●書評
専門家だけではなく一般の人にとっても役立つ本
知識と技術の進歩は、その分野の専門家だけではなく一般の人にとっても役立つものであるが、この本はそういう本だと思う。
せん妄は、精神看護学分野だけではなく、高齢者のケアの場や集中治療室でも身近にみる現象であるが、ケアとしては少しお手上げの状態であったのでないかと思う。
自身が手術を受けられた知り合いの外科医がいて、術後にお見舞いに行くと「南さん、一番苦しかったのは集中治療室だったよ。自分があんなに混乱するとは思っていなかった」と嘆かれていた。
100歳まで生きた私の母は、90代後半に両足の大腿骨骨折による手術を受けた。術後は2回ともせん妄に悩まされ混乱したので、家族が術前、術後に付き添うことになった。
抑制帯をかけないために、母の身体に覆い被さり、声をかけ続けた夜を過ごしたが、「裕子の声は聞こえるのに、(助けてくれるはずの)裕子はいなかった」と後に語った母の悔しさが今でも心に残る。
母は、通常は自立心が高く、周りの人への気遣いや感謝を伝えることができる人だった。その一方で、この本に書かれている「準備因子」の高い人だったとも思う。
超高齢で、不眠や不安のためのデパスやマイスリーの常用者であり、ときどき幻視が見られる人だった。もしこの本の知識をそのときもっていたら、準備因子の高い母へのケアを主治医や看護師と事前に話し合え、もう少しよく対応できていたと後悔する。そして、高齢者である私がこれから手術を受けるなどあればと思うと、一気に読み込むことができた。
せん妄は、看護の多くの分野が対応する事象である。読まれる方々には公私ともにとても役立つ本だとお勧めする。
書籍紹介

起こしま「せん、もう」!!「火」がつきそうな人の「火」を出さない!
するべきことを効果的に行えるポイントを教えます!/身体拘束最小化に役立つ!
勉強会でもそのまま使えるスライド形式!
「せん妄予防でするべきことなんて、耳タコだよ! やっても効果がないから困ってるんじゃない!」と疲れ切っているあなた。「するべきこと」を効果的に行えるポイントを教えます。「火消し」は消すのが仕事じゃない!火を出さないことがかっこいいんだ!
発行:2024年10月
サイズ:B5判 168頁
価格:3,520(税込)
ISBN:978-4-8404-8522-7
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