この連載は、英語の先生でも医師でもない、看護業務を知り尽くした現役看護師が医療現場で本当に使える英会話を紹介します。

検温、点滴、清拭、おむつ交換など医療現場で頻度の高い看護業務に焦点を当て、使えるフレーズを丁寧に解説します。

【看護師の看護師による看護師のための英会話:Episode6】は、「痛みのアセスメント」です。

今日は外国人患者さんを受け持っています。
血圧、脈拍、体温、サチュレーションの測定が終わりました。
次は、第5のバイタルサインといわれる「痛み」について聞いていきます。
痛みのアセスメントMnemonic「OPQRST」を使ってアセスメントしていきましょう。



痛みの表現は“感覚”で覚えよう Part1



今日は、Nurse’s Crib Notes②:看護師が知っておきたい痛みの表現part1を紹介します。

「Nurse’s Crib Notes」は、現役看護師さん・看護学生さんの役に立つ看護実践の虎の巻です。
「Crib Notes」とは、「虎の巻」という意味です。

Nurse's Crib Notesの2回目は、感覚で覚える痛みの表現です。

日本語の痛みの表現は、「ズキズキ」「ジンジン」「ガンガン」といったオノマトペ(擬音語、擬態語)を使うことが多いですよね。
残念ですが、このオノマトペは外国人の患者さんにまったく通じません。
さらに、英語圏にはないオノマトペを無理やり日本語に当てはめて、「ズキズキする」=「●●」と覚えるとたいてい混乱を招きます。
なぜなら、ある医学辞書には「ズキズキする」=「throbbing」、別のwebサイトには「ズキズキする」=「stabbing」や「aching」と別の単語が書いてあるからです。
プロの医療通訳者の間でも痛みの表現を英語にするのは、特に難しいといわれています。

そこで今回は、言葉のニュアンスに焦点を当てます。
自分が経験したことのある痛みや患者さんを思い浮かべながら理解する“これだけは押さえておきたい!”痛みの表現を、part1とpart2に分けて紹介します。

【痛みの表現part1】


Aching

【想像してください】
・虫歯がズキンズキンして痛い
・派手に転んでひざを擦りむきズキズキ波打つように痛い
・傷口が膿んでズキズキしている

【言葉の知識】
Achingは、体の中からうずく痛みに使います。
「ache」と「pain」は、どちらも「痛み」を意味しますが、まったく同じではありません。
「pain」は、軽度~重度まで痛み全般に使うのに対し、「ache」は、体の中からズキズキするようなうずく痛みに使い、痛みの程度は軽度~中等度です。命に関わるような痛みには使いません。

【日本語にすると…】
ズキズキする
ズキンズキンする
うずく

【よく使う疾患】
頭痛(headache)
歯痛(toothache)
首や肩の痛み
肘・膝などの関節痛
傷口や手術創(wound)




Burning

【想像してください】
・日焼けしすぎてヒリヒリして痛い
・美容室でカラー剤がしみて頭皮がヒリヒリする
・化粧品が合わなくて顔がヒリヒリする
・目に異物が入って焼けるように目が痛い
・膀胱炎でおしっこするときにしみるような痛み
・ヘルペスや帯状疱疹がビリビリして痛い

【言葉の知識】
Burning painは、体の表面がヒリヒリするときや、体の中から焼けるように熱くて痛いときに使います。
「burn」は、やけど・熱傷などの意味があります。文字通り火傷をしたとき、日焼けや化粧品などの外的刺激で皮膚がヒリヒリしたときに使います。
帯状疱疹やヘルペスのビリビリした痛みも「burning」です。
ビリビリ・チクチクするので「burning and tingling」とセットで使います。
体の中から焼けるような痛みは、灼熱痛と呼ばれ長引く帯状疱疹の痛みや糖尿病の合併症、坐骨神経痛、頚椎症にともなう神経障害疼痛でよく聞かれます。

【日本語にすると…】
ヒリヒリする
ビリビリする
焼けるような痛み
灼熱痛
口内炎(mouth sores)

【よく使う疾患】
接触性皮膚炎(肌のかぶれ)
帯状疱疹(shingles)
ヘルペス(herpes)
胃・十二指腸潰瘍(stomach or duodenum ulcer)
坐骨神経痛(sciatica)
頚椎症(cervical spondylosis)
尿路感染(UTI)
やけど(burn)
日焼け(sunburn)
胸やけ(heartburn)




Cramping

【想像してください】
・寝ているときに足がつって「あいたたたぁー!」となったとき
・ズーンとした重い生理痛の痛み

【言葉の知識】
Cramping painは、筋肉がギューッと収縮して起こる締め付けられる突然の痛みに使います。
「cramp」は、「けいれん」という意味です。
けいれんとは、自分の意思とは無関係に起こる筋肉の収縮です。
「cramping」は、筋肉に使います。
足がつるこむら返りは、有痛性筋けいれんです。生理痛は、子宮平滑筋という筋肉の収縮によって起こります。

【日本語にすると…】
(足が)つった
ギューッと締め付けられるような痛み
ズーンとした重い痛み
陣痛のように締め付けられる痛み
けいれん痛

【よく使う疾患】
こむら返り(leg cramps)
生理痛(period cramps)
筋肉のけいれん(muscle cramp)




Numbness

【想像してください】
・長時間正座をして足がしびれた
・寒さで手の感覚がなくジンジンする
・歯医者で麻酔を使って唇の感覚がない

【言葉の知識】
Numbnessは、しびれる感覚です。
「numbness」は、「しびれ」「無感覚」という意味です。
形容形の「numb」をよく使います。例えば、「足がしびれた」は「my legs are numb」です。足や手がしびれると感覚がなくなってジンジンしますよね。この症状は、「numbness and tingling」といいます。

【日本語にすると…】
しびれる
しびれてジンジンする
感覚がない

【よく使う疾患】
ずっと同じ姿勢でしびれた手足
末梢神経障害(peripheral nerve injuries)
手根管症候群(carpal tunnel syndrome)
脳卒中(stroke)




Shooting

【想像してください】
・散歩をしていて突然足にビーンと痛みが走る
・腱鞘炎の指を動かしたときにズキーンと痛みが走る
・しゃがんで物を取ろうとすると腰のズキーンと痛みが走る

【言葉の知識】
Shooting painは、ものすごい速さで駆け抜けていく痛みです。
「shooting」は、「射撃」という意味があり、「shooting star」は「流れ星」を意味します。
何らかの刺激で、突然ビューンと激痛が駆け抜けていく感じです。
帯状疱疹やヘルペスができているところにモノが当たって激痛が走るときにも使います。

【日本語にすると…】
突然ビーンと痛い
突然ズキーンと痛みが走る
電撃痛

【よく使う疾患】
坐骨神経痛による足の痛み
肩腱板損傷(rotator cuff tear)
三叉神経痛による発作的な顔面の痛み(trigeminal neuralgia)
帯状疱疹(shingles)
ヘルペス(herpes)





いかがでしたか?
自分の経験したことのある痛みを思い浮かべながら、言葉の持つニュアンスを少し感じ取れたでしょうか?
次回は、痛みの表現は“感覚”で覚えよう Part2を紹介します。

では、Let’s wrap it up for today. Have a good one.(今日はこのへんで、またね~)



佐藤まりこ
生まれも育ちも北海道。しかし、寒いのが苦手で大学卒業とともに上京し大学病院に勤務。さらなる暖かさを求めて2009年、米国・ロサンゼルスに留学し、翌年California RN(Registered Nurse) Licenseを取得。サンディエゴの総合病院で急性期病棟実習を修了後、内視鏡センターに勤務。帰国後は、看護師・医療通訳・医療翻訳を兼任しながら大学病院に勤務中。

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