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1.ギャンブル依存症者の家族

 私はギャンブル依存症者の家族です。7年前、ギャンブル依存症家族の自助グループに参加したことがきっかけで仲間たちに助けられ、今も変わらず自助グループに通い続けています。現在は家族会にも参加し、家族会のメンバーとして、同じ問題で困っている家族支援の活動をしています。

2.自分の問題に気づいた

 私も以前は、ギャンブル依存症という病気を正しく理解していなかったので、当事者がギャンブルに行っていないか監視したり、1日1,000円のお小遣いで生活させたりするなど、私が当事者の生活や金銭を管理することで、ギャンブルをさせないようにすることにハマっていました。
 その結果、ギャンブルをしなくなったのかといわれたら、答えはまったくよくならず、むしろ相手はどんどん反発し、嘘や隠し事をするようになりました。ギャンブルは止まらず、借金を繰り返すのが日常茶飯事となり、関係性はどんどん悪化していきました。

 そんな生活ですから、あるとき大喧嘩になり、私はもう、どうしたらよいか途方に暮れ、ギャンブル依存症についてインターネットで調べました。すると、「家族の共依存」というチェックリストに自分がほとんど当てはまっていることに気が付きました。そして、おかしいのは自分なのかもしれないと思い、ギャンブル依存症の家族の自助グループにたどり着きました。

 初めて自助グループに参加したとき、明るく元気な人たちが、笑顔で私を迎え入れてくれました。そして、自分たちの話を聞かせてくれました。今までたくさん苦労したことを共感してくれ、励ましてくれました。そのとき、「もう1人で悩まなくていいですよ」と言ってもらい、とても安心したのが忘れられません。

 それから自助グループに通い続け、ギャンブル依存症の病気の理解と、依存症者を自分の思うようにコントロールしたいという共依存の問題に取り組みました。私が当事者によかれと思ってしてきたことはすべて間違った手助けでした。本人がつくった借金の問題は本人に返すこと、私も当事者に頼らずに生活していけるよう自立することなどを教えてもらい、それらができるように手助けをしてもらいました。自分と同じような経験をもつ人たちに話を聞いてもらったり、経験を話してもらったりしたことで、自分が1人ではないと気づかせてもらい、居場所を見つけられた気がします。

 その後、家族会にも参加するようになり、その活動を通して、依存症や家族支援についてより多くの学びの機会を与えてもらっています。

3.ギャンブル依存症支援者研修に参加して、視野が開けた

 先日は、昭和大学烏山病院で開催された「東京都ギャンブル依存症支援者研修」に参加し、医療者の立場からたくさんの支援や活動があることを知ることができました。「ギャンブル依存症は脳の病気である」という知識を身に付けることが、治療の第一歩であるという話には、病気を理解することの重要性を改めて感じました。
 医師、看護師、PSW(精神保健福祉士)、リハビリテーションそれぞれの立場から、烏山病院でのギャンブル依存症支援の実際についての話も聞きました。具体的なケアだけでなく、患者の回復を信じてかかわり続ける姿勢が、回復への手助けになっていくんだなと感じました。

 自助グループや家族会につながっていることは重要で、当事者を見守る家族だけでなく、その両者を見守る医療者にも安心感を与えてくれます。家族会には、当事者が昭和大学烏山病院へ入院中に家族会につながり、病気の知識を身につけて自身の回復に取り組み、元気に生き生きとしているメンバーがたくさんいます。当事者・家族それぞれが必要な場所につながれ、医療と連携することの大切さを実感しました。
 そして、研修に参加された方々と出会いました。こんなにもたくさん支援してくれる人たちがいるのだと改めて知り、新たな視野が広がりました。

4.誰もが皆、当事者や家族に必要な支援を考え続けている

 2日目のケースワークではグループごとに、どんなことを聞き取るか、どんな支援が必要かを話し合い、お互いに意見を出し合いました。当事者支援に強い方、家族支援を得意とする方、どちらにもかかわる方、それぞれの意見があり、とても興味深かったです。
 そのなかで共通しているのは、誰もが皆、当事者・家族それぞれに必要な支援はなにか? どうしたら助けられるか? を考え続けている点でした。常岡先生が研修で話されていた「顔の見える連携」という言葉どおり、この研修に参加させていただいたことで、参加者の方々と今後、家族支援を連携していけたらいいなと思いました。

5.医療者としての私

 私は依存症者の家族であり、医療者でもあります。今まで自分が医療者であることが、家族支援に役立つと考えたことがありませんでした。これからは依存症という病気を医学的な要素を含めて説明でき、理解をしてもらえるようになりたいと思います。家族支援や依存症についても正しく伝えていきたいです。

 最後に今回の研修に参加させていただいたこと、このコラムを書く機会を与えていただいたことを常岡先生に感謝申し上げます。ありがとうございました。

プロフィール:斉藤聡子
都内総合病院勤務
全国ギャンブル依存症家族の会 会員
公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会 ナース部所属


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