「学びかたを学ぶことで看護師として生きる選択肢をふやしていく」ことをコンセプトに立ち上げたメディア「メディカLIBRARY」のスタッフが、毎回、フラクタルのみなさんにテーマを伝えています。
今回は「人と同じこと、違うこと」を綴っていただきました。
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新人のころによく感じた、「先輩看護師への別次元感」。
何が別次元かって、たったの1年しか変わらない先輩も、仕事をテキパキとこなし、アセスメントも的確で患者さんへの対応も丁寧。
さらに先生の扱い方もお手の物(笑)。
果たして自分もいずれは同じように働けるのか、とにかく疑問で仕方なかった。
主任は、とにかくいつも笑顔で自信に満ちていて、そんな主任の背中を密かに追っていた。
わたしにとっては完璧すぎて、何か別の生物のような気がしていて、普通に話すことすらできなかった。
ところがあるとき、その先輩の意外な一面を知った。
わたしがはじめてターミナルの患者さんの受け持ちになって、日々葛藤だらけで「担当が違う人だったらよかったかもしれません」って、ぽろっと口にしたときだった。
「その気持ち、わたしも今でもあるよ」
耳を疑った。
大ベテランで、あんなに自信に満ちていて、できないことなんて何にもないようなオーラを出している、そんな先輩が。
まさか、おんなじ気持ちを抱えているなんて。
同時に、ずっと思っていた疑問をぶつけてみた。
「お亡くなりになった患者さん対して、どういう感情なんですか」
「人の死に対して、慣れはあるのでしょうか」
わたしは人の死に立ち会うとすごく胸が強く締め付けられたし、涙が出ていた。
本当に慣れてしまうのか、気になっていた。
苦しいから、慣れてほしいような。
大事にしたい感情だから、慣れてほしくないような。
その先輩は、「慣れはあるよ」といった。
「でも、つらい気持ちは新人のころとずっと変わらないよ。今でも泣くよ」ともいった。
さらには、「先生たちだっておんなじだよ」と教えてくれた。
先生なんて、看護師の先輩以上に別次元の人だと思っていて、わたしなんかが先生と話す時間すら恐れ多いと思っていた存在だったのに、まさか同じ感情をもっているなんて。
なんというか、それまでどことなく違う世界にいると感じていた先輩や先生が、じつは同じような感情をもっており、同じように葛藤していることを知った。
同じ人間で、人の命を扱う現場にいる人の感覚だなと思った。
看護師の大先輩だからって、偉大なる先生だからって、勝手に像をつくりあげていて、勝手にサイボーグのようなものにしていただけだった。
違うのは、それに対する「対処(反応)の仕方」が一人ひとり違うこと。
前面に出す人も、心の奥にとどめている人も。
人ってやっぱり話さないとわかりませんね。
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三度の飯よりお酒が大好きな飲兵衛看護師。仕事終わった瞬間からが本番だと思っている。仕事は真面目な自信あり。大学病院消化器外科3年、民間病院ICU2年、公立病院脳外科夜勤専従、訪問入浴、デイ、老健など1年の派遣生活を経て、メルボルンへ10ヶ月の看護留学。帰国後から訪問看護師として働き3年目。座右の銘は「笑う門には福来たる」。根からの明るい性格を最大限に利用し、日々楽しく訪問中。マルチポテンシャライトだから特技っていう特技はないけど、強いて言えばラポール形成が無駄に得意。今までクレームや担当変更がないのが密かな自慢。ちゃっかり保健師免許所有。
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