看護師免許取得後、大学病院で精神科、老年病科を経験、企業の健康管理室勤務等を経て 約400床の総合病院に入職。看護師長として透析センターの立ち上げ、腎内分泌内科病棟師長を経験し、同病院で副院長兼看護部長を務める。看護師の採用業務など院内の幅広い業務に従事。2019年より、当プロジェクトへアドバイザーとして参加し、現在はCNO (Chief Nursing officer)として活動中。
言葉を唯一の情報として大切に扱う
私たち看護師は、以前より非言語的コミュニケーションをとても大切にしてきました。通常の対面対話では、相手の表情や声のトーン、身振り手振りなどの言語以外からも得られる情報があります。つまり、言葉はいくつもある情報のなかの一つです。
しかし、SNSでの文章コミュニケーションでは、言葉は唯一の情報源という位置づけになります。そのため、通常の対面でのコミュニケーションの言葉をただテキスト化しただけでは足りない要素が出てくることは想像できるかと思います。
対面対話のときには得られる情報の一部であった言葉が、唯一得られる情報となったとき、言葉一つひとつがたいへん重要なものとなり、大切に扱うことが必要になります。
では、どのように言葉一つひとつを大切に扱えばいいのでしょうか。ここからはTomopiiaで行っている文章対話の一般的な流れと役割についてお話しします。
患者さんの「ありたい姿」に伴走する
前回お話ししたような漠然とした思いを抱えている患者さんが、そのままの思いを文章にして吐き出すというのが第一段階です。吐き出された整理されていない絡み合った思いを、看護師の声掛けによりひも解いていくというのが第二段階。そして、患者さんの気持ちが整理されていくなかで、患者さん自身が自分の深い思いに気がつくというのが第三段階です。
また、文章に書き出すことで、あとから読み返したり、患者さん自身の気持ちの変化などを振り返ることができることもTomopiiaの文章対話の特徴です。
ここまでで気づかれた方もいらっしゃるかもしれませんが、Tomopiiaが目指しているのは看護師がアドバイスをしたり、患者さんの気持ちを前向きにする、といったことではないということです。
第一段階では、患者さんが話したい、聴いてほしいと思っていることを吐露できるようなきっかけを作ります。第二段階では、語られた患者さんの思いを受容したり、共感するなかで、一つずつ紐解いていくお手伝いをします。そして第三段階では、対話のなかで患者さん自身が気づいた「ありたい姿」に伴走します。
つまり、患者さんの話したいことを聴く場であって、看護師の聴きたいこと聴く場ではないということが大前提です。実はこれが、医療現場で働く看護師にとっては非常に難しいことなのです。
TomopiiaのSNS看護コミュニケーション研修では、これらの対話スキルを学ぶことができます。
今回開催するイベントでは、こうした対話スキルについてもう少し詳しくお話しさせていただくのと同時に、患者さんと対話する際の看護師側の気持ちの持ち方についても、公益財団法人がん研究会 有明病院 腫瘍精神科部長の清水研先生からご講義いただきますので、ぜひ参加いただければと思います。
▶#001を読む
▶#002を読む
セミナー(無料)開催のお知らせ
~文章による対話から、すべての看護師の「聴く」を考える~
【10:00~10:50】
講演1:患者さんの言葉の蛇口をひらこう
~SNS看護での患者さんとの対話を通じて見えたこと~
十枝内綾乃(株式会社Tomopiia 執行役員 看護師〔Chief Nursing officer〕)
・正しい看護師ほど患者さんの本当の悩みが見えなくなる
・文章コミュニケーションにおける言葉の役割
・SNS看護という新しい世界での「聴く」と支援
・場所・場面にこだわらない新しい看護(SNS看護の特徴、メリット、利用者様の声)
・SNS看護での気づきが日々の看護を変える
・SNS看護の未来
【10:50~11:50】
講演2:4000人のがん患者と対話した精神科医が教える死を意識した患者との向き合い方
清水 研(公益財団法人がん研究会 有明病院 腫瘍精神科部長 医学博士)
・がん患者さんの心理
・患者さんの話を「聴く」側の医療者の心理とケア:向き合う側の気持ち、医療者の心の葛藤
Tomopiiaについて詳しく知る
患者さんが自分らしい暮らしを取り戻すために
「そばにいなくてもできる看護」からの学び