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看護師クリエイティブプロジェクト「fractale」のみなさんが、毎回テーマに沿ってそれぞれの看護の足跡を残していく本企画。

「学びかたを学ぶことで看護師として生きる選択肢をふやしていく」ことをコンセプトに立ち上げたメディア「メディカLIBRARY」のスタッフが、毎回、フラクタルのみなさんにテーマを伝えています。

今回は「病棟で自分だけが知っていること」を綴っていただきました。

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中途で入ったある病院には、同じく中途の同時期入職で、同い年で、女性的な男性看護師がいた。
その人とは女友だちのような感じで、すぐに仲良くなった。

人を好きになったことがないというその彼は、そもそもストレートではない疑惑をよくかけられていたし、わたしには彼氏がいたので、まず恋愛に発展しないと思っていた。
周りもそう思っていたし、わたしたち自身もそう思っていた。


半年後


「おはよう」から始まり、日勤の朝は同じ電車に乗り込む。
家が近かったこともあり、電車はよく被っていた。

今までと変わらない。
何の問題もない。

病棟でしれっと「おはようございます」と挨拶。

普通の同期を演じる。

病棟で「おつかれさまです~」から、最寄りで集合し、「おつかれ~(笑)」。

ポジションがほぼ一緒なので休憩が被らないことが多いので、お互いのお弁当の中身が一緒でも誰も気付かない。

日勤と夜勤の切り替えのときなんか白々しく「荒れてますね~」なんて言いながら、勤務前にすでに院内の状況を知っていることも多かった。
(それでちょっと早く行ったり)


そう、わたしは当初付き合っている彼氏と別れたが、別れていないふりをしていたし、彼は恋愛対象謎キャラを演じていたし、くっついたとはだれも思っていない。

2人の仲を知る人は、誰もいない。

2人しか知らない世界は、めっちゃ楽しかった。

けど終わりはその倍、しんどかった。

誰にも言ってこなかったぶん、誰にも言えないこと。

ひっそりと引越しをしないといけない。
忘れたいのに、毎日顔を合わせてしまう。
嫌でも声が聞こえてきてしまう。
仲良かっただけに、いじられてしまう。
他の人に向けた笑顔。
「狙ってるんですよね~」っていう会話。
冷たくなったわたしへのあたり。
すべてが心にグサグサきて、エグられる。
なのに、それを、誰にも言えない。
それが本当に辛かった。

10年弱たって、時効でしょってようやく何人かにこのことを話したけど、本当に気付いてなかったみたいね。

さて、同じような秘密をかかえた人、いるんじゃないでしょうか?
病院は秘密の宝庫ですから。

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fractale~satomi~
twitter:さとみ(@minisatominy

三度の飯よりお酒が大好きな飲兵衛看護師。仕事終わった瞬間からが本番だと思っている。仕事は真面目な自信あり。大学病院消化器外科3年、民間病院ICU2年、公立病院脳外科夜勤専従、訪問入浴、デイ、老健など1年の派遣生活を経て、メルボルンへ10ヶ月の看護留学。帰国後から訪問看護師として働き3年目。座右の銘は「笑う門には福来たる」。根からの明るい性格を最大限に利用し、日々楽しく訪問中。マルチポテンシャライトだから特技っていう特技はないけど、強いて言えばラポール形成が無駄に得意。今までクレームや担当変更がないのが密かな自慢。ちゃっかり保健師免許所有。 

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