この連載は、英語の先生でも医師でもない、看護業務を知り尽くした現役看護師が医療現場で本当に使える英会話を紹介します。

検温、点滴、清拭、おむつ交換など医療現場で頻度の高い看護業務に焦点を当て、使えるフレーズを丁寧に解説します。

【看護師の看護師による看護師のための英会話:Episode7】は、「採血」です。

患者さんが緊張する身近な処置の1つに採血があります。
採血をする看護師さんは、患者さんの緊張を和らげながら正確・安全に採血検体を採ることが求められます。

今日は、外国人患者さんの早朝採血があります。
採血手順を説明しながら、スムーズに採血ができるといいですね。

こんな会話を英語にしてみました。

①(病棟の場合)失礼します。おはようございます。採血に来ました。
 (外来の場合)おはようございます。どうぞおかけください。採血を担当する佐藤です。
②お名前とお誕生日をお願いします。
③アルコールのアレルギーはないですか?
④今まで採血で具合が悪くなったり気を失ったことはないですか?
⑤血液がサラサラになる薬は飲んでいますか?
⑥どちらの腕でもいいですか?
⑦袖をまくって腕はまっすぐにしてください。
⑧駆血帯を巻いて、ちょっと血管をみてみますね。
⑨親指を中に入れて手を握ってください。
⑩ここをアルコール綿で消毒しますね。
⑪刺しますよ~、ちょっとチクっとしますね。
⑫楽にしてください。もう少しで終わりますね。大丈夫ですか?
⑬針を抜きますね。少なくとも5分は、刺したところを押さえてください
⑭テープかぶれはないですか? 絆創膏を貼りますね。
⑮これで終わりです。おつかれさまでした。
(失敗したとき)
⑯すいません、採血がうまくいかなかったので針を抜きますね。反対の腕をみせてもらってもいいですか? 
もう一度採血させてもらってもいいですか?

①(病棟の場合)Knock, knock. Can I come in? Good morning. Did you sleep well last night? I came here to draw your blood.

 (外来の場合)Good morning. I am Sato. Please have a seat. I am here to draw your blood. How are you doing today?

②Can I have your name and date of birth, please?

③Are you allergic to alcohol?

④Have you ever had a problem with getting a blood draw? For example, did you feel sick or faint during a blood draw?

⑤Are you on a blood thinner?

⑥It doesn’t matter which one?

⑦Can you roll up your sleeve and keep your arm straight for me?

⑧I will put a tourniquet. Let me take a look at your vein.

⑨Make a fist with your thumb inside for me?

⑩I am going to use an alcohol swab and clean up here.

⑪I am going to stick here. You may feel a little sting.

⑫Nice and relax. We are almost done. Are you all right?

⑬I will remove the needle. Can you apply pressure on the site for at least 5 minutes?

⑭Are you OK with tape? I will put a Band-Aid over here.

⑮You are all set. Have a good one.

(失敗したとき)

⑯Sorry. This didn’t work. I will remove the needle. Is it ok if I take a look at your other arm?
Is that OK with you if I try it again?



今日は、採血で使えるフレーズ⑨「親指を中に入れて手を握ってください」を深掘り解説します。

採血をするとき親指を中に入れて握ってもらいますよね。
これは、腕の筋肉が収縮して血管が浮き上がり採血しやすくするためです。

「親指を中に入れて手を握ってください」は、「Make a fist with your thumb inside for me?」を使いました。
「make a fist」は、「こぶしを作る」「手を握る」という意味です。

ときどき「squeeze your hands」という表現をみかけます。 採血の場面で患者さんに使うと、かなり力が入ってしまう印象です。 個人的には「make a fist」くらいがちょうどいい力加減かなと思います。

「with」を使って親指を中に入れてもらいましょう。
「親指を中に入れる」は、「your thumb inside」です。
FacebookやTwitterなどの「いいね」の絵文字「サムズアップ(thumbs-up)」が普及してから、親指=thumbが日本でもかなり浸透しましたね。


一昔前は、血管が細くて見えづらいと、グーパーグーパーを繰り返してもらったり、血管をポンポン軽くたたいていましたが、現在は推奨されていません。
カリウム値が上昇して採血結果に影響を及ぼすからです。
今は、蒸しタオルなどで腕を温めることが推奨されています。
とはいっても、かなり採血が難しい場合は、ポンポンすると血管が見えやすくなり効果的だと感じることがあります。採血に関連した文献の中には、「そんなの迷信だ」と書いてあるものもありますが、みなさんはどう思われるでしょうか?


いかがでしたか?
次回は、アルコールで消毒していきましょう

では、Let’s wrap it up for today. Have a good one.(今日はこのへんで、またね~)


Take a break?

~日本の約2倍、痛み止めのアメリカ事情~
一息ついて気楽に読めるコラムです。
本文で使った英単語やイディオムの中から1つをピックアップし、ちょっと賢くなる雑学を紹介します。
今日の英単語は、「Thumb」です。

「thumb」は、「親指」です。
本文では、「thumb」を使ったイディオム「thumbs-up」を紹介しましたね。
ほかにも、「thumbs down=いまいち・ブーイング」や「all thumbs=不器用」などのイディオムがあります。

さて、みなさんは5本の指それぞれを英語で何というか覚えていますか?
親指以外の指は、すべて「finger」がつきます。

医療現場であまり使う機会は多くないと思いますが、さらっと紹介しましょう。

・Index finger(人差し指)
「Index」は、「指し示す」という意味です。人を指さす「人差し指」という日本語の発想とかなり似ていますね。
・Middle finger(中指)
「middle」は、「真ん中」という意味です。こちらも日本語と同じ発想ですね。
・Ring finger(薬指)
「ring」は、結婚指輪を指しています。結婚指輪をはめる指なので「ring finger」です。
では、なぜ日本は「薬指」なのかというと、薬を水で溶かしたり、粉薬をなめたり、塗ったりするのに使われたことに由来します。5本の指の中でも使用頻度が少なく、清潔な指だと考えられたそうです。薬師如来の右薬指が、少し前に出ているのも、そうした理由が関連しています。
・Little finger(小指)
「little」は、「小さい」という意味です。こちらも日本語と同じ発想ですね。



佐藤まりこ
生まれも育ちも北海道。しかし、寒いのが苦手で大学卒業とともに上京し大学病院に勤務。さらなる暖かさを求めて2009年、米国・ロサンゼルスに留学し、翌年California RN(Registered Nurse) Licenseを取得。サンディエゴの総合病院で急性期病棟実習を修了後、内視鏡センターに勤務。帰国後は、看護師・医療通訳・医療翻訳を兼任しながら大学病院に勤務中。

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