●書評
「人として」「看護師として」外してはいけない所作とは何か
本書は、帯タイトルにもあるとおり、「疾患理解や関係性構築の“もっと前”からはじまっている!」という問いを中心テーマに据えた一冊である。著者である社本昌美氏が、長年精神科看護師として現場に立ち続けるなかで大切にしてきた姿勢や感覚が、随所に散りばめられている。
疾患理解やアセスメント、関係性構築のための看護技術が重要であることはいうまでもない。しかし本書は、それらの前段階として、「人として」「看護師として」外してはいけない所作とは何かを丁寧に問いかけている。もしその土台が欠けたまま知識や技術だけを積み重ねても、看護はどこか空虚なものになってしまう…本書からは、そうした強いメッセージを受け取ることができる。
訪問看護に携わっていない看護師にとっても、多くの示唆を与えてくれる
タイトルには「精神科訪問看護」とあるが、内容は訪問看護に限られたものではない。著者の病棟勤務を含む看護師としてのキャリアのなかで培われた経験に基づく記述は非常にリアルであり、精神科訪問看護に携わっていない看護師にとっても、多くの示唆を与えてくれる一冊である。
なかでも印象に残ったのは、「気持ちの矢印を全力で利用者さんに向ける(P38)」という一節である。ここでは、五感をフル活用して利用者さんに向き合うことの重要性が語られている。私たちは言葉を「聞く(聴覚)」、表情やしぐさといった非言語的メッセージを「見る(視覚)」ことは比較的イメージしやすい。しかし、本書が示す「五感を使う」という姿勢には、嗅覚や触覚、さらには空気感や呼吸、体温といった、言語化されにくい感覚も含まれている。
それは単に情報を集めるということではなく、その場の空気や相手の存在を全身で感じ取ろうとする態度なのだろう。こうした感覚は、看護技術のテキストには明確には記されていない。しかし、経験を通して「気持ちの矢印」をどこに向けるかによって、その場が安心できる空間へと醸成されていく。本書はそのことを静かに、しかし確かに伝えている。
看護実践の足元をあらためて見つめ直すきっかけを与えてくれる一冊
本書の受け取り方は、読む人の立場や経験によって異なるかもしれない。それでも、現場でしか蓄積されにくい感覚や姿勢を言葉にした「25のきほん」が詰まった本書は、看護実践の足元をあらためて見つめ直すきっかけを与えてくれる一冊である。

疾患理解や関係性構築の“もっと前”からはじまっている!
沈黙のとき、どうしたらいいの~!?
身体科との違いと、やるべきことがわかる
精神科訪問看護の需要はますます高まってきているが、精神科未経験のスタッフも多く、実際に現場に出ると困ることが少なくない。病棟経験者も生活の場に入ってのかかわりは未経験で、病棟勤務とは別のスキルが求められる。アセスメントや看護まで行きつかない!と焦るあなたのための1冊。
発行:2025年11月
サイズ:A5判 148頁
価格:2,420円(税込)
ISBN:978-4-8404-8860-0
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