最近では学生のうちに学ぶことも増えた「キャリアデザイン」ですが、実際に臨床現場に入ると目の前の仕事に集中し、キャリアについて考える時間も得られないのではないでしょうか。また経験を重ねるうちに、思い描く自身のキャリア像が変化したり、見失ってしまうことも少なくありません。そんなときに、一つの標石となるが、先を歩く先輩方ではないでしょうか。本連載は、いまでは多くの看護師のマネジメントに携わる看護部長に、どのような経験を通して、自身のキャリアを切り開いてこられたのか、お話をうかがいます。





本谷菜穂子
上白根病院 看護部長



一つひとつの経験を自分の財産に

Q)最初に本谷看護部長のご経歴、また看護師を目指されたきっかけについてお聞かせください

子どもの頃、私の将来の選択肢に看護師の道はありませんでした。しかし、進路担当の教員から勧められて急遽進路変更をし、横浜市立大学医学部附属高等看護学校に入学しました。卒後は看護師として大学病院の病棟や救命救急センターを経験し、在職中に札幌市内の大学病院研修や横浜市役所で勤務する機会もありました。師長昇格と同時に横浜市立市民病院に勤務となり、その後は臨床を離れ神奈川県看護協会で研修や学会の企画運営に携わりましたが、3年後に再び臨床に戻り、公立病院の副看護部長、副病院長兼看護部長を経て、昨年から当院の看護部長に就任しました。

看護師としての経験は大学病院から始まりましたが、さまざま職場で多くの経験を積ませていただいたことが、スキルアップ・キャリアアップに繋がり、すべてが自分の財産となっていると実感しています。

「思いやりをもつ」ことは人として看護師として一生の課題

Q)ご自身の看護感や看護を行ううえで大切にされていることは何でしょうか?

看護観はキャリアを重ねるごと変わってくることもあると思いますが、私自身が今も大切にしているのは、「相手の立場に立つ」「人に寄り添い思いやる心をもつ」ことです。このことは言葉では簡単ですが、非常に難しく奥深いものだと実感しています。相手が望んでいるときに、押し付けではなく、いかにさりげなく行動できるかが、究極の思いやりにつながると感じています。新人だけでなくベテランであっても、完成するものではなく一生の課題だと思います。

キャリアアップは学歴や資格取得・昇格だけではない

Q)本谷看護部長にとってのキャリアアップとは?

一般的にキャリアアップというと学歴や資格取得、昇格等をイメージすると思います。看護師の場合、仕事をしながら大学や大学院、専門領域の研修等で資格取得ができる環境もあるので特定分野の専門性を高めることもキャリアアップに繋がりますが、各職場での経験を積み上げて着実にスキルアップをしているジェネラリストたちが多数います。

「スキルアップはキャリアアップを実現するための第一歩」と言われます。用語の定義からは逸脱しますが、私はジェネラリストが、自分がどんな環境で、どんな思いで仕事に臨み、上司や先輩・同僚・患者さんに影響を受けて今の自分があるのかを立ち止まって考え、自身の経験を俯瞰してみた時に成長を実感できると思っています。そしてこの成長がキャリアアップにつながっていくと考えています。

自分のことは案外まわりの人のほうがよくわかっている

Q)キャリアアップにおけるアドバイスをお聞かせください

仕事をするうえで、自分の「やりたいこと」と「できること」は違うことがあります。人は、自分のことは自分が一番知っていると思いがちですが、常に自分の働き方を見ている職場の人は、自分では気づいていない“私”を見ています。その仕事や役割に“私は向いていない”と思わずにチャレンジしてみることも自分自身の成長に繋がると思います。それを実感したのは、私自身も経験した「意に沿わないローテーション」でした。当時、ローテーションを断る選択肢はなかったのですが、実際に経験してみると楽しさ・面白さ・やりがいを感じることが多々ありました。

今振り返ると「やってみたら」という上司の言葉が幾度かのターニングポイントになったと感じています。多くの方々の助言や推薦があったからこそ、視野も広がり多くの経験を積むことができたと思っています。

ストレスコービングは自分の中に引き出しを多く持つこと

Q)好きな言葉・座右の銘などがありましたら、お聞かせください

この仕事を続けていて大切にしている言葉は「一期一会」。文字通り一生に一度の出会いですが、何十年も前に出会った方と、つながりが生まれることもありました。「あの時、お世話になりました」と言われることも多く、何気ない出会いであっても大切にすることが必要だと感じています。

もう一つは「何とかなる」という言葉と気持ちです。失敗や挫折もありますが、そうした壁に突き当たったとき、「何とかなる」くらいの気持ちと、他者とのつながりがあれば乗り越えられるものです。多くの出会いを通して物の考え方や悩んだ時の対処法等が広がったことで、自分自身の心の持ちようを変えていき、ストレスコーピングの引き出しが増えていきました。嫌なことや苦手なことへの対応もこの引き出しをいかに多く持つかが大事だと思います。

看護管理者の魅力は人の成長にかかわれること

Q)本谷看護部長にとって、看護職の魅力とやりがいは何でしょうか?

私が看護管理者を長年経験してみて感じているその魅力は、「人の成長にかかわれる」ことです。スタッフたちがさまざまな人を介して看護をより良くしようとしている姿には頼もしさを感じます。また、知識・技術の習得に加えて、一人ひとりが同じではなく、自分らしくそれぞれの形で変わっていく、そうした看護師としての成長の一端にかかわれることが看護管理者としての喜びであり、やりがいにつながっています。

知識・技術だけではない、看護師として、人として成長したいと考えているのであれば、是非当院にお越しください。また、これは当院だけではなくどの病院に就職する場合にも言えることですが、パンフレットやインターネットからの情報だけではスタッフの様子は伝わりません。入職後に長く勤務するためには、面接前には必ず見学に行き、現場を自分の目で確認してほしいと思います。当院の見学会にもお気軽にご参加ください。

休日の過ごし方

15年くらい前から声楽をやっています。ソロではクラシックやオペラを習い、発表会も開催しました。数年前からサードレベルで知り合った仲間と看護師だけのコーラスグループを作り活動しています。また月に1~2回は早朝ウォーキングを行っています。温泉も大好きで全都道府県を制覇しました。


写真上より、Nurseだけの合唱団Ohana♪、左下:ソロでの発表会、右下:みなとみらいホールで開催された「ゴールデンウェーブ in横浜」に参加

|病院情報|看護師として成長するための当院の教育の特徴

e-ラーニングの導入で中途採用者も充実した学びが可能です

当院は二次救急病院としての役割を担うとともに、地域の中心となる病院として常に患者様やご家族に安心できる医療と看護を提供しています。「頼れる病院・誇れる病院」という病院目標に沿った看護が提供できるよう、看護師の教育体制を整えています。クリニカルラダーを活用し、新人教育はさらに細かく年間計画を立てています。新卒が少ないこともあり、指導者がマンツーマンで対応する機会も多くあります。

昨年10月からはe-ラーニングを導入し、誰もがいつでもどこでも学習できる環境を整えました。不定期で中途採用の方にご入職いただいても気軽に学べることもあり、有効的に活用しています。

また、資格取得に関しては、学ぶ意欲があり、当院の看護のケアの質向上に繋がる領域への進学は、組織のサポートを得て実現することもできます。



医療法人社団恵生会 上白根病院
住所:〒241-0002 神奈川県横浜市旭区上白根2-65-1
病床数:150床(一般病床150床)
看護方式:固定チームナーシング
診療科目:内科・循環器内科・呼吸器内科・糖尿病内科・消化器内科・神経内科・リウマチ科・外科・消化器外科・整形外科・脳神経外科・形成外科・血管外科・眼科・婦人科・皮膚科・泌尿器科・耳鼻咽喉科・リハビリテーション科・放射線科・麻酔科