皆さん、カテーテルアブレーションって、難しくないですか?
書籍『これさえあれば自信をもってチームで動ける カテーテルアブレーションのギモン70』は、カテーテルアブレーションに携わる病棟看護師や臨床工学技士、約200人のアンケートからわかった「よくあるギモン」を収載。ベテラン循環器看護師と臨床工学技士が届ける「世界一わかりやすい」入門書です。
本連載は、本書に収載された「よくあるギモン」の一部を紹介します。

(メディカ出版 編集室)






ABL治療は主に頻脈性の不整脈に対して行う

不整脈は徐脈性不整脈と頻脈性不整脈に大別され、期外収縮は別に扱われる ことが多いです。

徐脈性不整脈

徐脈性不整脈は、心室が収縮する頻度が少なくなってしまう不整脈です。心 房の信号発生源(洞房結節)からの信号が極端に少ないケースや、心房から心 室に伝わる途中で信号が途切れてしまうケースがあります。心不全症状などが出 現する場合には、電気刺激を外部から与えることを考慮します。つまり、徐脈性不整脈ではペースメーカによる外部からの刺激などを検討する必要があります。

頻脈性不整脈

頻脈性不整脈は、心室が頻回に動いてしまう不整脈です。心房で頻回に発生 した電気刺激が心室に伝わって、心室も頻回に動いてしまうケースや心室で頻 回に刺激が生じるケースがあります。頻回に刺激を発している部分を治療する 必要があるため、ABLによる回路遮断などを検討する必要があります。

不整脈は病態により問題となることが少なくありませんが、ABL治療は主に 頻脈性不整脈に対して行われます。では次に、対象となる代表的な疾患とABL 治療について説明します。

心房細動(AF)には肺静脈隔離術(PVI)を行うことが多い

心房細動(atrial fibrillation;AF)とは、心房の 痙攣 けいれん が起きている不整脈で す。AFになるきっかけの大部分は肺静脈(pulmonary vein;PV)とされています。AFを止めるための代表的な治療は、PVの隔離術として知られる肺静脈隔離術(pulmonary vein isolation;PVI)です。

AFはどのような不整脈?

AFは高齢者に非常に多い不整脈 で、その名のとおり「心房が細かく 動いている(痙攣している)」不整脈です。心房が痙攣してしまう理由は、 心房内で電気が無秩序に流れてし まっているためです(図1)。また、心 室に刺激が伝わるタイミングも無秩 序で、心室に高頻度で刺激が伝わり 頻脈になる患者さんもいれば、あま り心室に刺激が伝わらず徐脈になっ てしまう患者さんもいます1)
では、心房が痙攣してしまうと何が不都合なのでしょうか。AFによって生じ てしまう代表的な病態を2つ説明します1、2)


図1 心房細動時の心房筋(タップして拡大↑)

心房内血栓形成
心房が細かく動くということは、血液を溜める時間や送る時間がないという ことです。綱引きと同じで、心房筋が一斉に力を加えないと血液を送り出すこ とができません。血液が心房で停滞してしまい、心房内で血栓が発生する“心 房内血栓形成”が起こることがありま す。何かの拍子でその血栓がこぼれ、 動脈を経由して脳の血管を詰まらせて しまうことがあります(脳梗塞におけ る2割程度の原因とされています)。

心拍出量低下

心房筋のイキが合ってないと、心室 に十分な血液を送ることができない心 拍出量低下が起こります(図2)。心房 からあまり血液を貰えなかった心室は、 十分な血液を送り出すことができませんね。さらに、心室が収縮するリズムが 一定でないため、心室の拡張不全が問題となることもあります。20~30%の AF患者に左心室機能障害が認められるとされています。

AFになると脳梗塞の危険性も上昇し、心不全のリスクも増すため、早くAF を止める必要があります。


図2 心房筋のイキが合っていない状態(タップして拡大↑)

AFが起きてしまう原因

“心臓の病気なのだから、AFになるキッカケを作った犯人は心臓にいるはず!!” と考える人が多いのではないでしょうか。しかし、驚くことにAFになる原因の 多くはPVで異常な細胞が突然興奮(ファイヤリング〔firing〕、意味:発火現 象)することにより生じるのです。PVは左心房(left atrium;LA)とつながっ ている組織で、多くの場合はPV内でのファイヤリングが左心房の電気回路を 乱すことによりAFが発症してしまいます(図3)3、4)


図3 心房細動(AF)の状態(タップして拡大↑)

AFに対する代表的な治療:肺静脈隔離術(PVI)

AFになるきっかけの大部分が「PV内でのファイヤリング」であるため、そ の興奮がLAに伝わらないようにすれば多くのAFを防ぐことができそうです。 この治療はPVIと呼ばれ、現在のAFに対するABLの標準的な治療となってい ます3)。例えば、PVIはABLカテーテルでLAから伸びているPVを大きく囲む ように円状に焼灼して刺激が伝わらないライン(焼灼ライン)を形成します(図4)。このようにすれば、PV内でファイヤリングが生じてもLAに伝わらず、 LAの電気回路は乱されません5)


図4 隔離ライン形成による焼灼ラインの形成(タップして拡大↑)

心房頻拍(AT)には、機序に応じて2種類の治療を行う

心房頻拍(atrial tachycardia;AT)とは、心房が頻回に拍動している不整脈 の一つです。ATにはいくつか種類があり、それぞれ治療方針が異なります。

ATとはどのような不整脈?

心房が頻回に動くという点ではAFに似ていますが、AFは無秩序に電気が流 れているのに対してATは電気の流れに秩序がある(図5)という点で異なって います。心房で頻回に刺激が生じると心室にも刺激が伝わり、心房と同じよう に心室も頻回に収縮してしまいます。いつも心房の刺激が心室まで伝わるとは 限らず、数回に1回しか心房から心室へ刺激が伝わらないようなATもあります(図6)。患者さんが動悸症状を訴えることや心不全などに陥ってしまうことが あります6)


図5 局所起源心房頻拍(focal AT)と心房細動(AF)の電気の流れ(タップして拡大↑)


図6 4回に1回しか心房から心室へ刺激が伝わらない心房頻拍(AT)(タップして拡大↑)

ATの種類

さっそくATの治療方針を説明したいところなのですが、ATの機序によって 治療方針が異なります。よって、治療方針を知る前にATの分類7)を知っておく 必要があります。ATは機序によって、3種類に分けられます。

マクロリエントリー性心房頻拍(AT)
マクロリエントリー性心房頻拍(AT)は、心房内で電気興奮がクルクル回っ て発生する不整脈です。「マクロ=大きな」で「リエントリー=旋回=クルクル 回っている」という意味です。つまり、「同じところを大きくクルクル回ってい るAT」ということになります(図7)


図7 マクロリエントリー性心房頻拍(AT)(タップして拡大↑)

マイクロリエントリー性心房頻拍(AT)
マイクロリエントリー性心房頻拍(AT)も、心房内を電気興奮がクルクル 回って発生する不整脈ですが、「マイクロ=とても小さな」で「リエントリー= 旋回=クルクル回っている」という意味です。つまり、「非常に小さな部分をク ルクル回っているAT」ということになります(図8)。非常に狭い範囲でクルク ル回っているため、高密度な3Dマッピングをすることでどこでリエントリーを しているのかがわかることがあります。


図8 マイクロリエントリー性心房頻拍(AT)(タップして拡大↑)

局所起源心房頻拍 (focal AT)
局所起源心房頻拍 (focal AT)は、心房のある一点から周囲に電気刺激が広がっていく(水面に水滴を落とした際にできる波紋のようなイメージ)不整脈です。異常な細胞群が何度も勝手に興奮することで、周りにも刺激が伝わり心房が頻回に収縮します。3Dマッピングで解析しても、マイクロリエントリー性ATとの区別が困難なことがあります(図9)


図9 局所起源心房頻拍(focal AT)(タップして拡大↑)

心房頻拍(AT)に対する治療

さて、3つのATをイメージできるようになりましたか。ATは3つありますが、 治療方針は大きく2つに分かれます。

心房の一部を比較的大きくクルクル回っている(リエントリー)ように 見える、マクロリエントリーAT。
1ヵ所から周りにブワっと波紋のように電気が拡がっていくように見え る、マイクロリエントリーATとfocalAT。

ATのタイプ分けができたところで、どうやってATを治療していくのか見て いきましょう。

マクロリエントリー性心房頻拍(AT)への治療

マクロリエントリー性ATは心房内を大きくリエントリーしている不整脈です。“同じところ”をクルクル回っているので、その途中で刺激が伝わらないよ うにすればリエントリーはしなくなります。つまり、刺激がクルクルと回って いる通り道を焼灼すれば頻拍は止まるということです。よって、このタイプの ATへの治療はリエントリー回路にブロックラインを作成することになります (図10)7)


図10 マクロリエントリー性心房頻拍(AT)への治療(タップして拡大↑)

マイクロリエントリー性心房頻拍(AT)、局所起源心房頻拍(focal AT)への治療
マイクロリエントリー性心房頻拍(AT)、局所起源心房頻拍(focal AT)はご く小さな範囲の心筋細胞群が異常な興奮を起こして生じる不整脈です。頻拍中 の最初に興奮する場所(最早期興奮部位)付近に異常な心筋細胞群があり、周 囲の心筋もつられて動いてしまいます(図11)6、8)。このような異常な心筋細 胞群をやっつけることで不整脈は起こらなくなるため、このタイプのATへの治 療は最早期興奮部位付近の焼灼ということになります。なお、マイクロリエン トリー性心房頻拍では、3Dマッピングにより興奮伝播様式がわかればその部分 をアブレーションすることがあります3)


図11 マイクロリエントリー性心房頻拍(AT)、局所起源性心房頻拍 (focal AT)の伝播様式(タップして拡大↑)

通常型心房粗動(common AFL)では、下大静脈-三尖弁間峡部(CTI)にブロックラインを引く

心房粗動(atrial flutter;AFL)は、心房内のマクロリエントリー性頻拍の一 つです。通常型心房粗動(common AFL=typical AFL)に対するABLでは、下 大静脈-三尖弁間峡部(cavotricuspid isthmus;CTI)にブロックラインを引き ます。

●AFLはどのような不整脈?

心房粗動とは心房内で起きるマクロリエントリー性頻拍の1つです。前述し たマクロリエントリー性ATとほとんど同じです。では、マクロリエントリー性 ATと一体何が違うのでしょうか? その違いは体表心電図にあり、V1や下壁誘 導でノコギリの歯のようなギザギザの波(F波=鋸歯状波)が確認されます (図12)。また、AFLの多くは三尖弁輪周囲を大きく旋回します。治療法として はマクロリエントリー性の心房頻拍と同じで、リエントリー回路にブロックラインを作ります。特に三尖弁輪を旋回するAFLにはCTIにブロックラインを引 きます(図13)7、9)


図12 心房粗動(AFL)の体表Ⅱ誘導心電図(タップして拡大↑)


図13 三尖弁の周囲を旋回(リエントリー)するAFLに対するABL(タップして拡大↑)

房室結節リエントリー性頻拍(AVNRT)では、ABL時に完全房室ブロック(CAVB)を回避する

房室結節リエントリー性頻拍(atrioventricular nodal reentrant tachycardia; AVNRT)は、房室結節のリエントリー性頻拍です。AVNRTに対する治療は、リ エントリー回路を途絶することです。AVNRTに対してABLを行うときは、完 全房室ブロック(complete atrioventricular block;CAVB)に注意が必要です。

房室結節リエントリー性頻拍(AVNRT)はどのような不整脈?

心房から房室結節(atrioventricular nodal;AVN)に向かう電気の通り道(伝 導路)は一般的に1つだけ(図14a)ですが、2つ以上の伝導路を有する場合が あります(図14b)


図14 房室結節の模式図(タップして拡大↑)


図15 2つの伝導路をもつ人で頻拍が生じていないときの興奮順序(タップして拡大↑)

AVNRTのなかでよく見られるslow-fast AVNRTを起こす患者さんでは、刺激 がゆっくり通る「slow pathway」と刺激が素早く通る「fast pathway」という 2つの伝導路が存在します。通常は図15のようになっているため頻拍は起きな いのですが、心房期外収縮(PAC)などをきっかけにして頻拍が生じます。slow fast AVNRTはslow pathwayを刺激が伝わった後、fast pathwayを通常とは逆 方向へ刺激が伝わることで、電気刺激が旋回(リエントリー)してしまって生 じる頻拍です。slow-fast AVNRTに限らず、AVNに伝導路間でリエントリーし ている場合、心房や心室にもその刺激が伝わって動悸などの症状を起こすこと があります。
では、AVNに2つの伝導路をもつ人の場合、頻拍が起きているときと起きて いないときの違は何でしょうか?


図16 slow-fast AVNRTのパターン(タップして拡大↑)

slow-fast AVNRTのパターン(図16)を詳しく見てみましょう。通常、洞房 結節で刺激が起こる(①)と、素早く伝導する「fast pathway」という道を経 由して最終的に心室にたどり着きます。しかし、PACなどが生じると、fast pathwayが一時通行止めになり、slow pathwayだけに興奮が伝播する(②)こ とがあります。そうすると、slow pathwayを経由した興奮が心室側に伝わるこ ととなります。また、同じタイミングでslow pathwayを経由した興奮がfast pathway にも伝わります。このとき、fast pathwayの一時通行止めが解除され ていれば(③)、fast pathwayを経由して(通常とは逆方向に伝導する)心房や slow pathwayに刺激が伝わっていきます(④)。Slow-fast AVNRTでは、③と ④を交互に繰り返すことによってリエントリー性頻拍が生じます10)

房室結節リエントリー性頻拍(AVNRT)に対する治療

AVNRTがリエントリー性の頻拍であることから、ABL治療の方針はリエント リー回路の遮断となります。ここで注意したいのは、リエントリー回路ならど こを焼いても大丈夫というわけではないということです。焼灼の際にはいくつ か注意ポイントがありますが、完全房室ブロック(CAVB)を回避することが 最も重要です。つまり、次の点について細心の注意を払いながら焼灼を行う必 要があります。

⚫通常の伝導路であるfast pathwayを焼灼した場合、CAVBが生じる可能性が非常に高いためslowpathwayの焼灼を行う。
⚫His束を完全に焼灼してしまうとCAVBを起こす可能性があるため、通電中にブロックを示すような所見が認められれば、すぐに通電を中止する。

His束近傍の焼灼を行うことも多いのですが、もし永久的にCAVBになってし まうとペースメーカの植込みが必要となってしまうため、心臓カテーテル室の スタッフ全員でABL中の心電図に注意を払う必要があります10)

房室回帰性頻拍(AVRT)では、副伝導路の焼灼を行う

房室回帰性頻拍(atrioventricular reciprocating tachycardia;AVRT)は、心 房と心室をつなぐ「副伝導路」と呼ばれる特殊な伝導路を経由する頻拍です。 AVRTは、心房と心室の両方を回路に含むリエントリー性頻拍です。AVRTの ABL治療では、副伝導路を根絶します。

房室回帰性頻拍(AVRT)は、どのような不整脈?

AVRTは、AVNRTと名前がよく似ていますがまったく別の頻拍です。AVNRT はAVNをリエントリー(回帰)する頻拍ですが、AVRTは「房室」、つまり心房 と心室をリエントリーする頻拍です。 心房と心室を経由するリエントリー性の頻拍であるAVRTの回路について、ま ず正常な心臓が興奮する順序を説明します(図17a、b)。 AVRTのなかにはさまざまなものがありますが、その一例を挙げて、興奮順 序について説明します(図17c)。 正常な心臓の興奮伝播の経路は図17a、bのように、通常の刺激は①~④のよ うに伝わって最終的に心臓全体が興奮します。しかし、心房と心室をつなぐ「副 伝導路」と呼ばれる特殊な伝導路(電気の通り道)をもっている人では、④で はとどまらず、⑤→⑦(図17c)を経て再び③~④のように伝わることがありま す。こうして無限ループのような刺激の流れとなり、リエントリー回路が形成 されるのです。また、この副伝導路はさまざまなところに存在しており、逆方 向に伝わる副伝導路を持つ人や2つ以上副伝導路をもっている人も存在します11)


図17 正常な心臓とAVRTの興奮様式(タップして拡大↑)
a、b:正常な心臓が興奮する順序、c:AVRTの順序

AVRTに対する治療

AVRTの伝導路はご理解いただけたでしょうか。AVRTも結局は、リエントリー性頻拍の一種です。リエントリー回路に対しての治療はほとんど同じなので、マ クロリエントリー性ATの治療を思い出してみましょう。マクロリエントリー性 ATの治療といえば、リエントリー回路を焼いて伝導路を遮断する治療を行って いました。同様に、Wolff-Parkinson-White(WPW)症候群などで起こった AVRTに対する治療ではリエントリー回路の遮断を行います。実際の手技では、 AVRTのリエントリー回路に必須である副伝導路の焼灼を行います(図18)11)


図18 房室回帰性頻拍(AVRT)における副伝導路の焼灼(タップして拡大↑)
a、b:正常な心臓が興奮する順序、c:AVRTの順序

心室期外収縮(PVC)では、最早期興奮部位を焼灼する

心室期外収縮(premature ventricular contraction;PVC)は、心室筋が突然 興奮する不整脈です。PVCはVPC(ventricular premature contraction)やPVB (premature ventricular beat)とも呼ばれます。PVCのABL治療は、最早期興 奮部位の焼灼です。

心室期外収縮(PVC)はどのような不整脈?

PVCとは心室の一部が突然興奮し、その興奮が周囲に伝播して心室が不適切 なタイミングで収縮する不整脈です。PVCは良性の不整脈であることが多いの ですが、心室頻拍(ventricular tachycardia;VT)、心室細動(ventricular fibrillation;VF)などの致死性不整脈の発生のきっかけになることや高頻度で あれば心機能低下のきっかけとなることもあるので、ABLの適応となることが あります12)

心室期外収縮(PVC)に対する治療

PVCは心室の一部の細胞が勝手に興奮することがきっかけで生じます。その ため、興奮し始める部分である“最早期興奮部位”を焼灼することが目標となり ます12)

心室頻拍(VT)には、最早期興奮部位の焼灼、リエントリー回路の遮断を行う

VTに対するABL治療は、巣状興奮の最早期興奮部位の焼灼やリエントリー 回路の遮断が基本となります。

心室頻拍(VT)はどのような不整脈?

VTは心室が頻回に収縮と拡張を繰り返す不整脈であり、「PVCが3発以上続 いたもの」と定義されています13)。場合によっては、血液の拍出が十分に行えなくなることもあるため非常に危険な不整脈です。また、VTはVFに移行する ことがあり突然死の原因ともなります。

心室頻拍(VT)に対する治療

VTへのABLはATへのABL治療と同様に、巣状興奮の最早期興奮部位の焼灼 やリエントリー回路の遮断が基本となります。しかし、ABLをしようと思って もVTがまったく誘発されず、焼灼すべき部分が判断しづらいことがあります13)。 たとえ不整脈が誘発されたとしても、血行動態が保てずマッピングができな いケースや心室筋が分厚いために心内膜側(心臓の内側)からの焼灼だけでは 治療できないケースもあり、VTの治療は難渋しがちです14、15)

心室細動(VF)には、不整脈(PVCやVT)への治療で間接的に予防する

VFに対するABL治療は基本的に効果がありません。ただ、VFが生じるきっ かけとなる不整脈(PVCやVT)を治療することにより、VFを間接的に予防す ることができます16)

エントレインメント刺激で、頻拍の種類などを同定する

エントレインメント刺激とは、頻拍中に行う連続刺激の一種です。エントレ インメント刺激によって、「頻拍の種類」や「回路からの距離」を同定できるこ とがあります。

頻拍の種類にはさまざまなものがあり、どのような頻拍がどのような回路で 興奮しているのか判断しづらいケースによく遭遇します。頻拍の種類によって ABLをすべき部位は異なるため、やみくもにABLをしても成功しませんし、合 併症のリスクが増すばかりなのは感覚的にもわかりますよね。当然のことに思 われますが、「どのような頻拍がどのような回路を形成しているのか」を焼灼す る前に知っておく必要があるのです。

では、どのように診断を行えばよいのでしょうか? 頻拍の種類や回路の同定 を行うにあたって、薬剤負荷や3Dマッピングを活用することがあります17、18) が、心臓に電気刺激を行った際の反応を観察するという方法がとられることも あります。その方法はいくつかあるのですが、そのなかでも有名なエントレイ ンメント刺激について紹介します。
エントレインメント刺激とは、頻拍中に行う連続刺激方法の一種です。具体 的には頻拍中に頻拍よりも早い周期で連続刺激を行います(図19)。エントレ インメント刺激を行った後の頻拍再開の心筋興奮順序(図20)を観察し、頻拍 の鑑別に用いることがあります19)。また、刺激終了から頻拍再開までの時間 (PPI)を計測する(図21)ことで刺激部位が頻拍回路から離れているかどうか わかることもあります20)


図19 心房頻拍(AT)中の心内電位(EGM)(タップして拡大↑)
頻拍周期264msのATが記録されている。


図20 エントレインメント刺激施行時のEGM(タップして拡大↑)
エントレインメント刺激を240msの周期でCSカテーテル電極(CS7、8)から行った。


図21 エントレインメント刺激施行後のPPI-TCL測定(タップして拡大↑)
エントレインメント刺激をCSカテーテル電極(CS7、8)から行い、PPI-TCLを測定した。

その他にも、スキャンやパラヒシアンペーシングなど、どのような頻拍か調 べる方法にはさまざまなものがあります。

コラム

“ms(ミリ秒)”って何?
1ミリ秒とは0.001秒のことです。心臓の電気刺激はとて も速いため、非常に短い時間で伝わります。そこで心臓の電 気を観察するABLの世界では、日常でよく使われる“秒”ではなく、それ を1,000等分に細かくした単位として“ms(ミリ秒)”が使用されること が多いです(図22)  


図22 1ミリ秒(ms)という単位


不整脈がどこからどのように発生するのかを知ることはABLの 理解のまず第一歩ですね。基礎的な知識を頭に入れて、3Dマッ ピングを見てみると、頭のなかでイメージが膨らんでいくので はないでしょうか。


引用・参考文献
1) 医療情報科学研究所編.“心房細動(AF)”.病気がみえるvol.2:循環器.第5版.東京,メディック メディア,2021,186-9.
2) 日本循環器学会/日本不整脈心電学会合同ガイドライン.2020年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン.
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/01/JCS2020_Ono.pdf(2026年1月閲覧)
3) 日本循環器学会/日本不整脈心電学会合同ガイドライン.不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年 改訂版).
https://plaza.umin.ac.jp/~jscvs/wordpress/wp-content/uploads/2020/06/JCS2018_kurita_nogami191120.pdf(2026年1月閲覧)
4) 杉村宗典.“実践から学ぶカテーテルアブレーション:発作性心房細動(PAF)”.看護師・研修 医・臨床工学技士のためのカテーテルアブレーションの治療とケア:「むずかしい」が「おもしろ い」に変わる.貝谷和昭ほか編.中川義久監修.大阪,メディカ出版,2010,174-88.
5) 松尾征一郎.“発作性心房細動アブレーション”.研修医・看護師・臨床工学技士・診療放射線技師 のための 基礎からわかる! カテーテルアブレーション.松尾征一郎編.東京,医歯薬出版,2018, 238-43.
6) 清水昭彦.“心房頻拍”.EPS概論.改訂第2版.村川裕二ほか編.東京,南江堂,2019,193-217.
7) 山下省吾.“心房粗動(AFL)および心房頻拍(AT)”.前掲書5),186-99.
8) 日本循環器学会/日本不整脈心電学会合同ガイドライン.“上室頻拍:心房頻拍”.前掲書3),74-5.
9) 樋口貴文.“実践から学ぶカテーテルアブレーション:心房粗動(AFL)”.前掲書4),139-50.
10) 山下省吾.“房室結節回帰性頻拍(AVNRT)”.前掲書5),159-72.
11) 山下省吾.“房室回帰性頻拍(AVRT)”.前掲書5),175-85.
12) 日本循環器学会/日本不整脈心電学会合同ガイドライン.“心室不整脈:心室期外収縮(PVC)・非 持続性VT(NSVT)”.前掲書3),104-5.
13) 徳田道史.“心室頻拍とは”.前掲書5),200-4.
14) 徳田道史.“器質的心疾患に合併した心室頻拍”.前掲書5),211-20.
15) 松尾征一郎.“心臓外膜アブレーション”.前掲書5),253-61.
16) 池田隆徳.“心室細動とBrugada症候群”.前掲書6),328-39.
17) 髙橋尚彦ほか.“EPSで用いる薬剤:いつ,なぜ使う”.前掲書6),377-87.
18) 深谷英平.“3Dマッピングを使うとなにがわかるの?”.これから始めるカテーテルアブレーショ ン:手技がわかる,流れがつかめる.大塚崇之編.東京,メジカルビュー社,2016,69-74.
19) 山下省吾.“発作性上室性頻拍(PSVT)”.前掲書5),154-99.
20) 小池秀樹.“苦手克服! 心内心電図はじめの一歩:刺激法”.やさしくわかるカテーテルアブレー ション:治療のキホンと流れを理解して,アブレーションへの「苦手」をなくす! 池田隆徳ほか 編.東京,羊土社,2019,61-8.


■執筆
清水達矢
市立長浜病院 臨床工学技士/専門不整脈治療臨床工学技士



■編著
中村康雄
医療法人社団正心会 岡本石井病院 看護部心臓カテーテル室 看護師長
野崎暢仁
前・医療法人新生会総合病院 高の原中央病院 臨床工学科MEセンター技士長

書籍のご案内


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発行:2026年4月
サイズ:A5判 240頁
価格:3,850(税込)
ISBN:978-4-8404-9114-3
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