国試が終わってすでにしばらく時間が経っているので、もし遅かったらごめんなさい。教科書は1年くらいは手元に置いておくことをおすすめします。入職までに読み返せとは言いませんが、学生時代に購入した本のなかには、案外役に立つものがあります。教科書だけではなく、サブテキストも働きはじめてから文章を書くときに参考になります。とにかく、教科書は捨てずに持っておいて欲しいのです。理由は大きく次の3つです。
① 配属先が決まってから本を買っても、役に立つかどうかわからない。
② 配属先が決まって、自分に必要な知識が何かをいったん教科書で調べてみて、記載されていれば活用する。記載されていなければ、欲しい知識が記載されているものを買うという判断材料になる。
③ 自分が学んできたものを生かすとき、「役に立つ」という自己効力感が生まれる。
入職して、配属が決まって、こまごまと覚える業務も多いと思いますが、患者さんの理解をするときに、まずは基本的なとっかかりが大事です。その時に、呼吸、循環、消化器・・・といった基本的なことを理解しようとすると、国家試験で勉強したことがよみがえってきたりして、「あ、そういうことか!」という出来事が起こります。それが、買ったばかりのまっさらな専門書ではなく、国家試験の前にたくさん付箋を付けたり線を引いた教科書やサブテキストだったとしたら、懐かしさと同時に、「がんばってきた自分」と「いまの自分」がつながります。
学生のときの知識だけでは当然足りないこともありますが、教科書にメモをしていることや、実習で出会った患者さんとの記憶がよみがえってきて、想像と創造を生み出してくれるかもしれません。また、その教科書に新たに付箋やメモを残していってもいいでしょう。
授業料を払って、教科書を開いて書いた実習日誌。お給料をもらって読んでいる教科書。そこに同じことが書かれていたとしても「価値」が違いますよね、きっと。そんな当たり前のことをすっと通り過ぎてしまうのではなくて、専門職業人としてのちょっとした自覚や姿勢を楽しんでもらえたらと思います。
日々、進歩する時代に一生使える教科書はありません。でも、新人看護師のときだからこその使い方があります。
入職前の準備として、「教科書は役に立たない」と言う前に、教科書を踏み台にして飛び立つつもりで助走の準備をしておくといいかもしれません。いつの日か、教科書や専門図書を制作する立場の看護師になっているかもしれません。夢があるって素敵ですね。