●書評
一般的な嚥下障害者における安全神話のバイアスを覆してくれる
初心者でも理解できるすばらしい嚥下評価の一冊です。
総じて、一般的な嚥下障害者における安全神話のバイアスを覆してくれる内容だと思いました。
その過程のなかで、これがむずかしい! ここがよくわからない? ではどうすればいいの? について、その根拠性をわかりやすく、写真や図説を含めたビジュアルで解説してあり、臨床的視点で可能性を導き出すヒントが紹介されていて素晴らしいです。
どうやって勉強するのかわからない人でも、このテキストなら大丈夫
口腔や咽頭の機能について、初心者は解剖・生理学的な部分に苦手意識を持っている人が少なくありません。
どうやって勉強するのかわからないままになっている人は、このテキストで勉強を進めていくことができると思います。
特に、STAGE3の「いざ実践!こんなときどうする!?」は、素朴な疑問に対する評価・対策・理由がセットで明記されており、とても参考になります。
人間の食べる可能性は、口や喉の機能だけで判断できない
表紙には、「頸部聴診法で『食べられる?』『食べられない?』をしっかり判断」と書いてありますが、内容的には、嚥下造影や嚥下内視鏡の検査に依存することなく、臨床場面で頸部聴診法も併用し、嚥下障害の程度を判断して、どうすればより安全に食べられるか? をアセスメントしてプランを立案するという内容だと受け止めました。なぜなら、人間の食べる可能性は、口や喉の機能だけで判断できないからです。
包括的視点をもって、食べる支援をより実践できるチームへ
確かに、嚥下障害は口や喉の機能低下が大きな要因ですが、そこだけにとらわれてしまうと、人間としての大切な心身の調和や生活者としての食べる幸せを見失いがちです。
また、食べる支援においては、本人の嚥下障害だけに注目するのではなく、食事環境や介助方法など不適切な人的状況が問題となっていることもありますので、その点も大事にして読み進めてほしいと思います。
テキストの後半部分でも明記されているように、包括的視点をもって、食べる支援をより実践できるチームが増えることを期待しています。
書籍紹介

頸部聴診法で「食べられる?」「食べられない?」をしっかり判断
12ステップと動画で評価スキルを磨いて誤嚥性肺炎を防ぐ!
VEやVFがなくても嚥下状態を評価できる
摂食嚥下のド素人で、実は知識ゼロで、だけど少しでも口から食べさせてあげたい…。そのやる気が出発点!摂食嚥下にかかわる全員に、知っておきたい解剖などの基礎知識から、VFやVEがなくても聴診器1つあれば嚥下が評価できるようになる知識と技術をまとめた1冊。
発行: 2025年3月
サイズ:B5判 152頁
価格:3,850円(税込)
ISBN:978-4-8404-8790-0
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