この連載は、英語の先生でも医師でもない、看護業務を知り尽くした現役看護師が医療現場で本当に使える英会話を紹介します。

検温、点滴、清拭、おむつ交換など医療現場で頻度の高い看護業務に焦点を当て、使えるフレーズを丁寧に解説します。

【看護師の看護師による看護師のための英会話:Episode6】は、「痛みのアセスメント」です。

今日は外国人患者さんを受け持っています。
血圧、脈拍、体温、サチュレーションの測定が終わりました。
次は、第5のバイタルサインといわれる「痛み」について聞いていきます。
痛みのアセスメントMnemonic「OPQRST」を使ってアセスメントしていきましょう。

こんな会話を英語にしてみました。

①「いつから痛みがありますか」
 「何をしているときに痛くなりましたか」
 「突然痛くなりましたか、それとも徐々に痛みがひどくなりましたか」
②「どうすると痛みがひどくなりますか」
 「どうすると痛みが和らぎますか」
 「市販のお薬は飲んでみましたか」
③「どんな痛みですか。鋭い痛みですか、それとも、鈍い痛みですか」
④「どこが一番痛いですか。一番痛いところを指で指してください」
 「痛みは動いていませんか」
⑤「まったく痛くないを0、今まで経験した中で一番強い痛みを10とすると、今の痛みはどれくらいですか」
 「どれくらいの痛みなら我慢できそうですか?」

⑥「ずっと痛いですか?」
 「痛みに波はありますか?」

①When did your pain start?
 What were you doing when the pain started?
 Did your pain start suddenly or gradually get worse?

②What makes your pain worse?
 What makes your pain better?
 Have you tried some medicines like over-the-counter medicines?

③How would you describe your pain? Is it sharp or dulls?

④Where does it hurt the most? Please point to where it hurts the most.
 Does your pain move anywhere?

⑤On a scale of zero to ten, zero being no pain at all and ten being the worst pain of your life,how would you rate your pain?
 How much pain can you put up with?

⑥Does it hurt all the time?
 Does your pain come and go?



今日は、痛みのアセスメントMnemonic「OPQRST」の「Severity(痛みの強さ)」を尋ねるフレーズを深掘り解説します。

「Severity」とは、医療分野で「重症度」と訳されていますが、ここでは痛みの強さを指しています。
痛みは、患者さんにしかわからない感覚です。
患者さんが、「痛い、すごく痛い」と言っても、どの程度なのか把握するのは難しいですよね。
そこで、医療現場では痛みの強さを0~10の11段階で評価するNRS(Numerical Rating Scale)が頻繁に使われます。
「NRS」は、「Numerical Rating Scale(数字で評価する指標)」の頭文字をとった略語です。

“痛みの強さ”に関連したフレーズを紹介します。

1.まったく痛くないを0、今まで経験した中で一番強い痛みを10とすると、今の痛みはどれくらいですか?
「NRS」は、まず患者さんに使い方を説明する必要があります。
「まったく痛くないを0、今まで経験した中で一番強い痛みを10とすると、今の痛みはどれくらいですか?」は、「on a scale of zero to ten, zero being no pain at all and ten being the worst pain of your life, how would you rate your pain?」を使いました。
前後を置き換えて「how would you rate your pain on a scale of zero to ten, zero being no pain at all and ten being the worst pain ever?」でもいいでしょう。
すこし長い文なので、1つずつ解説しますね。

まず、「on a scale of zero to ten」は、0-11の11段階のスケールであることを説明しています。
「0はまったく痛くない」は、「zero being no pain at all」を使いました。
「no~at all」は、「まったく~ない」という意味です。ただし、「at all」は「まったく」という強調で使っているだけなので省略してもOKです。

「今まで経験した中で一番強い痛みを10とする」は、「ten being the worst pain ever」を使いました。
直訳すると「ten being the worst pain you have experienced ever」ですが、「ever」だけでも言いたいことは伝わります。

「今の痛みはどれくらいですか」は、「how would you rate your pain?」を使いました。
ここでも「would」が出てきましたね。
この「would」も、「Quality(痛みの性質)」で紹介した仮定法です。
痛みに数字なんてありませんから、“もし数字で表現するとしたら”という仮定法です。
「rate」は、「評価する」や「点数をつける」という意味です。

2.どれくらいの痛みなら我慢できそうですか?
外国人患者さんは日本人に比べてかなり痛みに弱く、痛みの数値が高い印象があります。
つらい表情もなく痛みは「8」と答えて痛み止めはいらないという患者さん、「10」を連発しオピオイド系鎮痛薬のフラッシュを何度も要求する患者さんなどを担当した経験があります。
 日本人患者さんにはあまり質問しませんが、お国柄や文化的背景の違いもあるので、外国人患者さんにはNRSを尋ねるだけではなく、痛みの耐性についても確認したほうがいいときがあります。

「どれくらいの痛みなら我慢できそうですか?」は、「how much pain can you put up with?」を使いました。
「put up with~」は、「~を我慢する」という意味です。
「put up with」は「handle」に置き換えてもいいでしょう。
「handle」は、「~に対処する」「~を操る」という意味です。


いかがでしたか?

今回は痛みのスケール「NRS」を使うときのフレーズを紹介しました。
痛みのスケールは、ほかにも子どもに使えるフェイススケールや患者さんに線を引いてもらうビジュアルアナログスケールなどがあります。またの機会に紹介しますね。

次回は、痛みのアセスメントMnemonic「OPQRST」の「Timing(タイミング)」について尋ねるフレーズを詳しく紹介します。

では、Let’s wrap it up for today. Have a good one.(今日はこのへんで、またね~)



佐藤まりこ
生まれも育ちも北海道。しかし、寒いのが苦手で大学卒業とともに上京し大学病院に勤務。さらなる暖かさを求めて2009年、米国・ロサンゼルスに留学し、翌年California RN(Registered Nurse) Licenseを取得。サンディエゴの総合病院で急性期病棟実習を修了後、内視鏡センターに勤務。帰国後は、看護師・医療通訳・医療翻訳を兼任しながら大学病院に勤務中。

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