みなさん、こんにちは!
ポータブル吸引器の選びかたの9回目、最終回です。

ポータブル吸引器を選ぶ際に、バッテリーが内蔵されいるもの、電池で使えるものなど、コンセントに接続しなくても使用できるものを購入されることが多いと思います。お出かけ用に、このようなポータブル吸引器を購入することもあるでしょう。

でも、バッテリーの使用時間には限りがあります。バッテリーがなくなってしまえば、コンセントを接続できる場所を探さないといけません。その点、電池式は予備の電池を準備しておけば良いので、便利かもしれません。

電動式のほうが吸引パワーがあると考えられる方も多いかもしれませんが、いやいや、実は電気を使用しない吸引器も侮れないぐらいパワーがあります。

今回は、災害時など電源が使えなくなった時のために、是非、準備しておいて欲しい非電動式の吸引器についてお話ししていきましょう。




①手動式吸引器(写真1)
まず、血圧計の圧力上げるゴム球を使用した手動式吸引器から紹介していきます。

血圧計のゴム球の場合は、ゴム球を潰すと空気が送り出されるのですが、吸引器の場合は弁を逆に付けることで、ゴム球を潰して、開くときに、空気が吸われていくのです。

ゴム球には吸引瓶が付いており、ここに吸引チューブが接続できます。価格は4,000円程度なので、大きな負担にはなりません。とても小さいので、お出かけのときに、バッグに入れておくと、いざというときに役立つと思います。

私は、ポータブル吸引器を購入される方には、予備用としてこの手動式吸引器をほぼ全員に購入していただきました。
ポータブル吸引器が突然故障することもありますし、吸引器は命を守るのにとても大事な医療機器ですから、バックアップに準備しておくことはとても大事です。

「手動式なんて、大した吸引パワーないでしょ?」と思われるかもしれませんが、結構すぐれもので、吸引パワーはしっかりあります。
あるお母さんは、「お出かけは手動式吸引器があれば十分! これ、かなり使えます」と言っていました。

欠点は、片手がゴム球を潰すのに使ってしまうので、吸引するときに使えるのが片手だけになることと、吸引のカスが付着するからか、ときどきゴム球の弁がうまく動かなくなる故障が起こることです。


写真1 手動式吸引器
(写真提供:新鋭工業株式会社)




②ピストル型の吸引器(写真2)
前述したゴム球の部分がピストル型になっているのでとても動かしやすいです。

ゴム球より大きい吸引パワーがあります。 ゴム球と同じく片手で吸引器を動かすので、両手が吸引に使えないということがあります。

価格は25,000円ぐらいだったと思います。
持ち歩くにはちょっと大きいかなと思います。


写真2 ピストル型吸引器
(写真提供:Ambu社)




③足踏式吸引器(写真3)
まず1つ目の足踏み吸引器は、ビニールプールに空気を入れるときに使う空気入れに似た、蛇腹のポンプを足で踏み込んで吸引圧を作るものです。

足を上下して動かすので、吸引パワーは強いです。
そして両手が空くというメリットがあります。

ただ、立って使用しないといけないので、ベッドを使用されている患者さんでなければ使えません。
それなりの大きさなので、家で使うには良いですが、持ち運びには不便な大きさです。

価格は20,000円ぐらいからあるようです。
この足踏式吸引器の欠点は、足を上下に動かすと同時に上半身も動いてしまい、吸引操作がしにくいことです。吸引チューブを挿入してから足を動かしても、吸引チューブの先端を適した場所に維持できないということがあります。


写真3 足踏式吸引器
(写真提供:ブルークロス株式会社)




④足踏吸引器(写真4)
もう1つの足踏吸引器は、足首部分を動かすだけ吸引圧がつくれるタイプです。
手動よりパワーがありますし、疲れません。

前述した足踏み吸引器は上半身が動いてしまうとお話ししましたが、このタイプは足首部分だけを動かすので、上半身は動きにくいです。
両手も自由になります。


しかし、この足踏式吸引器の欠点は、立っての操作が必要なので、ベッドなどの高いところにいる患者さんでないと使えません。
靴の片側分のサイズなので、車の中に入れておくなど持ち歩くのは可能かと思います。

価格は12,000円ぐらいからで購入できると思います。


写真4 足踏式吸引器
(写真提供:新鋭工業株式会社)




今回は、吸引器の選び方の最終回として、災害時等に使用できる非電動式の吸引器についてお話しさせていただきました。

4種類、紹介させていただきましたが、それぞれに特徴があります。
「買って失敗した~」ということがないので、ご参考になれば幸いです。
持ち運びができて小型で、いざというときに使えるものをまずはご準備することをお勧めします。

9回にわたって在宅医療で使用するポータブル吸引器についてお話ししてきました。ポータブル吸引器1つとっても、非常に奥が深くて、長くなってしまいましたが、みなさまがポータブル吸引器を選ぶときの参考になれば幸いです!

新型コロナ病棟ナース戦記

松井 晃
KIDS CE ADVISORY代表。小児専門病院で35年間働き、出産から新生児、急性期、 慢性期、在宅、ターミナル期すべての子どもに関わった経験をもつ臨床工学技 士。メディカ出版のセミナー講師も務め『完全版 新生児・小児のME機器サポー トブック』などの著書がある。KIDS CE ADVISORYのHPは▶医療コンサルタント | Kids Ce Advisory

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