この連載は、英語の先生でも医師でもない、看護業務を知り尽くした現役看護師が医療現場で本当に使える英会話を紹介します。

検温、点滴、清拭、おむつ交換など医療現場で頻度の高い看護業務に焦点を当て、使えるフレーズを丁寧に解説します。

【看護師の看護師による看護師のための英会話:Episode2】は、「検温:血圧編」です。

今日は外国人患者さんを受け持っています。
日本人の受け持ち患者さんの検温を終え、残るは外国人患者さんの検温です。

こんな普段の会話を英語にしてみましょう。

(ドアを)コン・コン

①「失礼します、検温に伺いました」
②「まずは、血圧を測りますね」
③「袖をまくりますよ」
④「マンシェットを巻きますね。ちょっときつくなりますよ」
⑤「血圧は121/60です」
~血圧が高いとき~
⑥「血圧は185/94です。かなり高いですね。頭痛や吐き気、めまいなどの症状はありませんか?」
⑦「もう一度反対側の腕で測ってみますね」
⑧「血圧が180以上の場合は、血圧を下げるお薬を飲みましょう」
⑨「薬を持ってくるので、ちょっと待っていてくださいね」
~血圧が低いとき~
⑩「血圧は83/43です。かなり低いですね。立ちくらみやめまいはありませんか?」
⑪「1時間後にもう一度血圧を測ってみますね」

Knock, knock.

①Can I come in? Hello. Can I check your vital signs?
②First of all, let me take your blood pressure.
③Can I roll up your sleeve?
④Let me wrap the cuff around your arm. You may feel a little tight.
⑤Your blood pressure is 121/60.
~血圧が高いとき~
⑥Your blood pressure is 185/94.
 It is too high. Do you have any symptoms like headaches, nausea, or dizziness?
⑦Let me take your blood pressure in both your arms.
⑧When your blood pressure is 180 or higher, you need to take a medication to get it under control.
⑨I will grab the medication for you. Please hold on a second.
~血圧が低いとき~
⑩Your blood pressure is 83/43. It is too low. Do you have any symptoms like feeling lightheaded or dizzy?
⑪I am going to check your blood pressure in an hour.

今日は、検温で使えるフレーズ③【血圧編】「袖をまくりますよ」の英語表現を深掘り解説します。

「袖をまくりたいけど、 なんて言ったらいいんだろう……」
ちょっとした動作の英語が出てこなくて困ることってありますよね。
血圧測定以外にも採血、点滴、検査などで袖をまくるときは、「Can I roll up your sleeve?」を使います。

「(袖を)まくる」は「roll up」です。
「roll」は「巻く」という意味です。くるくる上に巻いていくので「roll up」です。
くるくるかわいいロールパンをイメージすると覚えやすいですね。
ただし、ロールパンは和製英語なので通じません。ロールパンは、英語で「テーブルロール」です。

「袖」は「sleeve」です。
日本でも「ノースリーブ」と言ったりするので覚えやすいですよね。

ここで注意したいのが、「だれの」という所有格「your」を忘れないことです。
“いちいち言わなくてもわかる”と考える日本と、“はっきり伝えないとわからない”と考える欧米の文化の違いが、言語の違いとして表れています。
残念ですが、これはもう「my」「your」「his」「her」「their」などの所有格を意識しながら慣れていくしかありません。
がんばりましょう!

さて、前々回と今回使っている「Can I~?」について、ここで少し解説します。
「Can I~」は、「~してもいいかな?」という少しカジュアルな感じで使えます。
「Can I~」よりも「~させていただけますか?」という丁寧でフォーマルな言い方に「Could I ~」や「May I ~」などがあります。
かなり目上の方や初対面の方など関係に距離がある場合や、お願いする内容の重さによっては、フォーマルな言い方のほうが適切です。
ただ、今回のような検温の場合は、そこまで相手との距離をとる必要はないので「Can I~」を使っています。
もちろん、「Could I~」や「May I~」を使っても間違いではありません。
また、自分で袖をまくってもらうようにお願いするのもありです。
そのときは、「Please roll up your sleeve」や「Can you roll up your sleeve for me?」などが使えます。

いかがでしたか?
次回は、マンシェットを巻きながら「ちょっときつくなりますよ」と声をかけてみましょう。

では、Let’s wrap it up for today. Have a good one. (今日はこのへんで、またね~)


ここがポイント!

「roll up your sleeve」

「袖をまくる」という意味で使います。

そして、もう1つこのフレーズには、「腕まくりして本腰を入れる」「大変な仕事に取りかかる」という意味もあります。

2021年アメリカで新型コロナワクチンの予防接種を呼びかけるスローガンにもなったフレーズです。



佐藤まりこ
生まれも育ちも北海道。しかし、寒いのが苦手で大学卒業とともに上京し大学病院に勤務。さらなる暖かさを求めて2009年、米国・ロサンゼルスに留学し、翌年California RN(Registered Nurse) Licenseを取得。サンディエゴの総合病院で急性期病棟実習を修了後、内視鏡センターに勤務。帰国後は、看護師・医療通訳・医療翻訳を兼任しながら大学病院に勤務中。

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