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【著者】
神谷 浩平
一般社団法人MY wells 地域ケア工房 代表(元・山形県立中央病院 緩和医療科 科長)

2024年10月に書籍『ねころんで読める緩和ケア』(詳しくはこちら)が刊行されました。患者のニーズに合わせた緩和ケアが提供できる知識や説明のコツがわかりやすく解説されている本書について、著者の神谷浩平先生に本書のイチオシのポイントや緩和ケアに悩む方々へメッセージをいただきました。



本書のイチオシ!ポイントを教えてください

多くの緩和ケアを扱う書籍では、痛みや呼吸困難、悪心(嘔気)などの主要な症状に焦点が当てられがちですが、本書はそれに加え、排便や眠り、食事など「日常から支えるケア」に光を当てています。その人が常に安定し良い状態で過ごせる「揺れない船」を目指すことは、平時から危急時まで時期を問わない「フェーズフリー」の緩和ケアとなります。(もちろん痛みや、悪心(嘔気)、呼吸困難、せん妄のアセスメントについても分かりやすく記述しています)

もう一つのポイントは「チーム医療」の改善です。緩和ケアの現場では短絡的に看護師が指示を医師に仰ぎ、薬を処方すれば良いというものではありません。患者さん・家族と医療者、多職種間で何がその人にとって最善かをそのつど話し合い、共に「これで良いのだ」と感じられるプロセスこそが質の高い「チーム医療」を実現します。

最後に、本書は「気持ちのつらさ」や「死にたいといわれたとき」に精神科医ではない私たちができること、また身体的苦痛の著しい増強に対し適切に対応する方法(苦痛緩和のための鎮静)についても取り上げています。緩和ケアは「終わり」ではなく、「常に良い明日を生きるため、医療者を含むすべての人のため」であるというメッセージが伝われば幸いです。

本書はどのような人たちに読んでほしいですか?

本書は「これからの緩和ケア」が目指す方向性として、緩和ケア病棟や緩和ケアチームなどの専門家だけでなく、すべての医療介護の現場や地域で実践されるべきという考えで執筆しました。ですので、その担い手である一般診療科の医師や看護師、薬剤師、地域で訪問診療や訪問看護に携わっている方、介護や福祉の現場の方に手に取って頂きたいです。

例えば、痛みの緩和や評価にもっと自信を持ちたい、呼吸困難やせん妄への対処方法を知りたい、便秘や不眠の治療をアップデートしたい、鎮静は最後の手段と考えていて敷居が高いと感じている方やチームの皆様は、ぜひ本書を読んでみてください。「なんとなく〇〇処方」ではなく、チームで「きっと良くなる」イメージを患者さん、家族、そしてスタッフと共有できる現場が増えることが本書の目標です。

また本書にはPCUなど専門緩和ケアの現場で働く皆様が緩和ケアについて周囲に分かりやすく説明し、伝えるための豊富なヒントも盛り込まれています。ぜひ専門家である医師・スタッフも手に取ってみてください。より良く教え(伝え)ようとすることは、むしろ自らが深く学び、希望を持つことに繋がります。緩和ケアは「共に学び」「育まれる」ものなのです。

緩和ケアに悩む方々へメッセージをお願いします

自分は緩和ケア専門ではない、でも実際には目の前の患者さんやご家族の「苦しさ」「不安」に責任を持ってより良い対応をしたい、そんな医療者は多いのではないでしょうか。

実はそんな皆様こそが、目の前の患者さんや家族の一番のケアの担い手になります。信頼する医療者からの「明日は良くなる」希望のメッセージは悩める人への最良の薬となり、その人本来の力・勇気・慰めを引き出すことを可能にするからです。そのためには劇的な緩和でなくとも、少しずつでも確実に安楽を促進する計画を提案しましょう。その上で「今夜はぐっすり眠る」「明日はより楽に過ごす」希望を共有し、「最期まで見捨てない」と約束することは、目の前の患者さんに留まらず、いつか立場が逆になる未来の私たち医療者を支えることにもなるでしょう。

また「どこからが緩和ケアなの?」という疑問には、本人、家族だけでなくその場の誰かが「これでいいの?もう少し良くなる方法はない?」と少しでも感じた時こそ緩和ケアの開始なのだ、とお答えします。時期を選ばず立場、職種、職位を超えて皆が「もう少し良い方法は?」「一緒に考えましょう」「それで大丈夫!」と連帯し、支え合う姿勢が緩和ケアの本質なのです。

書籍の案内




ねころんで読める緩和ケア

ねころんで読める緩和ケア
「聴く・待つ・ともにある」医療従事者に向けた実践書
全ての現場で役立つ緩和スキル+「明日は良くなる」希望の書!


経験を元にした緩和アプローチのヒント
緩和ケアに自信がもてない医師のため、身体的な症状緩和(痛み、呼吸困難、せん妄、嘔気)、患者のQOLを良好に保つための症状マネジメント(便秘、食欲不振、不眠)、精神症状(気持ちのつらさ・不安)、鎮静について、すぐに役立つポイントを中心に解説した。患者のニーズに合わせた緩和ケアが提供できる知識や説明のコツがわかる書籍。

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目次


新しい時代の緩和ケア~すべての人に届くケアへ~
本企画について/Dr.'s Prime Academiaとは?/
ご購入いただいた方へ・・

1章 緩和ケアとは
2章 全人的苦痛とチーム医療
3章 身体的な痛みの緩和ケア
4章 痛み以外の身体症状

①呼吸器症状~息する限り、希望をもつ~
②消化器症状~尊厳を保ち、回復するために~
③せん妄~穏やかな日常を脅かす「最大の危機」~
5章 日常生活から支える緩和ケア~「揺れない船」の作りかた~
①便秘(排便)の緩和ケア
②食欲不振~「食べられない」「栄養が足りない」への緩和ケア~
③「不眠」への対処と緩和ケア~よりよい朝を迎えるために~
6章 精神的なつらさへの緩和ケア
7章 苦痛緩和のための鎮静~終わりではなく、よりよい明日のために~
8章 おわりに:誰もが緩和ケアの担い手となるために


発行:2024年10月
サイズ:A5判 272頁
価格:3,960円(税込)
ISBN:978-4-8404-8533-3
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