今回は前回、前々回につづき、「在宅用人工呼吸器輸入販売企業さんと呼吸療法の困りごとを話そう!」をテーマに開催した第2回KIDS Home Care Device研究会において、医療者からの発表を紹介します。
第2回のスケジュールは図1の通りです。
看護師から「こんな呼吸器や周辺機器が欲しい!」
まずは、看護師の立場から松丸実奈さんの発表がありました。
松丸さんは、NPO法人にこりの理事長をつとめておられ、「おうちに帰ろう」を合言葉に、福岡・北九州エリアを中心に医療的ケア児の救世主になっています。
「できないことなんてない!」と、子どもの願いをかなえるチームとして、にこりを運営されています。本当にどこにでも行っちゃうし、新幹線だって飛行機だってなんのその。ディズニーランドはもちろん、海にも入っちゃいます。「できる」をお子さんとご家族に提供するパワーには、いつも感動させられています。
子どもたちが主役で、医療従事者や福祉・教育に携わる人間は脇役として、その子の願いをどうやって叶えるかを大切にしたケアを提供されています。
医療的ケア児とラベリングせず、楽しいこと、遊びが大好きな子どもという大きなくくりのなかで、あくまでも人工呼吸器はその子の生活の一部であり、人工呼吸器も脇役の一人?として、ご家族の想いや希望を以下のように集めてきてくれました。
①人工呼吸器は次にするべきことを教えてくれる。職種に関係なく理解しやすいもの
②アラームは見にくいから、声で教えてくれたらいいのに
③加温加湿器のお水がなくなったら教えてほしい
④呼吸器回路に結露がたまり、その水が暴れて夜中に起こされる!
⑤ウォータートラップがなくなればいいかな。床でお布団での生活ではウォータートラップに水が貯まらない
⑦呼吸器回路にプチプチを巻いたり、ラップを巻いたり……結露が困るよね~
⑧自動のバッグバルブマスクがあったらいいよね
⑨携帯用の加温加湿器があったらいいな
⑩とにかく小さく、小さくなって欲しい!
⑪オートテストのない人工呼吸器がいいな
⑫声をかけると動いてほしい。たとえば「ヘイ!シリ、電源を入れて!」で動いてくれるとか
などなど、いろいろなご意見をお話しいただけました。
発表のなかで
「できないって誰が決めるの?」
「できないって決めないでやってみよう」
本当にその通りだと思いました(図2、図3)・
医師が欲しい在宅用の人工呼吸器や周辺機器の機能
最後に発表していただいたのは、訪問診療医の戸谷剛先生です。
人工呼吸器をつけているからといっても、本当に肺が悪い子どもさんは少ない、ということでした。そこで図4のような、お子さんの状態にあった人工呼吸器がほしいとして希望を出されました。
①吸いたいときに吸えて、吐きたいときに吐ける人工呼吸器
(実は、これって極当たり前のようだけど、実は難しくて意外ときちんとできていません)
②患者さんの主体性にあわせて空気を送ってくれる人工呼吸器(自転車モード)
③患者さんに合わせて空気を送って、吐かせてくれる人工呼吸器(自動車モード)
④誤嚥性肺炎を起こさないように声門圧が呼気時にしっかり保てる人工呼吸器
⑤問題は、リークによる多量のガス流量によって加温加湿できていないこと
⑥気道がしっかりと成長を促すことができる加温加湿器
(これは人工呼吸器の制御にも関わることだと思います)
などなど、患者さんの疾患や病態に合わせた人工呼吸器や周辺機器についての要望をお話し頂きました。
人工呼吸器は、多くの専門職や患者ご家族が興味を持っているテーマです。今回に限らず、もっともっと改善しなければいけないことがたくさんあると思うので、また、人工呼吸器をテーマにした研究会を開催したいと思います。
その際には、是非、参加してみてください。
KIDS CE ADVISORY代表。小児専門病院で35年間働き、出産から新生児、急性期、 慢性期、在宅、ターミナル期すべての子どもに関わった経験をもつ臨床工学技士。メディカ出版のセミナー講師も務め『完全版 新生児・小児のME機器サポートブック』などの著書がある。KIDS CE ADVISORYのHPは▶医療コンサルタント | Kids Ce Advisory