最近では学生のうちに学ぶことも増えた「キャリアデザイン」ですが、実際に臨床現場に入ると目の前の仕事に集中し、キャリアについて考える時間も得られないのではないでしょうか。また経験を重ねるうちに、思い描く自身のキャリア像が変化したり、見失ってしまうことも少なくありません。そんなときに、一つの標石となるが、先を歩く先輩方ではないでしょうか。本連載は、いまでは多くの看護師のマネジメントに携わる看護部長や、専門性をもって看護にたずさわる方々に、どのような経験を通して、自身のキャリアを切り開いてこられたのか、お話をうかがいます。





間瀬直子
武蔵野徳洲会病院 皮膚・排泄ケア認定看護師



実習での患者さんとのかかわりを通じ、看護師になる覚悟が芽生える

Q)ご自身が看護師を目指した理由と、これまでの看護歴についてお聞かせください

将来の進路を考えたとき、将来は手に職をつけて働きたいという思いがありました。同時に何か人の役に立てる職業に就きたいと考え、看護の道に進むことを決意し、弘前大学医学部保健学科看護学専攻科に入学しました。

印象的だったのが実習での学びで、講義で習得した知識・技術だけで通用しないことを実感しました。そして看護は大変だけど、患者さんの人生や生活に関われる仕事は、興味深く奥が深い仕事だと思えました。このとき看護師という仕事に就く覚悟が芽生えました。

そして2007年に千葉西総合病院に入職。配属された一般内科・消化器内科に勤務し3年が過ぎたころ、病棟編成があり消化器外科の患者さんを担当することになりました。ストーマ造設の患者さんのケアに関わる機会が増えたことで、トラブルなく生活できる過程にかかわれることに魅力も感じていました。そして認定看護師の先輩の活動を間近で見られる環境だったことにも後押しされ、スキルアップするなら皮膚・排泄ケア認定看護師資格取得を目指したいという気持ちに辿りつき、2014年に日本看護協会看護研修学校の認定看護師教育課程を経て、資格を取得。同時期に出産・育休期間を経て、現場に復帰後は、認定看護師として活動をスタートしました。家庭の都合で2018年に同系列の当院に転職し現在に至っています。

皮膚・排泄ケア認定看護師として院内を横断的に活動

Q)現在の認定看護師としての活動はどのようなものでしょうか

当初は病棟に所属し、週1~2回の活動日に認定看護師として院内を横断的に活動していました。昨年6月から看護部に所属し、専従で活動を行っています。 現在は、褥瘡・創傷の患者さんの管理がメインで、週1回医師、薬剤師、管理栄養士とともに依頼を受けた患者さんの状態の確認と処置のほか、毎日院内のラウンドを実施しています。

ストーマ造設の患者さんには、外来時のオリエンテーションからかかわり、患者さんの情報収集、装具の選択などを行うことで、セルフケア指導もスムーズになりました。また退院後主治医の診察日や患者さんと日程調整して介入できるようになったので、トラブルが生じたときにも早期に対応できる体制が患者さんの安心につながっていると思います。

医療者側の押しつけではなく、患者さんにとって正しいことを常に考える

Q)ご自身の看護観や心掛けていることはどのようなものでしょうか

患者さん中心の看護は、忘れてはいけないこととして常に心に刻んでいます。患者さんにとって正しくなければ、よりよいケアの提供につながりませんし、自分が適切だと思っても押しつけになっては、患者さんのためにはなりません。看護倫理を意識するとともに、患者さんに寄り添い、ニーズに応えるため調整していくことが看護師の役割だと感じています。

皮膚・排泄ケア領域においては、ストーマ造設をはじめ、身体面・精神面のサポートも重要になります。患者さんやその家族が退院後の生活をイメージしやすいように、必要とするタイミングで必要な情報を具体的に伝えられるよう意識して関わっています。ストーマ造設に関しては抵抗のある患者さんも多いため、その方が受容できるまでは無理強いせず、ケアの見学や少しずつ実践してもらうように指導内容を調整しながら関わるようにしています。本人の言葉や態度、病棟での様子をスタッフ間で共有して、少しでも不安を軽減できるようサポートしています。

専門知識・技術の還元だけでなく、職種間の調整役を担う

Q)認定看護師の役割は、どのようなものだと感じていますか

皮膚・排泄ケア領域の専門知識を患者さんやスタッフに還元していくことはもちろんですが、医師をはじめとする多職種や病棟スタッフと情報を共有していくことが大切だと思っています。一人の患者さんにさまざまな職種が関わり、患者さんの目標に向かって協働します。その時に患者さんにとってより良い生活は何なのかを意識しながら、職種間の調整役として行動することを心掛けています。

認定看護師として活動していると、病棟の一スタッフとして働いていた時以上に周囲のスタッフに助けられていると実感することが増えました。自分のスキルアップはもちろん必要ですが、スタッフ全員で看護することの重要性を改めて感じ、それが患者さんへのよりよい看護の提供につながると感じています。

患者さんのために役立つことが自分自身のキャリアアップ

Q)ご自身の考えるキャリアアップはどのようなものとお考えですか

看護師として成長するためには、専門性を高めることが必要だと考えていたため、学生時代から漠然とでしたがキャリアアップは意識していました。

大学の先生からもスキルアップを考えるなら、資格取得を視野に入れて働いた方がいいとのアドバイスも受けていたこともあり、将来は専門性を備えた専門・認定看護師の資格取得を目指したいという思いはありました。

実際に経験を積むと、自分のやりたいことのためにというより、患者さんのためにキャリアアップしたいという思いが強まりました。患者さんの役に立つことを考え、自分の興味のある分野を伸ばすことが、キャリアアップするときの基準となっています。今後も患者さんとしっかり向き合うためにも、学んだことを提供していきたいと感じています。

「細く長く続ける」ことにこだわり続けたい

Q)好きな言葉や座右の銘がありましたら、お聞かせください

一番大切にしているのは「細く長く続ける」ことです。継続していくことは難しいこともありますが、興味が出れば継続していくことができます。

自分の看護歴を振り返ると、特に強いこだわりをもって看護師になったわけではありませんでした。所属していた病棟で与えられた役割を担っていこうと思ったなかで、関心を持てる分野に出会うことができ、それを軸にして続けていたことで今のキャリアにつながります。今後も「細く長く続ける」ことにはこだわり続けたいと思います。

自分の興味をもてる分野を見つけ、患者さんに貢献すること

Q)キャリアアップを目指す方へのアドバイスやご自身の目標をお願いします

まず自分が好きなこと、興味を持てる分野の知識を増やしながら、継続していくことが大事です。そして常に周囲にアンテナを張り、患者さんのニーズをとらえ、貢献できることは何かを考えることだと思います。研修でも興味を持ったらタイミングを逃さず参加してみることが転機になるかもしれません。

私自身も結果はすぐに出せなくても、地道に時間をかけて止めずに継続していくことを信念としています。昨年まで見えなかったものが、今年見えることもあるため、継続の大切さを感じています。

今後の目標は、創傷管理の特定行為研修の受講や認定看護師としてもレベルアップを図り、患者さんに質の高いケアの提供に貢献していくことです。

休日の過ごし方

現在は小学校に上がった子ども中心の生活です。休日は近くの公園に出かけたり、大好きな西武鉄道を見に行ったりと、家族との時間を楽しんでいます。以前は体を動かしたり、ライブに出かけたりすることが好きでしたが、育児期間中の今は、自分ひとりの時間持つことが難しい状況です。できるだけ一人の時間を作って、ネットショッピングや「ハリー・ポッター」などのファンタジー小説を読んで楽しんでいます。また疲れを癒すためにマッサージに出掛けてリフレッシュしています。

|病院情報|看護師として成長するための当院の教育の特徴

資格取得を目指すためのさまざまなサポート体制があります

当院は認定看護師・診療看護師の資格取得、特定行為研修の受講希望者には、看護師修学派遣制度を設けています。施設が指名する派遣制度(院内決定→本部承認→実施)により、多くの資格取得者が活躍しています。

研修期間中は支給されている給与のうち固定的に給与の保証や研修費用は施設が負担します。



武蔵野徳洲会病院
住所:〒188-0013 東京都西東京市向台町3-5-48
病床数:303床 (一般253床・療養50床)
看護方式:アミナース(チームナーシング)
診療科目:内科(総合診療科、消化器内科、循環器内科、糖尿病内科、腎臓内科、呼吸器内科、神経内科)、外科(泌尿器科、整形外科、脳神経外科、外科、耳鼻咽喉科、歯科口腔外科、婦人科、乳腺外科、形成外科)、その他(皮膚科、小児科、麻酔科、救急科、放射線科)