7972-1

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