今回は、2022年10月22日(土)に行われた、第4回のテーマ『在宅酸素製造企業さんと呼吸管理の困りごとを話そう!』のご報告、PART③です。
第4回のスケジュールは下記の通りです。
PART②に引き続き、「4.こんな在宅酸素装置が欲しいんです!」と題しての発表の残り2題を今回は報告します。
まずは、③臨床工学技士の立場から、独立行政法人国立病院機構 岩手病院の及川秋沙さんの発表です。
岩手病院は、神経・筋疾患や重症心身障がい児者に対する専門病院施設を有しており、及川さんは、ALS(筋萎縮性側索硬化症)をはじめとする在宅医療における医療機器の保守管理や指導・教育などを行っています。
及川さんは、酸素濃縮器のイメージと、こんな装置があったらいいな、という希望を話してくれました。
●酸素濃縮器のイメージ
1)大きい
2)行動が制限される
3)バッテリーがないことや、バッテリー作動時間が短い
4)酸素投与カニューレが長い
5)患者さんが酸素投与カニューレをつけたくない
6)自発呼吸との同調性が悪い
●こんなイメージを変えるために
1)とにかく小型に
2)手軽に持てる大きさになってほしい
3)ポータブル型はあるけど、重いし背中が熱くなる、流量に制限がある点を改善してほしい
4)ポシェットやネッククーラーのようにかんたんに装着できると良い!
5)停電時に酸素ボンベに切り替えるのは大変! バッテリーは必須! さらに長時間使用できるようにしてほしい
6)酸素投与カニューレは、病人に見えないものを! カラフルでスタイリッシュになると良い
7)ヘッドセットのような形も良い
8)呼吸同調器は、呼吸による胸腹部の動きを読み取るセンサーによる信号を無線で飛ばして、同調させられたら良い
9)パルスオキシメータを内蔵していると便利かも
最後に、④訪問診療医の戸谷 剛先生からの発表です。
戸谷先生は、医療的ケアを行う子どもを主に診療している医師で、つねに患者さん目線で、バイタリティ溢れた診療をしています。
今回は「世界旅行のできる酸素療法を目指して」というタイトルで話していただきました。
22世紀であれば、「宇宙旅行を目指して」になると思いますが、21世紀では、世界旅行ができれば解決という目線でのお話しでした。
まず、酸素投与の意義について説明がありました。
●酸素投与の意義
1)在宅酸素の2つの意義
(ア)呼吸不全に対する酸素療法
①血液内の酸素飽和度の維持
②安定した吸気への酸素濃度の維持
(イ)緩和としての酸素投与
①不安の軽減
②疼痛の軽減
③呼吸苦の軽減
2)哺乳類は鼻呼吸←呼吸の健康は鼻が命! 美鼻を目指す!
3)在宅でみる呼吸障害のあるお子さん
(ア)呼吸ケアが必要なお子さん
①呼吸の筋肉が十分に動かせない
②上気道を締めてしまい十分に呼吸ができない
③嚥下が十分にできず誤嚥がきっかけで呼吸が不安定になる
④排痰が苦手(咳ができない・出しづらい)
⑤下気道が狭く呼吸が不安定になりやすい←大人のように肺自体が悪いのではなく、気道・筋肉・骨格に問題があることが多い
4)肺高血圧症と酸素
①高い濃度の酸素供給が必要
②鼻が詰まると口呼吸とブレンドされ如実に酸素濃度が下がる
③肺高血圧は右心負荷が大きく、経験的に上気道がうっ血してアレルギー症状が出やすい
④気管喘息と心臓喘息のように、心臓鼻炎といってよいような症状を呈する子どもが多い
⑤経験的にステロイドが効く
⑥子どもは、特にアデノイド(鼻の一番奥、喉との間の上咽頭にあるリンパ組織のかたまりのこと)が上気道炎とその後に腫大して鼻閉になりやすい
5)気管切開を考える
①気管切開は「第三の鼻の孔」である
②上気道を通らないため、加湿不足となり線毛運動機能が悪くなる
③声門下圧が作れないため、十分な息ごらえ(呼吸を止めること)ができない←咳がしにくい。嚥下機能の低下などを起こす
6)呼気ポートタイプの人工呼吸器では、酸素濃度が上がらない機種がある呼気弁タイプに変更する。機種の変更が必要
7)人工呼吸器回路にジェットネブライザーを挿入すると、酸素濃度が低下する
●こんな酸素デバイスがほしい
1)使用するときにすぐ使える機能性が大事
2)簡易酸素マスクが好まれる(高齢者では)。マスクをあてるだけでも酸素濃度は高くなる。鼻は鼻粘膜刺激が強いため流量に限界がある。経鼻酸素カニューレの上からマスクをつけられるデバイスがほしい
3)中咽頭での直接投与できるデバイス
4)酸素ボンベの残量がわかるようになるとよい
5)さらなる酸素ボンベの軽量化
6)ヨーク式の酸素ボンベは、パッキン不良が多い(パッキンには相性が必要)。流量計の取り付けがないものがほしい
7)同調器の性能アップ
8)酸素濃縮器のバッテリーの向上
9)パルスオキシメータの一体化
10)パルスオキシメータの無線による管理
11)火への配慮
12)飛行機に持ち込める酸素装置(機内の気圧に影響しない)
13)移動しやすい酸素延長チューブの開発
14)災害対策のさらなる体制の向上
第4回KIDS Home Care Device研究会の報告を3回に渡って報告させていただきました。在宅医療で、もっとも使用されている在宅酸素装置ですが、まだまだ改善点が多くあります。
医療的ケア児にとって、より良い開発に繋がればと思っています。
さて、第5回の研究会のテーマですが、どうしましょう。
次のテーマと日程が決まりましたら、またお知らせいたしますので、ぜひ、みなさまのご参加をお待ちしております!
KIDS CE ADVISORY代表。小児専門病院で35年間働き、出産から新生児、急性期、 慢性期、在宅、ターミナル期すべての子どもに関わった経験をもつ臨床工学技士。メディカ出版のセミナー講師も務め『完全版 新生児・小児のME機器サポートブック』などの著書がある。KIDS CE ADVISORYのHPは▶医療コンサルタント | Kids Ce Advisory