2023年4月に発売される書籍『だけでいい! フィジカルアセスメント』の著者・橋本忠幸先生に、なぜフィジカルアセスメントは「教えにくい」「学びにくい」のか、またその解消方法についてうかがいました。





橋本忠幸
大阪医科薬科大学 地域総合医療科学寄附講座



そもそもなぜ、フィジカルアセスメントが大事なのでしょうか?

大きく分けて、2つの理由があります。本書で「はやい」「やすい」「うまい」と書いたように、フィジカルアセスメントは手軽にすぐに行うことができ、検査などと違って患者さんに痛みを伴わずベッドサイドにおいて無料で行うことができ、患者さんの診断やフォローの決め手となります。加えて、特に高齢者では自分で症状を訴えられない方も多いので、こちらから探してあげないと見つからないケースがあります。「何となく痛い」と「押さえたら痛い」では話が変わってきます。自分で訴えない、もしくは訴えらえない症候を検査より先に見つけるのがフィジカルアセスメントです。

2つめは「手当て」の視点です。患者さんに触れること自体が重要ですよね。ここは正直、医師には欠けています。実際に患者さんと密な時間を過ごしているのは看護師の皆さんで、清拭や褥瘡の処置などで触れる時間も長いと思います。その延長で、フィジカルアセスメントを行うことが患者さんにとって安心につながるでしょう。そのときに、知らないと見逃してしまうことがあります。知らないものは見えません。そういう意味において、看護師さんがフィジカルアセスメントを学ぶ意義は大きいと思います。

日常的に体の変化を診ているからこそ変化に気づきやすいけれども、所見を知っていないと異常に気付かないということですよね。どうやったら学ぶことができますか?

フィジカルアセスメントは教えにくくて、学びにくいものです。というのも、3つの条件がそろう必要があるからです。そもそも、教えてくれる人がいないといけない。患者さんが実際にいないといけない。かつその患者さんが異常所見をもっていないといけない。この3つはなかなかそろわないんですよね。僕もフィジカルアセスメントは得意じゃなかったので、いろんな患者さんを診るたびに勉強しました。その勉強では、はじめからアセスメントをするのではなくて、診断ありきで診察すると、所見がよくわかりました。

例えば、すでに脱水があるとわかっている人だとしたら、ツルゴールが低下している所見、頸静脈が虚脱している所見といった、脱水のフィジカルを学ぶわけです。逆に、診断がついていても見られないものは、教科書に書かれていて、昔からあるがゆえに頻繁に使われているけれど、あまり使えない所見だということがわかりました。こういったことは、本書でも「除外に向いている」「確定に向いている」「そんなに使えない」所見として示しています。これは僕の経験だけでなくて、研究的にも証明されているものです。僕はこうやって学んでいましたが、3つの条件「教えてくれる人」「患者さん」「異常所見」をまとめて表現したのが本書です。

教科書的にはそう書いてあるけれど、実際はこうなんだよ、まで示していることも、本書の特徴ですね。ほかに、どんなことにこだわりましたか?

こむずかしいフィジカルはいっさい入っていません。序章「フィジカルアセスメント、まずはここから」で書いたように、一致度が高い、つまり誰がやってもわかる所見を取り上げました。本書では、多くの動画や写真を提示していますが、ほとんどが書籍を書き始めてから撮影したものです。1~2年いれば必ず出会う所見、半年で出会ってもおかしくない所見ばかりです。そういう意味では、なじみがあるフィジカルを取り上げたと思っています。動画が多いことも、こだわりの一つです。動きがあるのとないのとでは、情報量がまったく違いますよね。例えば「浮腫」の項では、“むくんでいる”にもいろんな種類があることがわかってもらえると思います。

「教えにくい」「学びにくい」を解消できる一冊ですが、先輩が後輩に教えるときにはどんな使い方ができますか?

万が一、所見がなかったとき、動画で示して「こんな所見があると危ないよ」と言えると思います。解説でもこむずかしいことを書いていないので、丸暗記して、そのまま説明に使ってもらえるんじゃないかなと思います。ぜひ、教えるときにも、学ぶときにも、活用してください。

書籍紹介



だけでいい!フィジカルアセスメント

外来でも病棟でもこの1冊
だけでいい! フィジカルアセスメント
「学びにくい」が学びやすい! ホンモノ所見動画+イラストで体の診かたがわかる

55本の動画で身体所見がばっちり見える!
フィジカルアセスメントの方法は習ったけれど、実際の所見の診かたが分からない、なんて人、いませんか? そもそも異常所見はタイミングよく現れてくれないし、異常を異常として認識することは難しいもの。外来や病棟でよく遭遇する“ホンモノ”の所見動画・写真が満載の本書が、「学びにくい」「教えにくい」を解消。日々の経過を追う力、異常を見極める力を磨く“見える・わかる”が詰まった一冊。研修医にもおすすめ。

発行:2023年4月
B5判128頁
本体2,600円+税
ISBN:978-4-8404-8171-7
▼詳しくはこちらから

著者のオンラインセミナー


だけでいい!ベッドサイドのフィジカルアセスメント

導入:フィジカルアセスメントって?
「お腹が痛い」にもいろいろある! 段階を見極めてアセスメントに活かそう!

症例紹介:腹痛
NGロールプレイ なんとなくみる腹痛
圧痛の段階を理解しよう!
OKロールプレイ 段階を意識してみる腹痛
まとめ

症例2:腹痛(虫垂炎)
虫垂炎なのに痛みがはっきりしない…そんなときはどうする?

症例紹介:虫垂炎
NGロールプレイ 虫垂炎=右下腹部痛?
虫垂の位置をイメージしよう!
価値の高い虫垂炎のフィジカル
OKロールプレイ 右下腹部痛以外にも注目しよう!
症例振り返り
腹痛を起こす病気
肝臓と胆嚢のフィジカル

症例3:急変
この患者さんは急変? 大事なのは見極めること!

悪くなりそうな患者さんを見逃さないために、ポイントを押さえよう!
症例紹介:急変
NGロールプレイ これは急変?
急変患者こそフィジカル!
価値の高いショックのフィジカル
OKロールプレイ ABCDEに注目しよう!
まとめ

症例4:体液管理
体液量はフィジカルで評価できる!? どこをみて、どう考えるか学ぼう!

症例紹介:体液管理
NGロールプレイ 患者さんは良くなっている?
価値の高い体液量評価のフィジカル
体液量をみるときのポイント
OKロールプレイ 体液量の評価を実践しよう
おまけ 浮腫のみかた

症例5:呼吸苦
大切なのは分解して考えること! 自信が持てる聴診のコツを伝授します!

症例紹介:呼吸苦
NGロールプレイ これでOK? 呼吸音の聴診
聴診は分解して考える
吸気の時相の密接なかかわり
OKロールプレイ 時相と部位を意識した聴診
まとめ