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今回、「ハマったさんに聞いてみた」の原稿依頼をいただいたときに、まだ医療従事者ではないし、どうしようかと考えましたが、自助グループやミーティングにハマって、オンラインミーティングにもハマってましたので、自分の体験を書かせていただきます。

1.ギャンブル依存症の当事者として

自分自身がギャンブル依存症であると自覚して、ちょうど7年が経過しました。
ギャンブル依存症という言葉は聞いたことがありましたが、認める前は自分には無関係だと思っていました。

まず、自分がギャンブル依存症になった背景としては、幼少期からギャンブルに対しての敷居が低かったことがあると思います。両親ともにアルコールも飲まず、外でギャンブルに狂っていたわけではありませんでしたが、隔週くらいで、親戚を交えた4~10人くらいで家庭内麻雀をやっていました。自分も小学3年生のころから小さいレートで賭けるようになりました。

小学から中学時代までは、ゲームセンターのコインゲームに相当ハマり、お年玉も数日間で使い切るほどでした。たくさんのメダルが獲得できたときは、大人に混じって大音量でジャラジャラとメダルが出てくる興奮と、大人以上に出ているという優越感や周囲がうらやましがる感覚、自分が一目置かれているという感覚がたまりませんでした。そのころから自分の脳は依存症者となる土台ができ上がっていたと思います。

高校時代は、進学校に入り、すぐに勉強では追い付けなくなっていることに気づきましたが、できない自分を認めたくない、見せたくないと思い、パチンコ屋へ授業中にも通うようになりました。少しでも景品のお菓子に交換してクラスのみんなに配りました。本当は負けていても勝っていると嘘をついて、パチンコで勝てる自分を見せつけることやみんなに喜んでもらえることで、大物感や自尊心を上げていました。

その後、浪人や大学時代を経て社会人になりましたが、給料だけでは足りないので、複数のクレジットカードや消費者金融のカードをつくっては、限度額いっぱいになりました。母親へ泣きついて、4回くらい肩代わりをしてもらいました。そのときは二度とやらないと誓うのですが、嫌なことがあったり、あるいは仕事やプレッシャーから逃げるために、すぐ借金してしまう状態が続きました。

はじめは、うまくいかない日常生活のストレスを発散するためにギャンブルをしていたのが、いつの間にかギャンブルをしないと生きていけない生活が続いていました。

心の奥底では妻や息子のことは考えていましたが、正当化するための理由をつくり、その部分にフタをしていました。末期の状態では、自分が死んだら生命保険金で借金を帳消しにできると投げやりな気持ちでいましたが、死ぬ勇気など自分にはありませんでした。最終的には7年前に妻と、当時、中学生だった息子にすべてを打ち明けることになりました。

自分の場合は病院や施設に入らずに、最初から自助グループに通うことになりました。実際、自助グループでやめ続けている仲間といっしょにいて、ギャンブルは止まりました。そこでは、嘘をつかないことで、こんなにも楽になれるという感覚や、自分だけではなくて同じような経験をしている人がこんなにもいたのだという安心感や共感を、たくさん得ることができました。

2.「12ステッププログラム」の実践

当時、自分の周りには「12ステッププログラム」をしている仲間がいて、すごく輝いて見えていました。その後、自分も自助グループの仲間から12ステッププログラムを伝えてもらい、実践してみたら、自分の考え方の癖や欠点が驚くほどたくさんあることが理解できました。

自分は小学生のときにイジメられたと感じる経験があり、つねに他人の視線を気にしていました。自分の行動は他人からどう見られているのだろう、と考えながら生きてきました。

自分の考え方の癖としては、他人をコントロール(支配)したい欲求、他人の視線が異常に気になる、他者への期待や承認欲求、お金に異常に囚われる、他人との境界線がうまく引けない、自尊心(自己肯定感)が低い、つねに他人と比較してしまう、共依存の症状、といった8個の癖がすぐに見つかりました。今も、考え方の癖を簡単に変えることはできませんが、早い段階で気づくことで、今までと多少は違う行動がとれるようになってきました。

当時の自分が「理想の自分像」とかけ離れていたから、そのことを認められず、嫌な自分を見たくなくて蓋をしていたのだと思います。ギャンブルばかりしていたから、もちろん人間的な成長をしていなくて当たり前なのですが、当時の自分には気づけなかったんです。

12ステッププログラムによって等身大の自分を理解してからは、自分自身を飾る必要もなく、ありのままの自分をさらけ出せるようになっている感覚があり、今は本当に楽になりました。

3.オンラインミーティングの可能性

自助グループにつながってすぐに、Skypeでやっているオンラインミーティングに毎週参加しました。東日本大震災で東北地方でのリアルミーティングが開催できないときに、先行く仲間が立ち上げたものでした。遠方の仲間とオンライン上でも深い分かち合いができました。

自分でも、家族と当事者がいっしょに参加できるSkypeのミーティングを2018年に立ち上げ、コロナ禍の2020年からはさまざまなアディクションの仲間が分かち合えるように、オールアディクションのZoomミーティングも立ち上げました。また、同じ年にASKの依存症予防教育アドバイザーによるオンラインミーティングや、ギャンブル依存症とネット・ゲーム依存症のZoomミーティングも立ち上げました。

そのころからは、リアルとオンラインで毎週10回以上のミーティングに参加するようになり、完全にミーティング依存になっていました。2022年からは、ギャンブル依存症問題を考える会の当事者支援部でも、日曜日に朝と夜の2回Zoomのミーティングを開始しました。オンラインで話したことのあった仲間とのちにリアルで会うことができたときは、本当にうれしかったです。

オンラインミーティングの利点は、自助グループが近くにない仲間や、介護や育児などでリアルの自助グループに参加できなくても、在宅で参加できることだと思います。オンラインでもさまざまな支援者の方と出会うことができました。そのような仲間の手助けをすること以上に、自分自身の回復にすごく助かっています。

これらの経験を生かして、2023年からは病院にケースワーカーとして転職をしました。機会がありましたら新しいステージでの報告もできたらと考えています。

以上

プロフィール:佐伯 徹

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