この連載は、英語の先生でも医師でもない、看護業務を知り尽くした現役看護師が医療現場で本当に使える英会話を紹介します。

検温、点滴、清拭、おむつ交換など医療現場で頻度の高い看護業務に焦点を当て、使えるフレーズを丁寧に解説します。

【看護師の看護師による看護師のための英会話:Episode4】は、「検温:体温編」です。

今日は外国人患者さんを受け持っています。
日本人の受け持ち患者さんの検温を終え、残るは外国人患者さんの検温です。

こんな普段の会話を英語にしてみましょう。

(血圧を測り終わったあと)

①「体温を測りますね」
②「音が鳴るまで脇でギュッと挟んでください」
③「体温は36.2度で平熱です」

①Let me take your body temperature.

②Please put this thermometer in your armpit and hold your arm down tightly until it beeps.

③Your body temperature is 36.2. It is normal.



今日は、検温で使えるフレーズ②【体温編】「音が鳴るまで脇でギュッと挟んでください」を深掘り解説します。

「音が鳴るまで脇でギュッと挟んでください」は、「please put this thermometer in your armpit and hold your arm down tightly until it beeps」を使いました。

英語のほうが、かなり長くなっていますね。
これは、日本語と英語の違いが背景にあります。
日本語は、いちいち細かく言わなくても会話が成立するので、主語や目的語をどんどん省きます。
英語も省略することはありますが、日本語ほどではありません。
この違い(コンテクスト)について、「Take a break?」でもう少し詳しく解説します。
では、英語のフレーズを細かく見ていきましょう。

英語の説明は、体温測定の手順を2つにわけて説明しています。
「体温計を脇に挟む」→「音が鳴るまでギュッと挟んだままにする」という手順を時系列で説明すると、患者さんにわかりやすく伝わります。

「体温計を脇に挟む」は、「put this thermometer in your armpit」を使いました。
「put」は、「place」に置き換えてもいいでしょう。
「脇」は、「armpit」を使いました。
「arm」は「腕」、「pit」は「くぼみ」という意味です。
「armpit」は、脇や脇の下、医療従事者が使う「腋窩」に相当します。

次は、ピピっと音が鳴るまで体温計をギュッと脇に挟んでもらいます。
「音が鳴るまでギュッと挟んだままにする」は、「hold your arm down tightly until it beeps」を使いました。
「hold your arm down tightly」は、体温計をギュッと挟む手順を説明しています。
「hold」は、「握る」という意味のほかに「ある状態をそのまま保っておく」という意味があります。
「hold your arm」は、「腕をそのままの状態にする」という意味です。今回は体温計を挟んでいるので、腕を下げたままにします。
「下げる」=「down」で「hold your arm down」を使いました。
もし、腕を上げたままにしてほしいときには、「hold your arm up」が使えますよ。

「ギュッ」に相当するのは、「tightly」です。

また、体温計のような電子機器から出る「ピー」や「ピッ」などの電子音は、すべて「beep」でOKです。
「(体温計の)鳴るまで」は、「until it beeps」が使えます。


いかがでしたか?
次回は、体温の値を伝えてみましょう

では、Let’s wrap it up for today. Have a good one.(今日はこのへんで、またね~)


Take a break?

~日本は世界一ハイコンテクストな国~
一息ついて気楽に読めるコラムです。
本文で使ったことばを1つピックアップして、ちょっと賢くなる雑学を紹介します。
今日のことばは、「コンテクスト」です。

「コンテクスト」とは、「文脈」や「前後関係」という意味があります。
よく文化の違いで出てくる言葉なのですが、「コンテクストが高い文化」とは、はっきりと口にしなくても伝わる・察することができる文化で、まさに以心伝心や阿吽の呼吸、空気を読むなどの言葉がある日本が、代表的なコンテクストの高い文化を持った国です。
一方、「コンテクストが低い文化」とは、はっきり言わないと伝わらず簡潔明瞭な意思表示を好むアメリカやヨーロッパが、コンテクストの低い文化を持った国といえます。

どちらの文化がいいか悪いかではありません。
日本が世界一コンテクストの高い文化であることを意識しながら、外国人患者さんにはあいまいな表現を避けてシンプルで明確な言葉を選択し伝えることが、文化に配慮した対応になります。
「外国人患者さんは、いちいち言わないとわからない!」という感情は、「文化が違う」という多文化理解にシフトできるといいですね。



佐藤まりこ
生まれも育ちも北海道。しかし、寒いのが苦手で大学卒業とともに上京し大学病院に勤務。さらなる暖かさを求めて2009年、米国・ロサンゼルスに留学し、翌年California RN(Registered Nurse) Licenseを取得。サンディエゴの総合病院で急性期病棟実習を修了後、内視鏡センターに勤務。帰国後は、看護師・医療通訳・医療翻訳を兼任しながら大学病院に勤務中。

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