皆さん、カテーテルアブレーションって、難しくないですか?
書籍『これさえあれば自信をもってチームで動ける カテーテルアブレーションのギモン70』は、カテーテルアブレーションに携わる病棟看護師や臨床工学技士、約200人のアンケートからわかった「よくあるギモン」を収載。ベテラン循環器看護師と臨床工学技士が届ける「世界一わかりやすい」入門書です。
本連載は、本書に収載された「よくあるギモン」の一部を紹介します。
(メディカ出版 編集室)
不整脈の種類に応じたさまざまなABL
「そもそもアブレーションってなんだろう?」と思っている人も多いと思います。カテーテルアブレーション(以下、ABL)は、不整脈を治す治療です。不整脈には「脈が速いタイプ」である「頻脈性の不整脈」と「脈が遅くなる」タイプの「徐脈性の不整脈」があります。ほかの言い方として、「致死性不整脈」などという恐ろしい書き方をされる不整脈もあります。
このように不整脈はいろいろな種類がありますが、とてもざっくりいうと、「頻脈性の不整脈」に対する治療がターゲットとなります(本当は、いろいろな不整脈が絡んでいたり、治療方法がさまざまあったりするのですが、この本を読んでいけばわかると思います!)。
では、なぜ不整脈があるとよくないのでしょうか、それは例えば「動悸」と呼ばれる患者さんの自覚症状に加え、血栓の危険性があったり、心不全やそれこそ命にかかわることもあったりするからです。なお、ABLの適応は、患者さんの状態や基礎疾患、年齢、QOLなどを考え、日本循環器学会をはじめとする学会のガイドラインに沿って決められてます。
異常な回路や興奮が起こらないように、焼灼・破壊する
「あの大袈裟な装置はなんだろう。何かとってもすごいことをやっているんじゃ……、ABLに入るとは?」と思う人もいるかと思います。そんな医療従事者も恐がらせるあの装置、いや、そもそもABLって何をしているのでしょうか。
「不整脈非薬物治療ガイドライン 2018年改訂版」によると、「カテーテルを介して治療標的となる心筋組織に体外からエネルギーを加え、これを焼灼・破壊する治療法である」1)
とされています。ここで、「焼灼・破壊」と書かれているのは、ABLのカテーテルの種類に、焼灼以外の方法で行う種類もあるからです。
では、「焼灼・破壊」するとなぜ不整脈の治療となるのか、それはとても簡単にいうと、「いらない興奮するところを焼灼・破壊する」、または「いらない回路を焼灼・破壊する」または「いらない興奮を伝わってこないようにする」ということです。患者さんに説明するときは、「〇〇さんの不整脈の原因となっている電気の流れを絶ちます。具体的には、(心臓の刺激伝導の図などを見せながら)ここをアブレーションカテーテルというカテーテルを使って焼き切ります」など、もう少し丁寧に説明をお願いします。そんなことができるかなと不安な人も、この本を読めばできるようになります!
電気信号の発生源を焼灼・破壊する場合
「いらない電気信号が発生するところを焼灼・破壊する」について、まず説明します。通常の刺激伝導系はイメージつきますか? まず、洞房結節から出た電気信号は房室結節からHis束に入って、左右の脚に分かれて、プルキンエ線維を経て心室筋が動きますよね? しかし、例えば、「洞房結節以外で刺激が発生したら、よくわからないところから電気信号が伝わって、不整脈になってしまいそう」と思いますよね。そこで、「その発生源を焼灼・破壊してしまおう」ということになります(図1)。
図1 心臓を動かしている電気の流れ(タップして拡大↑)
正常に電気信号が伝わる電気回路(刺激伝導系)。心臓の最上部に位置する
洞房結節
(sinoatrial node;SA node)で電気が発生する。
電気信号の伝達を絶つ場合
「いらない回路を破壊する」、または「発生した電気信号が出てこないように囲う」という方法です。いらない回路、つまり異常な回路があるから、それを焼灼・破壊してしまうというのはわかりやすいと思いますが、「発生した電気信号が出てこないように囲う」というのは、わかりにくいかもしれません。
この場合、「いらない電気信号が発生するところ」を直接絶つのではなく、異常な電気信号は発生するけれど、それがきっかけで不整脈にならないように囲う、あるいはブロックするという方法です(心房細動の治療の肺静脈隔離術など)(図2)。ABLはとても簡単にいうと、以上の2つの原理、あるいは理屈で行っています。
図2 不整脈の原因となる異常な電気の発生(タップして拡大↑)
不整脈の原因となる異常な刺激の発生部位や異常な流れのあるところを直接アブレーションしたり、きっかけとなる刺激が来ないようブロックしたりする。
基本的には心内心電図と3Dマッピングが必要となる
さて、ABLといえば、よく知られている12誘導心電図とは違う、心内心電図と3Dマッピングというシステムを使います。12誘導心電図とは「見ている場所」と「流している時間」が違うことから、心内心電図と3Dマッピングが必要となります。
心内心電図
ABL(電気生理学的検査〔electrophysiology study;EPS〕も含めて)で医師が見ている心電図は、「心内心電図」(図3)と呼ばれ、心臓の中に直接電極を当てて「さまざまな」部位を見ています。12誘導心電図(図4)と違うのは当たり前ですね。
図3 心内心電図(タップして拡大↑)
心臓の中から電気活動を測定している。
図4 12誘導心電図(タップして拡大↑)
12誘導心電図は身体の外から、心臓の電気活動を測定している。
それともう一つ、心内心電図と12誘導心電図では測定時に流れている時間が違い、心内心電図ではモニター画面上に流している時間をもっと早くしています。具体的には、12誘導心電図では、1秒あたり25mm(図5)ですが、心内心電図は1秒あたり100mmなどで流しています。これを記録スピードといいますが、早く流しているため、12誘導心電図でいつも見ている波形とは違う見え方の心電図になります(図6)。
図5 12誘導心電図の読み方(タップして拡大↑)
図6 心内心電図の画面(タップして拡大↑)
1秒間に100mm流れている。心臓内の各所を測定しているため、多くの波形が見られる。
(画像提供:神戸大学医学部附属病院 谷岡 怜先生)
3Dマッピング
最後に3Dマッピングですが、「どこか悪いところを見ているのかな」となんとなく思っている人もいると思いますが、まさにそのとおりです。3Dマッピングがなかった時代は心内心電図を見ながらABLを行っていましたが、3Dマッピングが登場したことで、その人の心臓が画像として描出され、どこの電気の流れを絶ったらいいのか、どこにカテーテルがあるのか、どの部位を治療したのかといったことが一目でわかるようになり、さらに正確かつ安全に手技が行えるようになりました(図7)。
図7 3Dマッピングの描出画像(タップして拡大↑)
a:リアルタイム表示。カテーテルがリアルタイムに表示され、その時々にどこにあるのかがわかる(実際は心臓の拍動などにより動いて見える)。
b:治療部位の表示。治療部位、電気の流れ、速さなどが色分けして表示される。
(画像提供:神戸大学医学部附属病院 谷岡 怜先生)
ここまで簡単にABLの話をしましたが、少しは理解できたでしょうか。わかりにくいところもあったかと思いますが、本書ではさらにわかりやすく詳しく解説していきます。お楽しみに!
最初のほうで「 医療従事者も恐がらせる」といいましたが、患者さんにもいえることです。実際にABL治療を受ける患者さんの不安はもっと大きいと思います。まずはメディカルスタッフがABLを十分に理解して、患者さんの不安を少しでも軽くできるように丁寧に説明していきたいと思います。お願いします。
不整脈治療は「見えないもの」との戦いです。この見えないものを「見える化」するのがラボシステムであり、「さらに見える化」するのが3Dマッピングシステムです。この2つにより、不整脈が見えてくるのです。でも、ある程度の知識がないと、これらをもってしても真の姿は見えてきません。本書では、不整脈が見えるようになるためのお手伝いができればと思っています。不整脈治療がもっと身近なものになって、不安な気持ちが少しでもやわらげばうれしいです。
引用・参考文献
1) 日本循環器学会/日本不整脈心電学会合同ガイドライン.“カテーテルアブレーションの歴史と推移”.不整脈非薬物治療ガイドライン 2018年改訂版.2018,57-8.
■執筆
医療法人社団正心会 岡本石井病院 看護部心臓カテーテル室 看護師長
■編著
医療法人社団正心会 岡本石井病院 看護部心臓カテーテル室 看護師長
前・医療法人新生会総合病院 高の原中央病院 臨床工学科MEセンター技士長
書籍のご案内
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発行:2026年4月
サイズ:A5判 240頁
価格:3,850(税込)
ISBN:978-4-8404-9114-3
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